第百十八話:まさかまさか
「……ねぇ、何か聞こえない?」
馬車に乗って居た僕は彼等に語り掛ける様に言った。
「あぁ、確かに何か聞こえるな。魔物やろうな。
言っといた方がええんちゃう?」
ロージアが耳をピクピクとさせる。
「だな。言って置くな。」
彼は席の後ろの窓みたいなのを開いて何かを伝えて居る。
内容を簡潔に纏めると魔物が来て居る事を言って居るみたいだ。
商人達はうぇっと驚いたみたいだ。そして馬車の走者に股伝え為て居る。
ロージアが天井に括り付けられて居る縄梯子を下ろす。
床に固定為ると上に登って行った。
ハッチの開けられた音が為る。外から来て居るか確認為る為だろう。
「あぁ、走者に伝えるって。」
僕が聞いて了った事を彼は皆に言った。
何だか申し訳無く為って来る。
「なぁ、此の後如何すんだ?」
フォードネイクが前のめりに為って何だか微妙な表情で彼に訊く。
「あぁ? あぁ。多分降りる事に為るだろうな。」
ヷルトが言うと彼はうげっと顔を歪ませる。
「……戦いたく無いのか?」
「いやいやぁ、其う云う訳じゃ無いぜ?
寧ろ、戦いたくてうずうずしてるぜ。」
彼は腕をぐるぐると回した。けれど、彼は戦った事も無いのだろう?
他人から功績を掠め取ったって言って居たし。
……危なく為ったら助けてあげなきゃな。
目の前で知人が死ぬ所を見たくは無いし。胸糞悪い。
ロージアが梯子から降りて来る。
「んー……空からは来てへんなぁ。」
床に降りると其う言った。
僕は縄梯子を外して彼と一緒に元に有った場所にへと戻す。
僕は窓を開けた。窓を開けて外を見回す。
外の風景が早いスピードで流れて行く。
窓を開けると依り音が大きく聞こえて来る。
ガッタガッタと四つ足だろう魔物の音が聞こえた。そして何かの灰色の塊がぼやっと見える。
距離は……何の位だろうか。音から察するに多分、二十メートル位は離れて居るだろうか。
けれど、此れだけ離れて居ても案外あっさりと追い付かれて了うから気を付けないとな。
「……結構近そう。武器の準備はしといて。」
僕が其う言った瞬間から馬車はゆっくりと止まった。
僕等は其々の武器を握って馬車の外に出た。
外には草原が広がって居る。けれども目の前には灰色の何かは此方にへと近付いて来て居る。
僕は其れを睨んだ。そして大剣をがっしりと掴んだ。
「そうやな、リングと自分で那の集団に突撃為て行くから、フォードとヷルトは此処を守ってな。」
ヷルトは大きく頷いてフォードネイクは何処か自身が無さそうに見える。
「よし、ええか? 行くで!」
彼は鎌を肩に構え僕等は魔物の群れに向けて走り出した。
其等に近付いて行くと正体が分かった。
奴等は耳が両方合わせて四つ有るゴ̊ㇻ̇ヷ̇ドィエと云う魔物だった。
ゴルヴァドィーは凶暴な、と云う意味だ。伸ばし棒が無く為ってエが付いた理由が分から無いが。
奴は黄金の目を為て居て顔のマズルは狼依りやや短いだろう。
其んな狼みたいな奴だが狼と圧倒的に違うのが臆病では無い事だ。
狼獣人を見てれば分かるだろうが那奴等は思った依り臆病者だ。そして、存外子供に愛情を良く注ぐ。
ちょっと為た物音で恐怖為て他人をかなり可愛がる。
勿論、冷酷だと言われれば其うだと思うが……。
でも、彼等は其んな事を為無い。
凶暴で、そして理性何か無く、実の子ですら可愛がる何て事を為無い。
正に皆が想像為る獣みたいな奴だ。
狼は臆病で警戒心が強いから此んな草原迄遣って来無い。
明らかに死ぬ事が分かって居るからだ。
狼が襲うのは縄張りに入った、とか食料が無いから、とかだろう。
案外動物何て其う云う物だ。僕が言うのだから説得力は有るに違い無い。
「ウォオオオオオン!!!」
奴等は僕等に突進為て来る。
襲いかかって来る奴の大剣で撥ねた。血飛沫が飛ぶ。
其の儘僕は其の大群を走りながらばっさばっさと斬って行く。
此んな事言ったら命を弄んでる等と捉えられるだろうが……。
興奮為る。やはり根本は動物、本能に心が連れてかれて居るのだろうか。
闘争心が心臓からゾクゾクと為て来る。
流れる儘に敵を倒して行く。
那処にも敵、其処にも敵、此方にも敵、何処にも敵しか居ない。多対一はやはり良い。
あぁ、此処迄ワクワク為た空間が有っただろうか。いや、無い。
僕は那処から来る敵を倒して、其処から来る敵を倒して、此処に居る敵を倒す。
僕の腕を噛んで居る奴を倒した。腹の辺りに血が付いて了った。
其んな事は今は気に為無い。奴を倒す事をだけを考えるべきだ。
隣を見るとロージアが猛虎の様に鎌を振り下ろしながら奴等を倒して居た。
此れだけ倒しても奴等の猛攻は止ま遣ら無い。
もう何匹倒したのだろうか。別に嫌では無いから良いのだけれど。
「ウルォォォォン!!!!」
すると、もう全て倒し切ったのか中央からボスみたいな奴が現れた。
奴等依りも一回りから二回り位大きく、四個の耳が高く異常に発達為て居る。
房毛が付いて居無いのを除けばまるで僕みたいな耳だ。
僕は早速奴に近付いて行って攻撃を当てようと為る。
けれど、さっさと避けられて了った。くそ。
奴は目に止まらぬスピードで雷を放って来た。魔法で反応も出来無さそうだ。
変身魔法で対応為るしかないか。
……と思って居たけれど誰かが僕の体に覆い被さって来た。
覆い被さって居る奴が僕から離れた。
「はぁ……あっぶない…………大丈夫か?」
ヷルトは額の辺りを腕で拭いたかと思うと斧を奴にぶん投げた。
くるくると回った其れは奴の方へには突き刺さら無かった。奴はすっと其れを避けたのが見えた。
「……ヷルト!! いや、ヷルトの方が……。」
「大丈夫だって。ほら。」
其う言って両手に持って居る斧をくるくると振り回して居る。
そして彼の稲妻模様が黄色に光って居る。……おいおい、如何云う事だよ。
魔法的にも科学的にもおかしいだろうが。
けれど、今何故か其んな事が起きて居るのだから受け容れるしかない。
……後で問い詰めてみよう。
後ろを見ると、さっき迄戦って居た筈のフォードネイクが居無い。
「ねぇ、フォードネイク何処行ったの?」
「さぁ? 左足を損傷して俺が治してからどっか行った。」
彼は如何でも良いかの様にさらっと言った。
嘘だろ。何処行ったんだ。まさか逃げたんじゃあ無かろうな。
あぁ、もう其れだったら僕も話聞いた意味が無いじゃないか。
人間そうそう変わら無いのは知って居るつもりだけど……。
いいか。三人でも充分戦えるし。
気持ちを切り替えて僕は奴に集中為る。
「ヅ̌ェㇻ̇ガヲ̇ゥーラ̈・ナ!!」
先ずは小手調べ程度に魔力の刃を奴に放ってみる。
勿論放った刃は奴には当たら無かった。寧ろ全て外れて了った。
ロージアが走って奴に攻撃を加えようと為る。
「ヲ̇ゥル̈テ・フ̇ィ!!」
彼が炎の魔法を放ったけれども奴は攻撃を躱した。
ツェルバ依りも図体が大きく無いし此う云う魔物は攻撃が当て辛い。
くそ、一体如何為て攻撃を当てたら良いんだ。
……多分三人で力を合わせて追い詰めるしかないだろうなぁ。
勿論倒せれば良いが倒す事は二の次だから、最悪森に追い返せれば良い。
僕達は顔を見合わせた。
僕は靴を脱いだ。
奴等は二人で奴を追い詰めて居る。
後ろから前から連続為る攻撃に奴も流石に耐え難いみたいだ。
でも攻撃は当たって居無い。
其んな奴に僕は走り出した。
そして、走りながらジャンプを為た。
「メイヤヂ̇スィㇻ̈・ヸ̇!!」
真下を見ると氷柱が見える。
僕に迄刺さって了いそうだ。けれど僕には刺さら無い。
僕は地面に着地為た。背後には氷柱が有るだろう。
後ろを見た。氷柱には奴が突き刺さって居た。
おぉ、此んなにあっさりと死ぬとは。僕の奇襲じみた戦法は此奴と相性が良かったのか。
「……お、おぉ!! リング、自分凄いな!!」
ロージアが僕の背中を叩く。
「二人が攻撃為てくれたお陰だよ。」
僕は彼等に目線を合わせた。二人が居無かったら此の奇襲は成功為て無いよ。
ロージアは恥ずかしそうにへらへらと笑って居る。
ヷルトは何処か自信満々に見えた。
「「うわっ!!」」
其う遣って褒め合って居ると僕とロージアは驚いて了った。
何故なら奴は斃れて居無かったからだ。腹から血をだらだらと流しながら立ち上がった。
脳天に攻撃を喰らわさ無かったのが悪かったのだろうか。
逸早く行動為たのはヷルトだった。
彼は斧を振って攻撃為るものの当たら無い。
僕とロージアは其の後だった様に思える。
攻撃為るけれどもやはり攻撃は届か無い。
奴は木の前でへっへと舌を出して居る。
然し奴の背後には巨大な炎が視える。バチバチと大きな音が察こえる
……何か大きな魔法を放つ前兆だ!
其う思った僕は剣を持って走り出した。
と思いきや、木から何かが落ちて来る。
其の脳天に何かが突き刺さる。
奴は「ギャン!」と悲鳴を上げると次は本当に斃れたみたいだ。
「……よぉ。」
剣を奴に突き刺して居たのはまさかのフォードネイクだった。
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