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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百十七話:嘯く真意

嘯くはうそぶくと読みます。

意味はとぼける、大きな嘘を平然と吐く、みたいな意味です。

デマを流す、では有りません。

「……なぁ。」

 ガタガタと揺れる車内の中、フォードネイクがぽつりと言った。


「何や、如何()た? 何か魔物の鳴き声でも聞いたんか?」


「いや……。」

 彼は下を向いて何か考え込んで居るのか何も喋ら無い。


「…………自分に自身が無い時って如何()れば良いと思う?」

 上を向くと真面目な顔を為て其んな事を言う。


「お前自分に自信が無いのか?」

 ヷルトがやや冷たい目で彼の事を凝視()る。


「いやいや、其う云う訳じゃ無いぜ?

 只……何か、もし自信が無かったら如何()るのかって……?」

 彼は笑う。けれど、作り笑いに見える。何だか自分を覆い隠す様にへらへらと笑って其んな事を言う。


「んー……いやぁ自分が自分に自信が無いって事今迄生きてて有らへんからなぁ。

 まぁ、自分に自信が無いって自分の事を全く以って分かってへんのちゃう?」

 ロージアは頭の後ろで腕を組んで当然かの様に言う。

 嘘だろ、永久に自分に自身が有る奴とか居るのか。御伽噺とか其う云う物の類かと。

 でも、彼の態度を見て居たら分から無いでも無い。寧ろ、自信しかなさそうだ。


「ヷルトは如何思う?」

 腕を自分自身の膝に置いて隣に居る彼を見る。


「あー……其うだなぁ。」

 少し溜め息を吐いて顔をやや下げる。

 目の前を向いてフォードネイクを見遣った。

 

「俺は何かを真面目に遣った事が無いんじゃないかと思うな。

 一つ何か真剣に遣れば自然と付くと思うけれどな。」

 真剣な表情でゆっくりと言う。

 彼は少しドキッと()たのか耳をピンと立てた。


「お前は?」

 ヷルトは僕の方に掌を向けて来る。

 僕かぁ、其うだなぁ……。


「正直、今自分にも自信は完全に有る訳じゃあ無いけど……。」


「けど、結構周りが認めてくれのも結構大事だと思う。性格とか、実績とか。

 自分で自分の事を充分奮い立たせる事が出来れば要ら無いけどね。」

 今、少し許り自身が付いて来て居るのは異世界に転生()て来てから周りの人が認めてくれて居るからだと思う。

 此んな自分でも、一回死んだ自分とて認めてくれる人は居るのだ。多分、前世でも。

 

 只、少し後悔()て居るのがもし前世の時に其う云う人が居たら如何だったのだろう。

 もし前世の時に其の様な友達を作って居たら少しは変わって居たのかなと思う。

 もう少し自分を労って遣れば良かったな。


 けれど戻る事は無理だし折角第二の人生を貰ったのだから今を生きるしかないなとも思う。

 此んな自分だけど少しは明るく為っただろうな。


「……ふーん。」

 彼は僕等の話を全く聞いて居無い様に其う言った。

 けれど、瞳孔の位置は収まらず尻尾もあわあわと()て居る。

 何だか落ち着きが無い様な様子だ。


 もしかして、と思った。もしかして……やっぱり自分に自信が無いのだろうか。

 僕は自身が無いと自分を卑下()て責め立てるタイプだと思うけど、彼は其の自分を覆い隠す為に嘘を吐いて居るんじゃないかと思う。

 其れだったら、僕と同等中々に闇が深そうだ。……少し、彼と話してみるのも良いだろうか。




「おーいリングー、そろそろ交代だ。」

 其の夜、天幕で寝て居た僕は入って来たヷルトに起こされた。

 毛布を払って目を擦って起きる。

 

「……ん、あ……そっか……。」

 起き上がって彼と交代を()る。僕は天幕から出て行った。

 目覚めは何故か夜目の調節が上手く効か無い。何だか何時も依り暗く思える。


 人間の頃に見て居た夜みたいだ。


 焚き火の前にはフォードネイクが居る。

 やや眠そうな眼を()て其れを見詰めて居た。


 焚き火が煌々と、濛々と煙を上げて居た。

 僕は彼の隣にすっと座った。


「……ねぇ。」

「なんだ……?」

 彼は眠そうな目の儘此方を向いた。そして眼をごしごしと擦る。


「もしかしてさ、自分に自信が無いから嘘吐くの?」

「いやいやいや……俺は嘘吐いて無いし別……。」

 僕は彼の言葉を遮って話し始める。此処で遮られる事は予想()て居た。

 だから其の言葉を無視して話を続ける。


「嘘吐いて自分を良く見せようと()るのは良く無いよ。

 きっとバレるし。嘘吐いて手に入れた実績は巡り巡ってバチが当たるよ。」

 彼が何を()て居るのか何て知ら無いし、何んな嘘を吐いたか何て分かりも()無いが、何か嘘を吐いて居るのは本当だろう。 


「はぁ……だから俺は!!」

 彼は立ち上がって焦った様に大声を出す。

 やっぱり、何だか虚勢を張って居るみたいに思える。

 言動が大き過ぎるのだ。


「自分を良く見せたいなら頑張る事だね。

 嘘は何処かで(ほつ)れが出るよ。」


「…………。」

 彼はゆっくりと座った。僕と目線を全く合わせ無い。


「自分を殺す事に為るよ? 其れでも良いの?」

 少し声色を下げて彼に問い掛ける様に言った。

 嘘を吐くと表面上は良く見えるが自分には何も伴って無いのだ。

 遣った事は総て自分に帰って来るのだから、どんどんと苦しく為って死ぬ事に為るかも知れない。

 僕みたいに悲惨な死を迎えては欲しく無い。那んな死に方僕だけで十分だ。


「いや……。」

 細々と()た声で否定を()る。


「なら、止めた方が良いんじゃない?」

 其う言うのなら改めた方が良い。もし信用が地の底に落ちて居るのなら取り戻すのは難しいが、出来無い訳では無い。

 改めたいなら僕は応援()るよ。僕は背中をポンと叩く。

 彼は僕に目線を向けた。


「ふん、まぁ其うだろうな。

 けど俺は嘘付いて無いから関係無い話だな!!」

 と言って自信満々の笑顔で腕を組む。

 然し、其の後はぁと溜め息を吐いた。そして頭の後ろをぼりばりと掻く。


「…………あぁ其うだよ、嘘吐いてるよ。」

 嫌々と()る様に不貞腐れて其う言った。まさか彼が言う何て。吃驚()た。


「……やっぱり?」

 僕が彼の顔を覗き込むと彼はうんとゆっくり頷いた。


「キ̊ヲ̇センㇳ迄上り詰めたのも他人の功績を掠め取ってだ。

 狩って来た奴等に金を渡して狩った物を渡して貰ったんだよ。」


「俺には自信も能力も無いし持ってる物は金位しかない。」


「けど、其んな事して何が悪い! 俺には努力為る才能すら無いんだよ!!

 無理何だよ!! 見栄張る位しか出来ないんだよ!!」

 彼は独白を()始めた。声を荒らげて洪水の様に言葉を連ねて居る。

 ……あぁ、分から無いでも無い。確かに努力って報われ無い事も多いしなぁ。


「あぁ知ってるよ金何て努力や才能依り価値が低い事何てさ!!」


「才能の有る奴はみーんな俺依り勉強も音楽も絵も剣術だってうめぇんだよ!!

 頑張っても追い付かねぇし努力為ても嘲笑われるだけ!!」


「其んなクソッタレな世の中で努力為る何て馬鹿だろ!

 他人の功績を掠め取った方が良いだろ! 自分も良く見えて万々歳だ。」


「なぁ!? 其う思うだろ!!」

 彼は牙を見せてはぁはぁと呼吸を為ながら僕の方を見て来る。


「うーん…………。」


「確かになぁ。」

「だろ!?」

 彼は立ち上がって狂気じみた笑顔を浮かべる。


「けど、其れは他人の評価を気にして、って事でしょ?

 他人の評価ばっかり気に為てても意味無いよ。」


「……は、はぁ!?」

 目を開き牙を出して困惑()て居る。


「周りが如何だ、周りが才能持ってるから、だけじゃないか。

 其れで努力を止める理由に為るの? いいや違うね。」


「結局は自分が如何為たか、じゃないの? 相手の事許り気に為るのは空虚だよ。

 努力為てたって周りは何とでも言うさ。馬鹿だの阿呆だの意味無いだのってさ。

 出る杭打たれるんだもん。しょうがない。」


「死ぬよ? 本当に。自分に何も残って無い儘死ぬよ?

 後悔()るよ? 途轍も無く、大きな十字架を背負いながら。」


「んで其う遣って積み重ねた嘘は何時かバレるんだ。

 将来憎まれ口を叩かれながら悪徳野郎と()てずっと残るんだよ。

 其れの何処が万々歳なの? 目先の事しか気に()てないじゃないか。」

 そう、他人に良く見られたいだけの人生、尽くすだけの人生は途轍も無く空虚なのだ。

 前世の自分が其うで有った様に。だから嘘を吐くのは良く無いし自分が満足しきれ無いのも嫌なのだ。


「は、はぁ……意味分かんねぇ。」

 と言いつつも彼の呼吸は浅く為って来て居る。

 完全に揺らめいて来つつ有る。


 やっぱり不安と云うか、何処か刺さる節は有ったのだろう。

 其の後は、彼は喋ら無く為って了った。ロージアから交代と言われ、其の儘そそくさと天幕に入って行って了った。


「……何や那奴。なぁ、何か知っとるか?」

「さぁ? ……けど何か思い当たる節が有るのかもね。」

 僕は曖昧な返事を()た。此の後如何()るかは彼自身で決めて貰わねば為らない。

 此処は秘密に為て置いた方が良いだろう。

此の作品が面白いと思ったら評価をお願いします。

モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

良かった所、悪かった所、改善点等有りましたらどうぞお願いします。


もし誤字や明らかなミスを見付けましたら誤字報告からお願いします。

宜しくお願いします。


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