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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百十六話:煩わしさ加減

「あ。」

 僕は森の中を歩いて居た。音を頼りに彼の居る場所を探り当てたのだ。


「フォードネイク!」

 木の幹に凭れかかって黄昏て居る様な彼に僕は屈み込む。

 取り敢えずは野垂れ死んで無くて良かった。


「……何だよ。」 

 不貞腐れた様子で僕を見上げる。


「ね、皆待ってるから戻ろう? ()ださ、護衛依頼も終わって無いしさ?」

 彼の肩を叩いて成るべく優しく問い掛けてみる。


「なぁ。」

「何?」

 彼が僕の眼を見詰める。何か脚でも怪我を為て居るのだろうか。


「うざい。」

 悪態を着いて僕の顔を指す。


「うざいって……んー、其う言われてもなぁ。

 君が戻ってくれ無いと如何にも為ら無いのよ。

 僕達は請負人でしょ? で彼等は依頼主。契約を交わした以上そう易々と切れる訳でも無いの。」

 別に契約を交わしたとて命が取られる訳でも何でも無い。

 でも請け負った以上、責任と云う物が有るだろう。出来る事総て遣ると云う責任が。


「俺の事はほっとけよ。どうせ要ら無いんだよ俺何てよぉ!!」

 僕は宥める様に言ったつもりだけれども何故か彼が急に癇癪を起こす。

 そして片手剣を地面に叩き付けた。あぁ、武器を其んな粗末に扱わ無いで……。

 其れを拾い上げて彼の右手に握らせる。


「ど、如何()たの? 大丈夫だから。此れから巻き返しも付くよ。

 しっかりジュデバ国迄護衛()れば大丈夫だよ。」

 ()だ二日目何だ。人間は第一印象が一番とは言うけれども、十分時間は有る。

 彼に合わせる顔が無いのは分かる。でも、彼も許してくれるみたいなのだ。


「はん、如何()ても戻らせたいんだな?」

 彼が立ち上がる。そして、僕を睨み付ける。


「だったら、俺と勝負だ!」

 剣を構えて叫ぶ様に言う。

 まさかの勝負宣言だった。其う言うのだから、彼には勝てる見込みが有るのだろうか。

 

「……本当に? ホント? 此の森の中で?

 危ないし決着は如何為るのよ? 行くか行かまいかの為に剣を振るうの?」

 僕はほとほと呆れては居たが、一応彼に確認を取ってみた。

 本当に其処迄して遣る気が有るのだろうか。遣るのだったら、受けて立つけれども。


「うるせぇ!」

 態々牙を見せて威嚇を為て来る。如何やら本当みたいだ。

 なら、受けようじゃないか。


「……ああ分かった。じゃあ、遣る?」

 僕は剣を引き抜いて同じ様に威嚇を()る。

 其処迄の覚悟が有るのだから、きっと彼は受けるに違いないのだろう。

 彼は一歩二歩、ゆっくりと下がって行く。おぉ? 走って僕に攻撃()るのか?


「いや…………。」

 彼は剣を降ろした。あれ。


「如何()たの? 遣るんじゃ無かったの?」

 剣を構えながらゆっくりと彼に近付いてみる。


「い……いや俺其んな事一言も言って無ぇし!」

 地団駄を踏んで又癇癪を起こす。


「は?」

 流石の其のすっとぼけた主張に剣を降ろした。

 余りの馬鹿らしい言葉に首を傾げた。


 そして、大きく溜め息を吐いた。えぇ、其れだけの主張だったのかよ。

 がっくりと為た。戦え無い事では無く、彼の戦いを挑む精神に対しと云うか。

 僕もそこそこ此方の思考に染まって居るのだなぁ。


「……取り敢えず戻るよ、馬鹿な事遣って無いでさ……。」

 取り敢えずは此の儘放置為て居てもしょうがないので彼の手を引っ張って彼等の居る場所へと戻る事に()よう。


「やだ!」

 僕は振り向いた。

 子供っぽく僕の手を引いて抵抗為る。


「もう、別に遣った事気に()て居るのなら素直に謝りなよ。」

 呆れ果てた僕は心の底から其う言った。

 勿論謝ったからとて全ての人が許して何て虫が良過ぎるが、けれど表面上でも謝って置いた方が良いと思う。


「…………。」

 彼は黙り込む。顔を下に向けて怒って居るみたいに思える。

 立ち止まって了った。動く気すら更々無い様に見える。

 じゃあ、もう、しょうがないな。


 僕は彼の脚を掴んで、米俵を持つ様に自分の右肩へと乗せた。

 

「おい! おいちょっと止めろ!!」

「抵抗()るならもう此う()るしかないでしょ。」

 叫んで僕の耳やら背中やらを掴んで来る。落として了った剣を持って収納魔法に入れた。

 其れは其れとして、彼は軽くは無いけれども僕は彼を持ち上げられて了って居る。

 そう対して体重も変わら無さそうなのに。


 彼の抵抗も別に何とも無い。精々引っ張られて痛いってだけだ。

 ランヷーズで有るならばもうちょっと痛い気も為るのだが。


 然り気無く彼の腕を触ってみる。うん、筋肉質では無い。骨を触って居るみたいにガリガリだ。

 以前にヷルトの腕を触らせて貰った事が有るのだが此処迄酷かったっけか。

 那れから彼は暇さえ有れば素振りだの僕と木剣で対人戦だのと為て居るからなぁ。


 普通は其の様に練習為る筈だ。

 幾ら獣人で殆どがヅィー族依り筋肉質とは云え、此処迄ガリガリなのは剣を振るって居無い証拠だろう。武器も片手剣なら此処迄酷く為ら無い筈だ。

 一体、如何遣ってクィヲセント迄登り詰めたのか。本当に不思議だ。

 もしかしたら魔法の腕がピカイチで凄いのかも知れない。


 暴れまくる彼を牽制()て、僕は彼等が居る場所に戻って行くのだった。


* * *


「おい!! 止めろ!! 会いたく無い!!」

 僕の肩の上でジタバタと為るけれども


「ふざけた事言って無いで……ほら、もう広場に戻って来たよ。」




「あ、リングじゃないか。連れ戻して来たんだな。」



「うん、ほら。」



「ちょ、ちょ……ってあぁ!!」

 ヷルトは半ば無理矢理に彼の襟の部分を持って引き摺る様に連れて行く。

 奴隷でも無いのだから、流石に可哀想だ。

 いや奴隷は主の持ち物だから普通は酷い目に合わすのもおかしいか。

 何となく彼の後を追ってみる。


「ほらよ。」

 彼はロージアの目の前迄フォードネイクを持って来た。


「え、ちょ……。」

 フォードネイクは正座の様なポーズを()て居る。


「ん? あぁ、どした? おぉ、フォードネイクやないかい。

 リング、自分連れて来たんか?」

 机を片付けて居た彼が此方を振り向いて少し驚いた様に顔を向ける。


「うん。半ば無理矢理だけどね。」

 苦い笑いを浮かべて肩を竦めた。


「……言いな。」

 ヷルトが目を尖らせて彼の肩を叩く。


「え?」

「言えって。謝れ。お前責任すら取れ無いのかよ。ふざけてんのか。」

 ヷルトが怒る。襟を掴んだ。目が蔑んだ様な瞳に為る。


「流石に其の言い方は有らへんのちゃう? 

 余りにドギツ過ぎるで。血が上り過ぎや。少し頭冷やしな?」

 彼はヷルトを諫める様に言った。


「……あ、あぁ、すまん。」

 襟を掴むのを止めてロージアの方を向く。そして首に手を当てて謝った。


「で、自分は如何()るんや?」

「は? もう護衛何て為たく無ぇよ。クソが。」

 太々(ふてぶて)しく、彼を横目で見て(そし)る。

 余りにも為って無い態度だ。


「うーん、別に自身に何も影響が有らへんから此処で止めたってええんやけど……。」

 其んな彼にも怒らず諭す様に冷静に言う。


「けど、依頼主は如何為るんや? 此の儘ほっぽり出して帰るんか?

 未だ終わってへんよ。自分が出来る、守れると思うたから遣ったんちゃうの?

 ほんなら護衛失敗に為って違約金を払う事に為るで。護衛の場合の時はまぁ高く為るんちゃう?

 知らんけど。」

 う、っと彼が声を上げる。今迄何言っても不貞腐れて居る表情の彼がお金の事に着いては声を上げた。

 もしかしたら彼はお金が無いのか? 成る程、だから此の依頼を受けたのだな。

 報酬はかなり良い色を()て居るし。


「そもそもこっから如何遣って帰るんかいな。

 そこそこ距離有るで? 帰る何て殆ど無理やろ。」


「じゃあ、如何しろって言うんだよ!!」

 当然の事を言っただろうに、口を開けて牙を見せ逆上()る。

 けれど、彼の気持ちも分から無いでも無い。然し其処は自分で考えるべき所だろう。


「其れやったら続ければええやろ? ランヷーズは協力の()合いや。

 危なく為ったらこっちも助ける。足手纏いに為っても遣った方が未だええんちゃう?

 まぁ謝りもせんしだからと言って此れをバネに為て遣ろうとせぇへん奴と遣りた無いけどな。

 依頼やししゃーないし遣ったるわ。」

 少し早口に為って彼を諫める。


「……お前は?」

 彼は細々と()た声で彼に異見を求める。


「あぁ? 其れはお前が決めろ。俺に異見を求めるんじゃない。

 俺が何言っても俺が言ったって事実が付くからな。

 お前みたいな奴は俺が言ったら総て其れ通りに()て責任を押し付けるだろう?」

 ヷルトは一瞬怖い顔を()る。長年の経験からかは分から無いが其う言った。

 けれど彼は彼で思い当たる節が有るのか


「う……あっ…………すまん……。」

 渋々、まるで汚辱だとでも言うのか、ゆっくりと正座を()て手を後ろに回す。


「よしよし! 良う言えたわ〜。

 分かった。謝るんやったらこっちも精一杯協力()たるわ。

 な、其れでええよな? ヷルト。リング。」

 にかっと明るい笑顔に為って彼をわさわさと撫でまくる。


「……はぁ…………本当は嫌だが、しょうがないな。」

「僕も其れで良いと思うよ。大丈夫。」

 ヷルトは肩を落として嫌々と認める。

 僕は別に嫌な思いとか彼が嫌いな訳でも無いので認めた。

 だからと云って、彼に興味とやらが有ると言われたら違うが。


 此う()て、何とか彼と良好な関係を取り戻す事に成功()た。


「おーい!! みなさーん!! 行きますよー!!」

 キャルベが此方に手を振って来る。僕は彼の手を取って其方に向かう事に()た。

此の作品が面白いと思ったら評価をお願いします。

モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

良かった所、悪かった所、改善点等有りましたらどうぞお願いします。


もし誤字や明らかなミスを見付けましたら誤字報告からお願いします。

宜しくお願いします。


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