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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百十五話:太々しい彼は

 目が覚めると、僕は天幕の中に居た。薄い毛布を払ってゆっくりと腕を見る。何時もの黒い腕に戻って居た。

 勝手に魔法が解けたのだろうか。


「おぉ、起きたか! 調子はどうや? 平気か?」

 毛を逆立てて驚いて了った。となりに豹の顔がでかでかと有るのだもの。

 何故かにこにこと為て居る。何だか凄く恐ろしい。


「え、あ、大丈夫……。」

 彼の眼を見詰めてゆっくりと頷いた。


「あ、何か変わった点有る……大丈夫……??」

 見た所腕等は変わって居無いとは思うのだけれど、其れだけでは変化は分から無い。

 彼は首を右へと動かして思案()た後、


「別に? 大丈夫そうやない> 少なくとも傷は有らへんで。

 あ、せやけど耳先が青く為ってへん> ゴミでも付いたんか?」

 彼は大きな手で耳を(さす)る様に払った。ゾワゾワと為た感触が耳伝いに感じる。


「如何やらゴミとちゃうみたいやな。取れへんわ。」

 僕の耳をじっと見るとうーんとうなった。如何為ようかと考えて居る様に思える。

 そうしてふふふと笑った。彼は表情をころころと変えて居る。

 最初の印象が此処で一気に崩れた。


「あの、ロージアさんって表情が無いんじゃ無かったの……?」

 失礼な事は重々承知為ながらも僕は言わずには居られ無かった。

 きっと起こるだろうなと身構える。彼は真顔に為った。やっぱり。

 然し彼は妖怪にでも取り付かれたみたいに腹を抱えて笑い出した。


「あぁ、其れ良う言われるわぁ!」

 僕の顔を指してひーひーと笑って居る。瞼からは涙が浮かび出て居る。

 其の光景に少々引いて了った。


「もしかして信頼出来無い相手には表情を見せ無いとか?」

 彼の笑いが治まった後、僕は顔色を伺いながら訊いてみた。


「あぁ、多分其う作用為て居る節も有るだろうな、せやけどな。」

 彼は腕を組む。そして顔を上げてタメを作って居る。

 一体何れ程の大きな理由が有るのかと固唾を飲んだ。


「何方かと言うと初対面で緊張()てただけやな!!」

「違うんかい!!」

 此れ以上無い様なにっこにこの笑顔で親指を立てて言う。

 関東出身の僕に激烈なツッコミを為せるとは最早尊敬に値()る。

 いや此処は日本では無いのだけれども。思わず喉から突き出て了った。


「ははははええツッコミやな。」

「はぁ……。」

 何だよ、もう、只のシュールな光景と化して了ったじゃないか。


「取り敢えず外出ようやないかい。」




「お前馬鹿だなー! 魔力の量も自分で調節しねぇでぶっ倒れん何て!! ははは!!」

 外に出て早々、彼は僕を待って居たみたいで天幕が後ろに在る其の状態で僕をおちょくって来る。

 う、言い方や所作に棘が有るけれども確かに反論出来無い。自分で魔力を上手く調節為無かったのは失態だ。猛省為るべきでは有る。


 ロージアが一歩前に出た。



「いやホンマモンの馬鹿は自分や。起きもせえへんで戦うてへん自分やわ。

 ランヷーズと()て為ってへんわ。此奴は一生懸命戦うてくれたんやで?

 其の結果が此れやで? 努力為た奴を嘲笑うつもりかいな。此のドアホ。」

 さっきの笑顔は何処へやら。僕達が最初に会った時依りも凍り付いた表情で見下して居る、

 フォードネイクは右眉を下げて納得為て無い顔を為た。地面を不満そうに蹴って何処かに行く。


「はぁ、何や那奴。嫌いやわぁ。」

 ロージアは右耳の後ろを掻いて居る。大きく溜め息を吐いた。


「あ、あの……。」

「あぁ、すまんすまん。ヷルトが朝飯作ってくれてるから行こか。」

 やや引き攣った笑顔を作って居る。明らかに作り笑いだ。僕は良く其の様な事を為て来たからか直ぐに分かる。

 多分僕の機嫌を損なわ無い様にと、気を(つか)って居るのだろう。



「おーいヷルトー、自分美味いもん出来てっか?」

「あぁ、大丈夫だ。肉も良い感じにホロホロに為って居る。」

 ロージアが彼に手を振ると彼はお玉を持って味見を為て居た。

 其れを一口飲むと彼に其う言った。


「すまんなぁ、総て任せてもうて。」

「……大丈夫だ。」

 ヷルトは親指を立てた。


「肉? 干し肉使ったの?」

「いや、ツェルバのだ。」

 へぇ、チェギ・ツェルバの肉って食べられるのか。

 知ら無かった。今迄食べようと為た文献や資料は有ったっけか?

 一体何んな味が為るのだろうか。気に為る。


「あぁ! リングさん起きて来たみたいですよ!!」

 ガタッと云う音が()る。其方を向くと、キャルべが椅子から立ち上がって居た。


「あら!? 本当だわね!! 良かった〜〜〜!!」

 立ち上がり其の筋肉の脚で駆けて近付いて来る。

 そして僕をぎゅっと抱いた、喉が締め付けられて居る。息が出来無く為りそうだ。

 僕は両手で彼女を押し返す。


「其んな興奮為無くても良いのよ〜〜・」

 違ぇんだよ!! 死にそう何だよ!! と言いたかったが喉が締め付けられて居るお陰で「あぁぁぁ……」と掠れたゾンビみたいな声しか出せない。そろそろ止めて頂きたい。もう一回僕が倒れたら良く無いだろ。


 彼女は満足為たのかやっと話してくれた。ゔうんと咽喉を鳴らし呼吸を整えた。


「あれ、フォードネイクは?」

 &&&が紅茶を飲むのを止めて顔を見上げた。

 僕とロージアは顔を見合わせて頷いた。ちらっとヷルトの方を見ると少し尻尾を上がらせて此方を見て居た。

 僕は言い辛かったけれども事のあらましを話す事に為た。


「……其れが……、」




「えぇ、ホントかよ、どっか行っちゃったって事か?」

 フューペンダが眉を顰めて静かに怒って居る顔を()て居る。

 

「せやで、きっと自分に怒られたんが余程ムカついたんやろなぁ。」

「はぁ、其う云う勝手な事為れちゃあ、こっちも困るよ……。」

 其う言って頭をボリボリと掻いた。


「あぁ……だろうな……。」

 ヷルトがぼそっと、呟く様に言った。顔に手を当てて下を向いて居る。

 僕もヷルトと同意見だ。元々護衛を()せる為に雇ったのに其れが為されて居無いのだもの。


「あぁ、何か、すまない……雇用主の筈なのに補填も何も出来無い……。」

「んあぁ、全然、其処迄気に()てへんけどな。

 ええのええの、此れをバネに頑張ってくれたらええねん。」

 彼はにっこりと笑顔を作って居る。作り笑いと云う訳でも無さそうだ。

 確かに、一理有る。ムカついても其の時の事を思い出して其う為ら無い様に為て行けば良い。


「……んまぁ……其うだが……。」

 彼は納得為て居無い顔を()て居る。


「取り敢えず放って置けば戻ると思いますよ。」

「其うかねぇ。」

 ヷルトが吐き捨てる様に言った。取り敢えずは朝餉に()る事に()た。




 僕はスープを掻っ込んで居る。チェギ̊ロ̈ㇻ̈と云う料理だ。

 基本的に具を沢山入れてボゥ̻゛ヅッㇷ゚と云う調味料とハーブ等の香辛料で味を付けた物だ。

 今回はツェルバの肉を入れたからか脂が上手く混じってシチューみたいで美味しい。


 僕はパンを齧った。彼等はさっきから余り話して居無い。何だか空気が鈍重で会話為辛いのだ。

 そして、僕は僕で何だかぞわぞわ()る。フォードネイクが帰って来ないからだろう。

 スープを一気飲み()て立ち上がった。


「ごめんなさい! やっぱりフォードネイク探して来ます!!」

「お、おい……!」

 僕の良心が訴えた。此れは探さ無いと駄目だぞ、と。

 もし彼が死んで居たら? もし彼が襲われて居たら? もし彼が路頭に迷って居たら?

 其んなの、みすみす見過ごす事は出来無い。


 ヷルトが何か言って来るけれども其れも無視を為て足早に其の場を離れて行った。

フォードネイクさんは此う云う奴何です。ええ。

リングさんとは正反対です。


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モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

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