第百十三話:雷の魔物の御登場
「……なぁ、何か聞こえて来うへん?」
「え?」
夜も明けて朝日が射し込んで来た頃、ロージアが耳をピクピクと為せながら
那の後僕は二時間程度しか寝て居ない。フォードネイクが起きて来無かったから夜間のローテーションが崩れて了ったのだ。
まぁ二時間でも寝る事が出来たから良しと為よう。徹夜は御免だ。二徹何て二度と経験為たくは無い。
「……あぁ確かに。」
「なんかあっちの方から聞こえるでなぁ。何やろ?」
彼は右の虚空の方を指して首を傾げる。
「多分……ツェㇻ̇バかな。予想が外れたとて十中八九魔物だろうね。」
耳を其方の方に向けて音を聞いてみるとバサバサと翼をはためかせる音が為た。
多分合って居ると思う。何のツェㇻ̇バかは分から無いけど。
でも、此処等辺だと無属性か雷のツェㇻ̇バが出るだろう。
「うお、自分そんな事も分かるんか。」
少し驚いた表情に為った気が為る。未だ一日しか旅を為て居無いが少し驚いた表情に為る。
かなり失礼で有るが彼にも感情が有るのだと実感為た。
そりゃね、カラカル種ですから。此れだけは自信が有るぞ。
「ん、ちょいと待て……こっちに向かって来てんちゃう?」
其方を指して其んな事を言う。確かに、バサバサ音がどんどん大きく為って居る気が為る。
「うん。っぽいね。彼等起こして来る。」
僕は立ち上がり焚き火の後から離れて天幕へと行く。
「おお、行っときな。」
「おーいヷルトー! フォードネイクー!」
其の中に入って僕が呼び掛けると、薄い毛布を払ってヷルトが目を擦りながらのっそりと起き上がった。
「……ん、どした?」
「敵来てるみたい。魔物っぽい、準備為といて。」
其処でしゃがんで彼と目線を合わした。
「あぁ……分かった……。」
彼は右手に斧を召喚為た。
「フォードネイク! フォードネイク!!」
「フォードネイクー!!!!」
僕は彼の耳元で大声を出す。然し彼はうんともすんとも言わ無い。
此れだけ大声を出して置いて此処迄ぴくりとも為無い何て有るのだろうか。
「おい、お前起きろ、起きろって!」
僕等が声を掛けて揺さぶっても全くと言ってぴくりとも為無い。
「んん……。」
「……此奴、駄目そうだな。」
ヷルトが諦めた様な表情で首に手を当てた。
目は冷めた色を為て居る。
「はぁ……。」
肩を落とすしかない。一人でも多い方が狩り易い筈なのに。
彼は立ち上がったのを見て僕は天幕から出た。
ロージアが槍を背後に持って立って居る。其んな彼に話し掛けた。
「……ごめん、駄目だった、フォードネイク起き無い。」
「はぁ、しゃあないなぁ。自分等で倒すしかないなぁ。」
彼が此方を振り向いた。流石の彼も 呆れて居る表情を為る。
するともう一度前を向いて突然、言った。
「おい自分等平気か? 何となしやけどそろそろ来そうな気ぃ為る。」
彼の言う通り、何かばさばさ音が近付いて来る様な気が為る。
「本当か?」
「ホンマホンマ。」
ヷルトが鼻をひくひくと為せて居る。
「……本当みたいだな。」
彼は斧をもう一つ出し左手にも装備為た。
空を眺めてみると黒い点が見えた。其れはどんどんと大きく為って行く。
音も近付いて来るのが分かった。遂には姿が見える迄に為った。
僕は横に走る。
「グルンゲェェェェェェ!!!!」
僕等の前に現れたのは雷のツェㇻ̇バ、チェギ̏・ツェㇻ̇バだった。
奴は金属みたいにピカピカと為て居て、金の様に光を反射為る。
此奴は此の金属みたいに硬い鱗が特徴的なのだ。
僕はやっぱり嫌いな魔物だ。理由は明白だろう。
しかも、かなり大きい。此れは長い戦いに為るぞ……!!
「オラァ!」
彼が横から槍で突く。然し奴に傷一つ与えて無いどころか槍の先が潰れて了った。
「……チッ。」
舌打ちを為ると自身の収納魔法から鎌を出した。
「グルガァァァン!!!」
奴は顔を空に上げて稲妻を撃って来る。おまけに地面が揺れる。地震か。
ズドンズドンと音が為て稲妻が地面に射当たる。
僕は前転為て避けた。そして辺りを見遣るとヷルトがロージアを抱く様に為て転がって居るのが見えた。
「あぁ……スマン……地震程度で足が竦んでしもたわ。
せやけど此りゃランヷーズとして顔が立たん!
借りはきっちりと返させて貰うで!」
すると鎌みたいな物を出して居るのが見えた。
「おい猫ちゃん! 自分土属性かトゲール属性で地面から蔦でも生やせへんか!?
自分アレやろ、魔導師何やろ? 無理か?」
奴を中心に地面にへばり付く様に雷の丸い輪が何個も向かって来る。
後ろに回りつつ其れをジャンプで避けて行く。
「其れが冷属性とゲード属性と無属性しか使えなくて!!」
僕を追尾為る様に来る稲妻を避けて大声で聞こえる様に叫ぶ。
「はぁ!? なんやって!? 何て其れで此処迄登り詰めたんや!?
クソっ! 対抗策も無く為ってもうたわ。 もう破れ被れや!!」
彼は鎌を振るって奴の脚を狙おうと為て居る。然し奴は巨体の割に動作が素早く、彼の攻撃をするりと躱して了う。
ヷルトはヷルトで斧を振るって居るみたいだが長身が足りず攻撃が当たって無い様子だった。
「おい! リング!! お前那れが使えただろ!? 」
「何!? あぁっ!!」
彼の方を向いたら奴は其の小さな隙も逃さずに稲妻を放って来た。
思わず当たりそうに為って了った。間一髪で避ける事が出来たものの当たって居たら如何為って居た事だろうか。
「捕縛魔法だよ! 那の縄を出す奴!! 其れで那奴の脚狙えないか!?」
「……うーん……遣ってみる! 分かった!!」
僕は一途の望みに託す事に為てみた。確かに、其れなら行けるかも知れない。
出来るかな。翼を上手く使って攻撃を躱す奴に上手く縄を掛けられるだろうか。
「ロージア! 俺等は那奴の手助けを為よう。
先ずは二人で上手く浮遊為せて隙を作らせよう。」
「ふん、其の位お茶の子さいさいや! 舐めへんといてくれるかいな!!」
ロージアは自分の腕を叩いて其う言って居た。
「あ! 其う云えば此奴鱗が熱で溶け易いよ! 温度を上げれば少し許り攻撃が通るかも!」
走りながらも掌に小さい縄を出してイメージトレーニングを為て居ると、ふと思い出した。
そう、金属みたいに固いとは云え、高い温度に晒されると鱗は熱で柔らかく為るのだ。
「ね、熱ぅ!? 自分あまり好きちゃうんよ! 暑いの耐えられへん!!」
「えぇっ!?」
「自分も狐やろ! 嫌いちゃうんか!?」
「……別に。」
「何でや!!」
彼等は何故かコントを繰り広げて居る。
「「うおっと!!」」
其んな彼等を叱咤為る様に奴は稲妻を放った。
すると顔を見合わせて行動を開始為た。
後ろから音が為た。するとキャルベが半透明のドームを壊そうとドンドンと叩いて居るのが見えた。
「ごめん! ちょっと離脱為る!!」
僕は大声で其れだけ言って天幕へと向かう。
半透明のドームに行くと其の前で石筆を出してメモ帳にささっと書いた。
『セーアイ ダェㇻ̇ラㇻレ キ̏ラ̇エㇰミュヰ̇ナイ ジラ̇ㇺゥ̻゛ スーメヤイ ク̏ー
スラ̇イヷ̇ㇻ̈、ヤィアッヷ̇ポリ̈ャイ ケ̏ーアヤイ アェッゥ̻゛チョェギ̏
(危ないから! 此処に居た方が未だ安全だから! 此れは雷程度では壊れ無いの! お願い)』
すると彼女は其れを見て困惑為て居る様子だった。
薄く何か言って居るのが聞こえた。
多分、「け、けど……囲まれたら終わるよ!」って意味だろうか。
僕は又メモ帳に書いて行き、さっきと同じ様に見せた。
『パㇻ̇ビエㇰポリ̈オェカ キ̏ラ̇ェカラ̇イ ケ̏ーアリ̇ ユーアミュㇻ̇ヷ̇
カ゚ㇻ̈ティ キ̏ーラ̇ェㇰㇺゥ̻゛ク̏ー ガイア ギーアㇷ゛リ̈カイ フ̇ーㇻ̈
(囲まれて無いよ! 今居るのは此の一匹だけ! だから此処に居て! 後は僕等に任せて!)』
バチバチバチ、と後ろから音が為た。かなり強烈な音だった。
あぁ、マズい、行かなければ。多分伝わっただろうと信じて僕は其方に行く事に為た。
「おい、ホンマ大丈夫かいな自分!」
「……ん、あぁ、痺れが為るけれども平気だ……。」
其処には倒れて居る彼を背後に守って鎌を大きく振るって戦って居る彼が居た。
奴は雷を落として攻撃を為てそしてバックステップで距離を取る。
「ごめん!」
「あぁ、来やった! 此奴雷を喰ろうてもろたんや!
何とかやって此処迄復活為せたけど殆ど動けへん状態や!」
ヷルトは蹌踉けて居るものの何とか立ち上がろうと為る。
「ちょ、だ……あぁ此の!!」
僕は青い半透明な壁を出して奴の攻撃を防いだ。
バチバチバチ、と其の壁すらも帯電為て了う。
「……大丈夫?」
「あぁ……。」
彼は頷くけれども明らかに大丈夫そう何かでは無い。
見てくれが目に見えて異常なのだ。
あぁクソ、僕が那方に行か無ければ彼は助かったのかも知れないのに──!
「取り敢えず自分が如何にか為るから奴を引き寄せてくれや!」
ロージアが震える彼の手を肩に回して
「……うん。」
彼の事が心配だが、其う為るしかないよな。僕は奴が上空に居る事を確認為た。魔法を放とう。
「ヅ̌ェㇻ̇ガヲ̇ゥーラ̈・ナ!!」
其奴に向かって刃を放った。奴は吃驚為たみたいで高度を落とし僕の事を追って来る。
僕は走った。走って走って走った。兎に角脚に力を込めて
着いて来て居るのかと上空を見ると其処に奴は居無かった。
僕は其の場できょろきょろと見回す。すると、奴は又倒れたらしいヷルトを介抱為ようと為て居る彼の前に居た。
……嘘だろ。瞳孔が細まった。
其奴は彼目掛けて稲妻を放った。危ない。僕は走った。腰を低く為て獣の様に入った。
何故此んなポーズを取ったのかは自分でも分から無い。強いて言うなら本能か。
僕は彼等の背後に経った。彼のなんやて! と言う声が聞こえた。
死を覚悟為た。雷が直撃為て生き残る確率って幾らだったか。十パーセントは無いんじゃないだろうか。
目の前の光景がスローモーションに見える。閃光が僕目掛けて向かって来る。
けれど防御魔法何て張って居る暇も無い。あぁ、此処で死ぬのか……?
彼等の犠牲に、死ぬのか? ……其れだけは絶対に嫌だ!
ゆっくりと時間が進む中で僕は考えを巡らせた。思考がはっきりと為て居て何時も以上に脳味噌が回転為る。
如何為る、攻撃為る? ──其れは駄目だ。奴は避けるに違い無い。
じゃあ如何為る、転移為る? ──其れも駄目だ。何処にも魔石を置いて居無い。
くそ、僕が稲妻に耐えられる様な体だったら良いのに。
……あ。
其うじゃないか。稲妻に耐えられる様な体に化れば良いんじゃないか。
僕は敢えて口を開いて牙を見せ付けた。奴がびくっと後退り為た様な気が為る。
短縮詠唱は為て居る暇が無い。多分魔力を喰らうだろうが無詠唱で行くしかない。
僕の毛先が変化為て行く。元々の短毛だった其れが毛先の白い鮮やかな群青色のフワフワな毛へと変わって行く。
額からは小さな角が生え尻尾はぞわぞわと成長為て行ってやや先から重みを感じる。
グルネールは確か尻尾の先に宝石みたいな赤い何かが有った筈だから多分其の重量だろうな。
僕は普通の時依りも伸びた其の牙を奴に見せ付ける。
其の儘、僕は稲妻を諸に喰らった──
ロージアは北や東に住む動物の筈なのに何で関西弁なの?
と思われるかも知れません。
ですがエカルパル国では北は民族の住む場所、東は高い山も有りません。
すると、西の高い山脈に住む事に為ります。ですので関西弁なのです。
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モチベに成りますので、宜しければ。
其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。
良かった所、悪かった所、改善点等有りましたらどうぞお願いします。
もし誤字や明らかなミスを見付けましたら誤字報告からお願いします。
宜しくお願いします。




