第百十一話:護衛依頼
十一月二十八日、台詞を修正しました。……久々に大ポカやらかした! 恥ずかしい!!
僕達はホルベへと遣って来た。獣人国へ行く費用を貯める為だ。
依頼ボードを眺め、何か良い依頼が無いか探して居るのだ。
すると、受付嬢に話し掛けられた。
「……すいませーん。」
何処か気不味そうに僕等を見て居る。何だろうと其方へと体を向ける。
「あの、カインドロフさんに指名で依頼が有るんですけれども……。」
「へぁ!?」
僕は変な声をあげた。指名で依頼!? 心臓が飛び上がって了いそうだ。
其れってもっと上のランクの人が受けられる依頼なんじゃないのか……?
いや、上のランクの人でも滅多に無い依頼だぞ。何故其んな依頼が僕に……。
「え、えと……ヷルト。」
「あぁ、行って来て良いぞ。」
後ろを向いてみると彼は穏やかな紅い目で見て居た。
「……ごめんね。あ、あの……詳細は……。」
一言言って其の言葉に乗らせて貰う。
「其れに付いては二階でお話しましょう。」
彼女は受付のハッチを開けて僕を案内為る。頭をぶつけないかと身構えて居たけれど僕はそもそも身長が低いんだった。
背伸び為ても十分に余裕が有った。何だか悔しい。
「あ、此処! 此処階段キツいので気を付けて下さいね!!」
少し奥に進むと、多分四十五度でも有るのかと思う位急な階段が有った。最早坂だ。
彼女が先行為て階段を進むものの何段か登った辺りでガタッと足を踏み外した。痛そうだ。
そそっかしいなぁ、大丈夫なのかよ。心配為るよ。
なのに彼女は舌を出して後ろ髪を掻きてへっと笑う。
……気にしても無いのか?
僕は後ろを着いて行く。階段を上がり目に映ったのはそこそこに広い空間だった。
右手には机が有るのだけれども其の上には書類みたいなのが散らばって居た。
奥を見遣ると誰かが三人座って居るのが見えた。対面でソファーが置いて有って、彼女は其処へと僕を連れて行く。
彼女が座ったのを見て僕もゆっくりと其処に座った。……尻尾如何為よう。
少し悩んだけれども。奥深くには座らずにやや浅く座り尻尾を膝に持って来た。
「……ど、どうも。」
僕は彼等に少し余所余所しい感じで挨拶を為る。
此う云うのは第一印象が一番だと思うのだ。もし此処で御相手様を怒らせて了ったら立場が無い。
本職は魔導師だけれども、副業と為て此れを遣って居る限りランヷーズとして責任を持たねば為らないと思うのだ。
「あら!! 噂通りね!! 可愛いネコちゃんっての間違いじゃ無かったわよ!!」
見た目は大柄の男性に見える彼? 彼女? が立ち上がって僕の事を指す。
僕が此う言ったのは体は絶対に男性なのだが、着て居る物は女性物の服だったからだ。似合って無い訳では無いのだが。
何方で呼べば良いのだろうか……。一応、彼女と為て措こう。
「ほ、ほんとですね……。」
中央に座って居る華奢な女性が緑色のポニーテールを揺らして頷いた。
「おいおい、ゴンバロネ、初対面の人に失礼だろ。」
反対側に居る男性は彼女を宥める様に少し立ち上がって肩を叩く。
「やだあたしったら恥ずかしい……。」
両手を可愛く顎の辺りへと当てて恥ずかしそうに目を瞑って元居た位置へと座り直す。
「ええと、今回は何の様な御用件で私に依頼を頼んだのですか?」
「あらあら、別にランヷーズに其んな丁寧な言葉遣い求めて無いわよ。」
彼女は手を誘う様に動かし朗らかな表情で其う言って来る。
けれど、
「いえ、仕事として請けおうかも知れない以上丁寧に接さなければ為りません。」
首を横に振り彼等を見る。其処はきっぱりと断らねば。
公私混合は良く無い。
前に距離を縮めたい、と言った。対等に為りたい、と。
けれど其れは交友関係等のお話で、此の様に自分に請けられた依頼は或る程度距離を置いた言葉遣いを為ねば為らないと思う。
対等云々の前にそもそも依頼人と請負人の立場なのだから。其れと此れとは話が違う。
「あらあら……仕事に真面目そうなお人で、此れなら安心出来るわね。」
彼女は彼等の方を振り向いた。彼等はうんうんと頷いて居る。
あぁ、良かった。信用為てくれたみたいだ。けれど、同時に重い責任も生まれた。
……うん、頑張ろうな。自分。
「じゃあ、私達の自己紹介からね。私はナルメロウ・ゴンバロネ。」
彼女は手を挙げて言った。
「あ、ヨール・キャルベでーす。」
「俺はバルヴュ・フョーぺンダだ。まぁペンダとでも呼んでくれ。」
彼等は流れる様に自己紹介を為た。
「はい……ゴンバロネさん、キャルベさん、フューぺンダさんですね。」
「スペルは何んな感じですか?」
僕はメモ帳を取り出した。依頼人の名前だ。間違えたら恥ずかしい。
「あぁ、なら商会の那れ……。」
彼等はカードみたいな物を差し出して来た。ジュミェロン商会、と上に書かれて居り、其の下に三人の名前が記述為れて居た。ブロック体で。
「はい……はい。有り難う御座います。」
僕は其れをメモ帳に写して行く。……おっと、スペルを間違えて了った。
其処に横線を引いて其の下に書き直す。
「彼等は如何やら護衛の依頼を頼みに来たらしいですよ。
詳しくは彼等の口から……すいません、もう一回お話してくれませんか?」
彼女は手を膝の上に置いて御辞儀を為る様に腰を少し曲げた。
「はいはーい。」
「私達は見ての通り商人で、此れからジュデバ帝国に物を売りに行きたいのよ。」
「そうそう、最近獣人達の間で東部スガンバ模様のスカーフが流行ってるらしいんすよ。
私達は元々此の国で売ってたんですけど、此れはビッグチャンス!! 売りに行かねば!! 的な感じで。
後はジュデバ帝国って何かおったか〜い物がいっっっっぱい有ると聞くじゃないすか! ぬへへへへ……あ。」
彼女は蕩ける様なあられも無い笑顔を浮かべた。ヒューペンダが冷たい目線を送っている。
其れに気付いたのか口を押さえて元の表情に戻る。
「だからジュデバ帝国迄行きたいんだ。お前には其の護衛を為て貰いたい。」
此方を向くと彼は其う言った。ほぉ。其んな依頼が僕に舞い込んで来るとは奇異な事も有るもんだ。
「成る程……。」
ふむ、確かに此方としてもジュデバ国に行きたかった。少しでも早く行けるのなら研究も|早めに進められる。今年は二回行けるかも知れないな。
少し許り交渉を為ても大丈夫だろうか。先ずは彼等に対し忠告を為せば。
「ですが、一つ言って置きます。今現在ジュデバ帝国はヅィー族の入国を拒否為て居ます。
貴方達はヅィー族ですよね? 大丈夫ですか?」
彼等の眼を右から見て行く。彼等三人は角も無い、翼も無い、増してや毛皮何て有る訳無い。
「えぇ、多分大丈夫よ、獣人の貴方が居るし。」
如何やら商売感覚には強い様だが、其処等辺には甘いらしい。
「はぁ。……確かに条件付きで入国出来る場合も有りますが……。」
僕は溜め息を吐いた。そりゃあ其うかも知れないけれど。
本当に大丈夫だろうか。次に言いたい事は……。
「後……此方から提案為るのも烏滸がましい話ですが、もう一人、私が紹介為る人を護衛と為て雇いませんか?」
「あら、腕の良い方なのかしら?」
「えぇ。其れは私が認める程度には。名前はドヷルトと云い、狐の獣人です。
ですけれども、ヅァェヲ̇センㇳフ̇ェ─キーなんです。でも、此れはホルベに余り行かない所為です。
腕の良さは認めますよ。必ず皆様を守ると保証します。」
ちょっとばかし詐欺師みたいな事を為て了った。
けれど、嘘は吐いて居無い。其れに彼はもともとアヲ̇センㇳレベルのランヷーズだ。
腕は十分に有るだろう。もし此れで駄目だったらヷルトは留守番為て貰おうと思う。
「あぁ、ドヷルトさんですか? 那の人確かに腕は良さそうですよね。
多分其の内リングさん越しちゃうんじゃないですかね?」
受付嬢が何処か嬉しそうに僕の話に乗っかって来る。だろう? 那奴は凄いんだからな。
しかし最後の一言は余計だ。
「……うーん……まぁ、なら、良いかも知れないわね? 分かったわ。」
「護衛なら馬車のお金も免除為てくれますしねー。多い方が良いですよね!」
「元々二人以上は雇うつもりだったしな。俺等としても都合が良いな。」
お、何だか良い感じに話が進んで行って居る。有り難い限りだ。
依頼主に迷惑云々言って置きながら押し付けがましい事を為たな。はは……。
後はヷルトが許してくれるのを願うだけだ。
多分、話して居る途中に抜けるのはホルベの規則違反に成りそうだから彼に直接言うのは無理だろうなぁ。
「あ、其の人は今何処に居るのかしら?」
彼女が不安そうな顔を為て居る。確かに、遠い所に住んでたり為たら嫌だもんな。
「あぁ、今受付で待ってると思いますよ。」
「あれ? 二人で組んで活動為て居るのかしら?」
矢継ぎ早な質問だ。少し返答が詰まって了った。成るべく覆い隠そうと口角を上げて返答為る。
「うーん……其う云う訳でも無いんですけれどね、けど、個々で活動しつつも時々組んだりは為ますね。」
すると彼等はへー、と言う。……何で感嘆為た様な声を漏らすのだろう。
「んじゃ、概ね大丈夫って事かしら?」
「其うですね。」
其の後は給料に付いてのお話と集合場所や集合時刻に付いて話した。
酷く浅ましい話では有るが、僕が見た感じ、給料は良い感じだった。
目的も果たせてお金も貰える何て此れ程喜ばしい事は有るだろうか。
後は彼等は二ヶ月間は其処で売りたいみたいだ。帰りの護衛も頼みたいらしい。
……二ヶ月かぁ。少し短いな。
「あ、何で私に依頼を為ようと思ったんですか?」
其等に付いて話し合った後、最後に此の話を為ねば。何で僕みたいな人を護衛に為ようと思ったのだろう。
確かに異名は付けられて居るらしいけど余り実感も沸か無いしなぁ。
「あぁ、貴方魔導師らしいじゃない? 新聞にも一面に乗っててねぇ。
其処で偶々なのだけれど噂を耳に為たの。」
「……何です?」
前のめりに成って尋ねる。
「悪魔のランヷーズは魔導師クリングルスじゃないかって。」
「其れだったらきっと力量も有るし魔法も使えるし護衛に為たら良いと思ったのよ。」
まさかの其方か、と云う事は僕がランヷーズを遣って居る事も世間にバレて居るのか。
あぁ、本当に良かった。此んな辺鄙な田舎へと引越して来て。那んな都会じゃあ人目を気にして生きて行かければ為らない所だった。
注目為れるのは正直言って苦手だ。自由な行動が出来無く為るのが厭なのだ。
「……其う云う事ですか。」
何となく分かった。もう都会に行く時は変身魔法必須だなこりゃ……。
そんなこんなで護衛依頼を受けて了いました。
実は此処のストーリーはリメイク前から有った物です。
此処迄漕ぎ着けたのは本当に喜ばしい限りです。
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モチベに成りますので、宜しければ。
其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。
良かった所、悪かった所、改善点等有りましたらどうぞお願いします。




