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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第二点五章『村に帰って』
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第百八話:ガヴ̇ャードェを食す

「ただいまー……。」

 僕等は息を切らして居た。全速力で走って帰って来たからだ。

 もう夜も深いし、おまけに懐中時計を見たらかなり時間が経って居たのだ。多分三十二分は過ぎて了って居る。


「あぁ、お帰り。」

 ヷルトは台所から遣って来た。彼の剣を受け取る。

 エプロンを()て居る彼はやっぱり似合って居る。


「あ、狩って来たよ。ほい。」

 収納魔法から其れを出した。ガ̊ル̇ーニャーㇳ ゙を彼に渡す。

 彼は両手にガ̊ル̇ーニャーㇳ ゙を持って居る状態に為った。


「おぉ……二つも狩って来たのか。

 ……うんうん、こっちがリングが狩った奴か?」

 首の斬られて居無い方を指して僕を見て来る。


「あ、いや……こっち。」

 僕は首の斬られた方を指した。


「あ、え!? 嘘!? お父さん、あんた多分ランヷーズ向いてますよ!!」

 耳を立てて尻尾を上げて防具を脱いで居る彼の肩を叩いて居る。


「……い、いやぁ、正直紛れだったよ。

 奴が俺の右手に噛み付いてさ、其処を此う……首根っこ掴んで絞めたんだ。」

 彼は手袋を脱ぎ機械式の指を動かして居る。

 

「「…………。」」

 僕とヷルトは顔を見合わせた。彼の表情からは驚愕()て居るのが読み取れる。

 ……うん、分かるよ。首を掴んで絞めた何て普通は出来無いもの。何んな怪力何だと。


「……う、うん……お疲れ様でした……。」

 彼はゆっくりと御辞儀を()た。


「えー……じゃあ此の二つ使う、って事で良いか?」

「うん。」


「分かった。後は遣っとくから休んでな。」

 彼は其れを両手に持って台所へと行く。


「え、良いの?」

「あぁ。」

 手伝ってやろうかと思って居たのだけれど淡々と表情を変えずに言う。


「……ん、ありがと。」

 何だか申し訳無く為ったけれども、此処は感謝を()て置こう。多分感謝を言われた方が嬉しい筈だ。

 彼は何も言わ無かったものの犬みたいに尻尾を振って居る。……素直な奴め。

 彼の顔は赤面()て居る様に思えた。 


 其れを隠すかの様にそそくさと台所へと行く。


「んじゃあ私は此処等辺で……。」

 彼は帽子を被って玄関へと向かう。

 え、帰っちゃうの? と思った。

 彼を見て引き止める。


「あ、いや、食べて来なよ。」

「え?」

 此方を振り向いた。顔には口を半開きに()て困惑の表情が浮かび上がって居る。


「良いよね? ヷルト。」

 僕は彼の方を見てみる。彼は其奴の腹に包丁を入れながら僕の方を向いて大きく頷いた。


「ほら、良いって。」

 にかっと牙を見せて笑みを浮かべた。


「……なら、お言葉に甘え()せて貰おうかね。」

 帽子を取って困った様に笑った。




「……いやぁ、リング、狩り出来る様に為ったんだねぇ。」

 彼は紅茶を一口飲む。感心()た様に頷いて居る。


「いや、まぁ。……ね。ランヷーズだから、かなり戦えると思うよ。多分ね。」

「ランヷーズ?」

 紅茶を置き、瞳孔を開いて此方を見て来る。


「あれ、父さん知ら無いの?」

 僕は不思議に思った。あれ、知ら無いのだろうか。と。


「うん、全く。父さんの国では無かったなぁ、其んなの。」

「へー……。」

 けれど、十八年間此方で暮らして居て知ら無いと云うのは何か引っ掛かる。

 でも其んな物なのかな。ランヷーズって余り一般的な職業でも無いしな。

 僕は成るべく詳細に其の事に付いて説明()た。


「ほぉ、此の国には其んな職業が有るのだね。

 ジュデバ帝国でも導入()たら良いかもね。害獣にはかなり悩まされて居るからね。」

 彼は腕を組み関心()て居る様な顔を()る。へぇ、やっぱり他の国でも悩まされて居るのか。

 只建国近く、つまり国の基盤が固まって無い時に此の制度を導入()たから受け入れられて居るものの、途中から導入()たら反発為るかも知れない。

 僕が見た感じでしか無いのだが、那の国、結構変化を嫌がると思う。


「如何()た? リングや。」

 其んな事をぼうっと考えて居ると急に彼から話し掛けられた。

 首を傾げて僕の様子を伺う様な目を()て居る。


「……あいやあ、何か此の国って結構日本と類似点が有るな、って。」

「ヌィホン……? あ、前世に住んでた国とか、其んな感じかい?」

 少し笑みを浮かべて僕に訊いて来る。


「あぁ、そうそう。」

 何だか発音がおかしいけれども僕は頷いた。

 いただきますと違って日本って其処迄難しい発音じゃ無さそうなのに。


「おいー、出来たぞ。」

 呼ばれた。右の方を向いた。

 耳を元気良くピクピクと()せながら両手にお皿を二つ持って居る。


 皿をコトン、と置く。其処にはガ̊ル̇ーニャーㇳ ゙が其の儘丸焼きに()れて居た。二つ、倒れ込む様に乗っかって居る。

 足は無い。見た目は中々にえげつない料理だけれども僕には美味しそうに見えて仕方無い。

 勿論見た目だけの為に此んな料理が生まれた訳では無い。

 元々はフュンゲルン族の食べ物だ。フュンゲルン族はかなり北の方に住む一族だ。

 此の族で面白いのが元々別の一族だったって事だ。獣人で構成為れるフュン族、人間で構成為れるゲルン族。

 だからフュンゲルン族なのだ。何方も『人』を指す言葉だから面白い。


 さて、話がズレ込んだ。此のフュンゲルン族は北に住む民族だ。

 故に余り食材は取れ難い。稲作や麦作何かは勿論出来無い。水が直ぐ凍って了うから。

 だから此の料理が生まれたのだ。ガ̊ル̇ーニャーㇳ ゙の中に野菜と香辛料を入れ、ヅィー族でも食べやすく()て、内臓も余す所無く食材を喰らう為に。


 只、此処で登場()るのがジュデバ帝国だ。此の時はギョンヹア・ジュデバ帝国と名乗って居り、此の時饑饉(ききん)だったと()れる。

 そして此の土地を侵略為た。何故此の土地を盗ったのかは勿論理由が有る。

 此処の土地には魔物が沢山棲んで居たからだ。なら、依り其の土地を盗らなそうだが、其処には魔物は殆どな温厚だったのだ、

 彼等は其処から必要以上に魔物を狩ら無い様に、そして自然の恵みに感謝為ながら。


 おまけに、其処を抜ければ温暖な大陸も有る。畑も作れる。奴等にとって其処を侵略()る事は良い事尽くめだったのだろう。


 其れで彼等は建国当時のエカルパル国に転がり込む様に遣って来たのだ。

 此処等辺の御噺は割愛()る。で、彼等の中で特別な時に食べる其れがエカルパル国内に伝わったのだ。

 エカルパル国っぽくアレンジは()れて居るけれども。


 と云う感じで獲ったお肉を余す所無く使う料理なのだ。

 只、其れとは別に美味しい料理だ。内臓が嫌いと云う人は多いかも知れ無いけど獣人は余り選り好みを()無いからな。

 味に煩いのは一部の猫科位だけだろうか。


 もう一つの方にはパンが置いて有った。


「……じゃあ。」

 僕等は祈る様なポーズを()る。


「「「日々の糧に感謝して、そして生き物に感謝し、神様がくれた食物を頂きます。」」」


 ヷルトがガ̊ル̇ーニャーㇳ ゙の腹を留めて有った紐を取る。

 すると其の中から野菜やコ̊ㇻ̇ミーが出て来る。勿論お肉も。


 僕は其処から取り分けて自分のお皿にへと持って行く。

 フォークで肉と野菜を突き刺して口に運んで行った。……美味い。

 お肉が柔らかくて脂もしつこく無い。野菜もほくほくと()て居る。正に豪快でワイルドな料理、って感じだ。

 其れに()ても内臓が美味い。僕が取った所はレバーの様な所で、やや苦味が有るけれども歯応えと独特の旨味と云うか、深みの有る味だ。


「ん、美味しいよ。」

 彼に対して小指を見せ付ける。彼は耳をピクピクと()せて居る。

 其うだろう、とでも云う様な誇らしげな目を()て居る。


 僕等はもぐもぐと其の料理を運んで行く。切り分けられたパンの方も手に取ってみる。

 其の上に肉と野菜類を乗せて其の儘口に運んでみる。


 美味い。脂がパンに染み込んで相乗効果でより美味しく感じる。


「あのさ、ジュデバ国って何んな挨拶を()るの?」

 僕はゆっくりと食べて居る彼に対して質問為てみた。


「ん? あぁ……アェダナク カェンダラ̉オン ダェルダェナ、かな。

 意味は大体……『アイアブㇻ̈ガ̏カイ ハェーアイ キ゚ューラ̈ラ̇リ̇ ロ̇ェグㇲ゛ザェクㇺゥ̻゛(自然の恵みに感謝します。)』だろうかね?」

 彼はパンを齧って居る。そして目を嬉しそうに細めて居る。


「ふふふ、にしても親子で此う遣って食べれる何てな。那奴に怒られちまうよ。」

 其の物言いの割にはちっとも焦っても居無いし寧ろ喜んで居る様に見えた。


「あぁ、帰ら無くて良かった。」

 と言うと内臓部分をフォークで刺して口に運んだ。

 其の後はあっというまに其等を平らげて了った。

 自分達でも驚く位に。けれど、彼等と話すのはとても楽しくて、料理が美味しくて、暖かい空間だった。

ガヴ̇ャードェは中々に途んでも無い料理ですが、世界は広いです。此の様な料理は現実世界を探せば多分何処かしらには有ると思います。アイヌ族が食べるキビヤックに近いかな、と書いて居る最中に思いましたが、那方は発酵食品です。此方は違います。

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