第百七話:夜の狩り
僕等は森の奥へと遣って来た。ガ̊ル̇ーニャーㇳ ゙と云う魔物は此う云うじめじめと為た薄暗い場所に居る事が多いのだ。
夜の森は不気味だ。四方八方から光った眼がぎょろりと此方を覗いて居る。
多分鳥の魔物だとかが木の上に居るのだろう。カーカー、と烏でも鳴いたかの様な鳥の声が聞こえる。
彼は一応は戦えるみたいだ。只、対人経験しかないみたいだから少し不安は残る。
対人と魔物相手じゃあ要領は全然違うだろうからな。
「……何で一緒に来たい、って言ったの?」
僕は後ろに居る彼に向かって話し掛けた。
「親は子供の成長為た姿を見たいもんだろう?」
まるで当たり前かの様ににっこりと笑う。……其う云う物なのだろうか。
自分が親にでも為れば分かるのだろうか。分から無い。
何となく胸に支えが残るけれども、僕は魔物探しに集中為る事に為た。
「なぁリング、何か後ろから聞こえ無いかい?」
僕は彼の方向を向いた。耳をピクピクと為せて剣を構えて居る。
眼がキリッと為て居る様に見えた。
耳を前に傾けて音を探ってみる。確かに、何か音が聞こえる。
狼みたいな生物が駆け回って居る音だ。ガッダガッダと蹄と地面が擦れあって居る。
其の音を探る為に其処等を彷徨いてみる。
「お、おい……。」
「取り敢えず着いて来て。」
口に指を当てて彼に指示を為る。
彼は頷いて僕の後を着いて来て居る。
音を頼りに為て居ると音の在り処が分かった。
如何やら、来た道を少し戻ったやや開けた広場に居るみたいだ。###が二匹居る。
多分、番なのだろうか。草むらから見るに求愛行動を為て居るみたいだった。
雌の大きい牙を雄の牙に合わせて居る。
「ウルォォン!!!!」
「グルアァァン!!!!」
彼等は鳴き声を上げる。まるで愛情を確かめあって居るみたいだ。
「僕は右に居る雌の方を狙うから、雄の方狩ってくれない?」
成るべく声を絞って図体の小さい方を指して彼にお願い為る。
「え……雄? 小さい方が雄なのかい?」
彼は同じ様に声は小さいものの困惑為て居る。まぁそりゃそうだもんな。
普通は雄の方が大きいと思うか。肉食系獣人は殆ど其うだもんな。
「うん。雌の方が凶暴で危ないからね。お願い。」
「あ、あぁ……頑張る。」
自分の剣を握って決意を決めた様な顔を為る。
「自分の身が危ないと感じたら逃げちゃって大丈夫だからね?
てか寧ろ逃げてね?」
僕は釘を刺して置く。別に今回はホルベからの依頼でも無い。命が危ないと思ったらさっさと逃げて欲しい。
実の父に死なれたら僕は嫌だからな。
「……よし、じゃあ僕が奇襲を仕掛けて右にへと奴を追い詰めるね。
多分左か前に行くだろうから追い掛けて首を斬ってね。」
「う、うん……。」
草むらががさがさ、がさがさ、と不自然に動く。
奴等は其の物音に気付いて警戒為る様に唸りながら其方へと近付いて行く。
……と、言ってもがさがさと為せて居るのはドゥレマなのだけれど。
僕は其の殆ど正反対に位置為て居る。
「うわっ!?」
ドゥレマは声を態とらしく上げて驚く。よしよし、驚いてくれた。
其の声で確信為たのか奴等は其方にへと走ろうと為た。
僕はジャンプを為る様に草むらから飛び出して魔法を放った!
「ヅェルガヲゥーラ・ナ!!」
雌の方へと魔法の刃を飛ばした。奴は其れを擦れ擦れで躱し、其のドラゴンみたいな尻尾を揺らしながら森の方へと逃げて行った。
僕は其の行動を許さ無い。執拗と言われてもおかしく無い位に追い掛ける。
右手に剣を持ち姿勢を低く為て風の抵抗を受け無い様に為る。
正直奴の姿は分から無い。然し音で何処に居るか分かるから特に問題は無い。
奴の音は右から聞こえて来るみたいだ。
僕は其方に方向を変えた。崖みたいだったけれども其処から降りて奴を探す。
走りは止め無い。
すると、奴の鳴き声が聞こえた。ウルウルと唸って居るみたいだった。
草むらを掻き分けてみた。
其処には奴は低い姿勢で座って居た。僕が剣を振るうものの奴は逃げて了った。
ちっ、折角のチャンスだったのに。
僕は奴の後を追い掛けて行った。
木々を抜けて広場を抜けて走って行くと崖にへと出た。
下を眺めてみるとかなり高い崖の様だった。
「ガルゥゥア!!!!」
鳴き声が聞こえた。後ろを振り向くと其処には奴が居た。まるで勝ち誇った様な顔を為て舌なめずりを為て居る。
奴はじわりじわりと近付いて来て僕を追い詰めて居るつもりみたいだ。
僕は徐々に崖の方へと追い詰めてられて行く。
真上を眺めた。其処にはかなり高い所に有るものの枝が有った。
……よし、平気だな。
僕は飛び上がった。そして其の枝を掴んだ。
奴は困惑為て居るのか崖の方を眺めて居る。
枝から飛び降りて奴の方を向いた。……足を挫いた。
少し痛みが奔るけれども奴の目の前では表情に表さ無い。寧ろ、口を大きく開けて奥の犬歯を奴に見せ付けた。
奴は身を屈めて怖がって居る様に見えた。奴がさっき奴がやったのと同じくじわりじわりと近付いて行った。
目の前に立っても奴は何も攻撃を為て来無かった。
「ゴルウウウアアガアアアアン!!!!」
何も為無いかと思いきや咆哮を上げやがった。……マズい。さっさと家に帰らねば。
僕は直ぐに奴の首を撥ねた。地面にころりと転がる首を回収為て全速力で広場へと戻って行った。
早く為無いと此処等辺り一体に仲間が集まって来ちまうぞ……!!
広場には彼は居無かった。キョロキョロと辺りを見回す。
ドキドキと為て居ると何処からかひょっこりと彼が現れた。
「……あぁ、リング、獲ったよ。」
如何やって遣ったのか彼のもたげる首を持って僕に見せ付けて来た。
顔はニコニコ為た笑顔だった。
「うん、ありがと。色々と訊きたいけれども取り敢えず今は帰ろう!
じゃないと彼等の仲間が集まって来ちまう!」
僕は彼の手を握った。
「な、何でだい?」
「僕が倒そうと為たら那奴咆哮を放ちやがったんだ!
直ぐに集まって来て了うよ。」
「わ、分かった……。」
僕の必死な言葉遣いから察してか彼は頷いた。
僕等はそそくさと其の場を後に為て行った。
夜の狩り何て普通人間だったら危ないとは思うのですが、彼等は猫獣人です。猫獣人皆が皆夜目が効く訳でも無いですが、彼等の種族は見えるのですからね。夜でも御構い無しです。
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モチベに成りますので、宜しければ。
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