第百二話:ホルベへの報告とヷルトの過去話
正直、ホルベって名前付けたの後悔してます。
何故なら、助詞の『へ』を付けると『ホルベへ』に成って視認性が著しく悪いんですもの。
『ホルベへくる』とかにしたらも〜う最悪です。来る、と漢字にして置いて良かったと本当に思います。
夕日も闇に沈み掛けて来たので、僕等は彼等の巣から離れて、ホルベへと遣って来た。
一応、彼等の大将にお礼を言って戻って来たのだ。……手には未だ血がべったりと付いて居るけど。
受付台には彼女が居て、僕等を見るなり安堵した表情へと変わる。
「あぁ! 良かった! 余りにも遅いから通報しようかと……!」
又台から落ちそうな程乗り上げて胸を撫で降ろして居る。
「んで! 如何だったんですか!? ギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇討伐は!!」
興味津々で僕等の顔を覗き込み、口を大きく開けて呵う。眼がきらきらと光って居る。
早口で捲し立てられたので少々尻込んで了った。ヷルトは其れを気にせず収納魔法から奴の頭を出した。
「……ほい、此れだ。」
「きゃっ!! ……うわあ……凄い……。」
一瞬、頭部だけの奴に驚いたものの、腰を屈めて其れをおどろおどろしくゆっくりと触れた。
其の後、ホルベの外に出て部位毎に見て貰い、値を付けて貰った。
今回は別に肉やら何やらは要ら無いので買い取って貰う事に為た。
そうしてホルベの中に戻っていく。麻袋を貰った。中には硬貨が入って居るみたいだった。
後で彼と折半為る予定だ。
「あの……ヹードの巣を調査為て来たので此れも受付出来ませんか……??」
僕はポケットに入れたメモ帳を取り出した。僕の主観も色々と混じって居るとは思うが、多分資料に成るだろう。
彼女は其れを取ってぺらぺらと捲り始めた。
「……えっと……此処からです?」
其処には割と乱雑に書かれて居る。箇条書きで近くのヹードの巣が如何云う生活を為て居るか、群れの大きさは如何か、とか書かれて居る。
……流石に彼等と一緒の物を食べた、とは書け無かったけど。
「おぉ?? ……おぉぉ……わぁぁ……管理長! 此れ結構詳細に書かれてますよ!
彼等が割りと文明的な生活を為て居る事には驚きますけど!!」
彼女が彼のゴツい肩ドンドンと叩いて目を合わせる。
「……いや……けどな、今から受注は流石に無理だ。
ギリギリ規約に引っ掛かるかも知れないしなぁ……。」
はぁ、と彼が溜め息を吐き、目を閉じて首を横に振った。
規約に引っ掛かる、と云うのは多分『依頼は受け付けてから為なければ成らない、依頼にサインを付けずにやっても依頼は受けられない』と云うのが規約として有るのだ。
……うん、やっぱり無理か。
「此れ、何時剥がす予定でしたか?」
「……えーっと……明後日。」
大将は右上を見て親指と人差し指を折って居る。
「じゃ! 大丈夫ですね!!」
「お、おいおい……。」
彼の制止も振り切って掲示板に貼って在る紙を剥がす。
ふとヷルトを見ると何やら苦い表情を為て彼等を見詰めて居た。
「ダイジョブですよ、バレなきゃ良いんですよ、バレなきゃ。」
彼女は左の口角を恐ろしい位に上げて、黒い笑みを浮かべて居る。
……おぉう、彼女此んな怖い顔を為るのか。意外だ。
「んじゃ! 此処にサインお願いします!」
僕は手袋を脱ぎ台の上に在る万年筆を取って其処にサインを為る。
「じゃあ……そしたら多分此れが調査為たの参考に成ると思うので、一旦お借りしますね。
此れを報告書に写して、明日にはお返しします。」
彼女は其れを右手に持ってにかっとはにかんだ。
「はい、有り難う御座います……!」
僕はお礼を言ってホルべを後に為る……。
……おっと、手袋を忘れて居た。血生臭い其れを着け僕等は帰路にへと着いて行った。
家に帰って、久々にお風呂を浴びて、すっきりと為た僕がタオルを首に掛けて居るとヷルトから話し掛けられた。
「……あのさ。」
彼が頬杖を突き、顔を下に向け、何かを考えて居る様に見えた。
「何?」
僕は彼と反対側に座り、後ろの毛をタオルで拭く。
顔を少し上げ、僕の目を何処か虚ろな眼で見て来た。
「ふと……思い出したんだけど……妻、さ。」
「うん。」
「本当に人間だったっけ、って。」
彼は顔を埋めて大きく溜め息を吐いた。首の辺りを不安気に触って居る。
「……如何云う事?」
僕は彼の言って居る意図がいまいち理解出来無かった。
魔物だった、とか、そもそも存在すら為無かった、と云う事なのだろうか。
「何か、何だろう。彼女、那あ見えても肉が結構好きでさ……。」
彼はぽつぽつと話し始める。虚ろな眼で不気味な骸骨みたいに引き攣った笑いを為て居る。
ヷールの朗らかな笑顔とは全く違う。
「ヹードの集落に行った時、俺、食っちゃったじゃん、生肉。
……妙に美味しかった。けど、不快感も凄かった。」
彼は唇を噛んで居る。
其うか、普通は不快感を感じるのか。……僕がおかしいだけか。
「彼女……殆ど焼いて無い様な生肉を時々食べる事が有って……。
彼女曰くかなり火が通って居るのは好きじゃ無いとか何とか。」
「昔はまぁ其う云うもんかなぁ、って思ってたけど……。」
「でも、今思うと……那れ、って……本当に其うだったの? って。
明らかにおかしいよなぁ、もしかして肉食獣人だったのかな……。
俺も……今は其うだし。変身魔法でも使って偽装為てたのかな……。」
其処迄言うと彼は顔を上げた。何処か疲れ切って居るみたいな表情を為て居た。
成る程、彼はもしかしたら妻が其うじゃ無いのかと疑って居るのか。
……けど、僕は其の話に何処か突っ掛かる部分が有った。
「……んー、けど……獣人って……余り魔法の事興味無いしなぁ。
特に、獣人国の人とか。変身魔法知ってる何て考え難いけどなぁ。」
僕は彼の目を見た。淡々と事実だけを述べる様に。
そう、獣人は意外と魔法の事に詳しくは無いのだ。
僕のお父さんが良い例だ。那の話だって、彼が意識して治癒魔法を使って居る様には思え無かった。
エカルパル国では、学園に入って或る程度は魔法の教養を教わるので、其処から興味を持つ獣人も少なくは無いが。
少なくとも、自然の状態では駄目だ。
「え、じゃあガルジェって珍しいのか?」
目を細めて僕の眼をしっかりと見て来る。
「うん、多分。僕を追っ掛けて、って感じだけどね。
まぁ……自発的っちゃあ、其うだね。」
「はー……じゃあ、やっぱり其う云うヅィー族の女性だったのかな。」
彼は顔を下げて細々と為た声で言った。
声のトーンが著しく下がって居る。
「多分ね。」
僕は頷いた。正直言って確証も無いけれど。
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