第百一話:生態調査
今回、人に依りましてはショッキングなシーンが含まれて居ます。
苦手な方はブラウザバックを御願いします。
十一月四日、三点リーダーを減らしたのと、重複して居る箇所を修正しました。
「あーあーあー、此れが俺等の『巣』だ。」
彼等は僕等の手を引っ張って森の深くへと連れて来た。
一体何だと思って居たら、只『巣』の中核へと連れてくれただけだった。……何だ。
乱暴な扱いを為るから一体何なのかと。
僕は其の『巣』とやらを眺めて居た。
『巣』は円錐状のテントみたいな簡素な造りの区画が掘られた地面に幾つも並び、何だか異様な光景を醸し出して居た。
あれ、幾らヹードとは云え、此処迄の知能は有ったっけ……?
確かに、彼等は魔物の中ではかなり賢い部類に入る。中には、人間を欺く様な事を為る。
だが、其れなら他の魔物や動物でも為無い訳では無いのだ。
けど、テントみたいな物を造ったので有れば、少なくとも手先を使う様な器用さが有る筈だ。
彼等は人間体にも成れるから、おかしくは無いだろうけど……。
其処で彼等に質問を為ると、皆一様に「大将に教わった」と言う。
……うーん、僕は頭を抱える。
僕はメモ帳を取り出した。先の尖った鉛筆みたいな茶色い石を取り出した。
此れはチェㇰル̈キ̏ノェって云う物だ。其れを使ってさっさとメモに纏めて行く。
彼等は僕が文字を書いて居るのを不思議そうにじっと見詰めて来る。
中には、其れを近くでくんくんと嗅いで来る奴も居る。
「……嗅ぐなら良いけど、邪魔為無いでね?」
すると嗅いで居たヹードが立ち上がり此方を見た。
「食うのは?」
「其れも駄目!」
もう、ホント、あぁ、駄目に決まって居るだろう!
彼は涎を滴らして其れを見て居る。……不味いぞ、絶対。
「っち……。」
彼は悔しそうに其れを見詰めて居た。
にしても、此れじゃあやっぱり如何しても文字が薄く成るな。
……しょうがないか。
「……ねぇ、何為てんの? 其のぐにゃぐにゃ為たのは何?」
彼女が筆記体で書かれたエカルパル文字を指して来て居る。
「ん? 文字。……此れはエカルパル語を表す為のエカルパル文字だね。」
「君達は……其の……エカルパル語を話して居るじゃない?
逆に僕が質問為るけど……君達は文字とか書いて無いの?」
普通、話し言葉から生まれてそして文字が生まれる。
しかし、今回は元々文字の有る言語なのだ。其れを知ら無いのは一体如何為てなのだろうか。
「……いや、初めて見た、此んなの。」
彼女は手を振る。其うなのか、確かに見た所彼等がペンや鉛筆等筆記用具を使って居る様子は無い。
もしかしたら彼等にとって言語は文字で書く必要が無いのかも知れない。
「大将に教わったもんね。此れ。」
隣に居たヹードが同調為る様に言った。
成る程、彼が教えたのか。
僕はメモ帳をズボンへと入れ込んだ。
其れを見てヹード達は移動を開始為る。
未だ何か見せてくれるみたいだ。
彼等は先導しテントをくるっと周る。如何やら殆ど円に沿って配置為れて居るみたいで、中央には塊でテントが配置為れて居る。
僕は其の塊を指して訊いてみる事に為た。
「ねぇ、此れ何?」
「……んー、あー、子育て為る為の奴。」
淡々と其う言われるものの、一瞬何を言われて居るか分から無かった。
其う云えばヹードって今繁殖期じゃ無いか。
あぁ、だから何も声が為無かったのか。
僕は歩きつつ筆を進めて行く。
彼等はテントから抜けた。其処には簡易的な台所みたいな物が有った。其の隣には使った後の様な薪が在った。
木で造られた机に、其処に調理器具が並んで居る。其れも、結構しっかりと為た物だ。
「此処は調理場……と言っても大将の息子位しか使って無いけど。」
先頭に居たヹードが微妙な表情を為て言う。
多分、ファルダの事だろうな。……那奴、料理好きだったのか。
そりゃあ上手い訳だ。
「此の調理器具とかって如何為たの?」
何故此の質問を為たかと言うと彼等に金属加工何か出来る力が有るとは思え無いからだ。
「あぁ、其処の村の家から持って来た。」
空中の方向を指して清々しい程にあっさりと言った。
成る程、うんうん……。
……要は盗んだって事だよね?
と言いたかったけれどもファルダを見るに多分通じ無いんだろうな、と思い喉に了い込んだ。
僕は書き終えたのを見てか彼等は足を進めた。
流石に三回目とも成ると慣れて来たみたいだ。
次に案内為れたのは洞窟みたいな場所だった。
彼等が言うには『ギシキ』を為る場所らしい。
内容は教えて貰え無かった。何だか血生臭い匂いが為るけれども何に使うのだろうか。
そしてさっき大将とやらが居た場所に着いた。
「此処は大将の場所だ、此の群れの長だからな、やっぱり豪華じゃないと。」
さっきの座って居た丸太の上には先端が曲がった地面に突き刺された枝に鳥の骸骨みたいな物がぶら下がって居る。
其のこめかみの辺りに羽か何かが刺さって居る様で、何だか不気味な雰囲気を醸し出して居た。
……僕の目には豪華には見え無いのだけれど。
此の丸太の有る場所は少し盛り上がって居る様で、此処に座るとさっきのテントの有る場所が見えた。
其処から少し下った所……さっきのテントの有る場所に近付くのだが、其処には一番大きいテントが有った。
成る程なぁ、何となく生態と言うか暮らし振りが分かる様だった。
僕等はテントの在る方へと戻った。
僕は端っこの方へ座り込んでメモ帳に書いて居る。
……えっと、後はまとめ……。
『彼等は一般的な魔物と同じ様な階級を持って居るものの、布を加工為たり木を加工為たり為る力が有るみたいだ。
しかし、未だヹード其等が同じ様な、文明的な生活を為て居るとは考え難く、其の理由と為て此の巣の大将が上げられる。
彼等の発言から此の知識は大将が教えた物と推察出来る。故に、先ずは何故大将が其の様な知識を持って居たのか知る必要が有る。』
……此んな物で良いかな。僕はメモ帳をポケットに了った。
さっき此の巣を観察為て居たヷルトが此方に遣って来る。
「……なぁ、何だか異質だよな。此の巣……。」
僕の隣に座るとひそひそ声で話し掛けて来た。
「うん…………何か人為的な物が介入為た様な気が為るよね……。」
僕もひそひそ声で話し返す。明らかに異常な事が発生為て居るのだもの、疑わ無い方がおかしく無い。
「そしたら、大将が怪しいよな。」
「だね……。」
「……転生者とか?」
ヷルトが口角を上げはは、と笑った。
「いや其んなまさか……。」
僕は右上を見てはにかむ。冗談っぽく彼に返した。
でも、正直其の様な気が為て成ら無い。そう疑って了う。証拠何か無いのに。
「おーい!!」
彼等に呼ばれた。僕はゆっくりと立ち上がり土を払った。
呼ばれた方向へと行くと六つ脚の彼等が獲物を獲って来たみたいだ。
何匹かがマン゜ギアを口に咥えて居るのが見えた。
僕は空を見上げた。
……そろそろ夕日が沈む頃か。彼等は此の位に夕食を始めるみたいだ。
彼等が食事為る光景何て貴重に決まって居る。是非有難く見せて貰おう……。
と其んな事を考えて居ると目の前にぼん、と其れが落とされる。
「え、えっと……。」
僕は困惑し、其れを指して目の前のヹードに言うと、彼は人型の姿に成って其れを持ち上げる。
「……食え、って事だ。」
何と言う事だ、彼等の食事を見れるだけで無く、彼等と同じ所で同じ物を食べられるとは。
彼等は中央に有る其れから持って来て獣が儘に貪り食べて居る。
口に毛が付いても血が付いてもお構い無しみたいだ。
「ん、ありがと。」
僕は感謝を言うと彼は六つ脚の姿に戻り中央から肉を取って来て居た。
視線を向けるとヷルトにも其れが配られて居た。
ヷルトが困惑為て其れを見て居る。
よくよく見ると、歯型ががっしりと残されて居た。
僕は刃物を取り出して皮に傷を入れると、皮と肉の間に手を入れて剥がして行った。
ヷルトの方を向き、ナイフを投げ渡す。
あわあわと為た様子で其れを取ると訝しげに肉を眺め、僕が遣ったみたいに傷を付け、指を入れて剥がして行く。
僕は其れを両手で持ち、ヷルトに目線を合わせる。
「「日々の糧に感謝して、そして生き物に感謝し、神様がくれた食べ物を頂きます。」」
僕はマン゜ギアの腹に鋭い犬歯を入れ其の儘噛み千切って食す。
生の柔らかく甘味の有る味が為る。けれど、何処か野性的だ。かなり臭みがキツい。
そして血の味が為る。新鮮で鉄っぽい味だ。何だか健康に成りそうな気が為る。
別に僕は生肉を食べるのも嫌いでは無い。……余り食べ無い、そして衛生的に少し怖いってだけで。
ヷルトを見ると、嫌々ながらも其れを食べて居た。顔を顰めて困惑の表情を浮かべて居る。
僕は其れを気にせず又齧り付く。本当に、命を食べて居るんだと云う実感が沸く。
きっと元気で生きて居ただろう其れが、彼等なりに懸命に生きただろう其れが、今僕の口へと運ばれて……。
魂を諸に食って居るのだ。活力が漲って来る。僕の血と為り肉と為るのだ。
味覚が変わったのだろうか、やっぱり、何処迄行っても結局は獣だからなのだろうか。
かなり美味しいと感じて了う。
胸のあたりは柔らかく、羽の辺りは皮がぷにぷにと為て居て、そして脚の辺りはこりこりと為て美味しい。
目玉にも齧り付いて居ると何時の間にか肉は無く成って居た。
僕は口に付いた血を取って汚らしくも指を舐めた。
「ヷルトー、食べたー?」
僕は骨を地面に置き、彼に尋ねた。
「……ちょっと待って……んん……無理だ。」
彼は脚の方の肉を如何にか為て食べたいみたいだった。
けれど、或る程度遣った所できっぱりと諦めて了った。
「「今日も神様のくれた食材で生きる事が出来ました。有り難う御座います。」」
「ねぇ、此の骨如何したら良い?」
僕は未だ嬉しそうに食べて居るヹード達に話し掛ける。
「……あぁ、真ん中に置いてくれたら良い。」
後ろから話し掛けられた。少しびくっとして背後を向くと、大将が立って居た。
僕は其の指示に従い、真ん中に其の骨をぽんと置いた。
……しかし、此れは帰ってからしっかり手を洗わないとなぁ何て事を考えて居ると、又何か言われた。
「……しっかし、良く食べたな。」
何だか其の眼は僕を嫌悪為る様に細めて居た。
明らかに引いて居るみたいな感じだ。
一体、如何為てなのだろう。僕には理由がさっぱり分から無かった。
リングさんは食えるからと言って生肉をバリバリと貪る様な奴です。
私自身虫食等に嫌悪感は湧かないタイプでは有るのですが、だからと言って生肉を直で食べるのは如何な物かと思います。




