第九十七話:ギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇討伐に赴く獣人達
久々の長タイトル。
「……マズい。」
「何だ?」
僕は帰って早々、有る事に悩まされて居た。
新聞の朝刊を紅茶片手に飲みながらヷルトは此方を見て来る。
「……お金が……お金が無い!!!!」
そう、お金が無いのだ。お金が。財布の中にも何処にも無いのだ。
……一応、貯金は有るし、此れから研究をしる際には国からお金が貰えるが、でも日常生活を送るしのお金が無い。
「あぁ。」
ヷルトは顔色一つ変えずに其う言った。
「どーしよ……。」
思わず机に頬杖を突いて考え込んで了う。
「一緒にホルベに行くか?」
彼は新聞を片付けた。
「……そうだね。」
僕は頬杖を止めて頷いた。現状、其れが一番てっとり早くお金を稼げる方法だ。
ヷルトも居るし、きっと大丈夫だろう。
軽装を身に纏う。胸に入った金属板がかちゃかちゃと鳴る。
ブーツを履いて剣を出した。
劣化は……為て居無い様だった。うん、十分戦えるな。此れなら。
「準備出来たか?」
「うん。大丈夫。」
僕は小指を突き出して了解のサインを出した。
ヷルトは其れを見ると頷く。僕等はもう一回装備を確かめるとホルベへと向かった。
* * *
「あ! お久しぶりです!!」
受付嬢が屈託の無い笑顔をピカピカと輝かせて居る。
「お早う御座います。」
「あぁ、久しぶり。」
僕等も各々軽く挨拶を為た。
「最近ですね! ランヷーズが一人増えたんですよ!!」
受付台から乗り上げ興奮為た様子で其う言う。
言わずもがな、彼女はあわあわとしバランスを崩しそうに成る。
何とか直立姿勢へと戻った彼女は、へへ、と笑って行しを恥じて居るみたいだ。
其れを隠すみたいに掲示板を指して話し始めた。
「……あー……えと……今日はギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇って魔物の討伐と、ヹードの棲家の偵察と、魔力災害の痕跡の調査と、後は普通に薬草採取とか其んな感じです。」
如何やら、今回の目玉依頼は其の三つみたいだった。
……何れにしようか。成るべく簡単で、てっとり早くて、報酬も高い依頼が良いのだけれど。
けど、其んな依頼無いよなぁ。
僕は値段を何とは無しに見た。
ギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇討伐は一万ベリル、ヹード偵察は八千ベリル、魔力災害痕跡調査は七千ベリルと、此の中ではギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇討伐が一番値が高い。
けれど、ギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇かあ。僕が苦手としる魔物だ。森の池や湖等水に有る所に住んで居る魔物で、そこそこ強いと謂われて居る。
僕位の冒険者は倒せる筈なのだけれど、鱗が硬く如何しても長期戦を強いられる。
短期戦を得意と為る僕は正直向いて居無い。
「……ね、如何する?」
僕はヷルトの方を向いてみた。彼は腕を組んで考え込んで居る。
「んー……ギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇討伐行くか。」
内心、嘘だろと思って了った。依りに依って其れかぁ……。
とは云え、一番此れが報酬が高いのは分かり切って居る。
剣では無くて、弓だったら行けるかも知れない。飽く迄援護として。
持って居たっけか……僕は収納魔法をごそごそと探し始めた。
久々に扱うから忘れて無いと良いのだけれど。とか思いながら。
「……何為てるんだ?」
ヷルトが横から覗き込む様に見て来る。
「弓。僕コイツ存外苦手だから近接は無理かなぁって。」
するとヷルトは自身の其れから何かを探し始め、双剣を僕に押し付ける様に握らせて来た。
「え?」
「いや、受け取れって。」
と云うか此んなの、一体何時買って来たのだろうか。
其れとも家に残って居たのだろうか。
「たまには別の武器使うのも良いだろ?」
「いや……けど……。」
「おーい、受付嬢さん、其れ受注為る。」
ヷルトは僕の話も聞かずに其の討伐依頼の頼む。
「は〜〜い!! 分かりました〜〜!!」
彼女は掲示板に有る紙をぺりぺりと剥がした。
ヷルトは其れにささっとサインを為た。
ちょ、ちょっと、ちょっと待て、流石に心の準備何て出来て無いぞ。
増してや、今日初めて使う武器で苦手な魔物を倒すなんて本当かよ、おい。
其の後彼女の説明を一通り聞いたものの不安で堪ら無かった。
「ほら、行くぞ。」
僕の手を取って半ば強引に引き寄せた。
あの、後、せめて……素振り位はさせて……。
と言う暇も無く引き摺られる様に連れて行かれるのだった。
「えーっと、此処で良いんだっけ? なぁリング。」
僕等は湖の側へと遣って来た。辺り一体は木々が鬱蒼と為て居る。
其んな中に一つぽつんと、刳り抜かれたみたいに大きな湖が有るもんだから何だか神秘的に感じる。
「あ、うん……目撃情報が有ったのは此処らしいね。」
「なら……。」
彼の背後には大きな炎が見える。
パチパチパチ、と大きな音が察こえた。
何か大きな魔法でも放とうと為て居るみたいだ。
「ヒューテ̣ㇺメㇻ̈・ヰ̇!!」
バチバチバチ、と云う大きな音と共に稲妻が湖へと突き刺さる。
……けれど、湖からは全く反応が無い。
僕等は湖の周りをうろうろと為る事に為た。
「……てか、此れ重くない? 何か……。」
辺りを見回してみた時に素振りがてらくるくると回してみたのだけれど、何だか此の武器、かなり重い。
総重量はメインで使って居る大剣依り重いんじゃないかと思う。
「まぁ、其うだろうな。」
彼は其れだけ言って後は何の説明も無かった。
一体何なんだろうか、此の武器。
或る程度見回した僕等だったけれども、例の魔物の所在は分からぬ儘だ。
「うーん……もしかたら巣が違うのか、今は居ないのかも知れないな。」
ヷルトが半ば諦めた様に其う言った其の時、後ろからドダドダと足音が聞こえた。
其れは此方へと迫って来て居る。
「ねぇ。」
「……あぁ。」
如何やらヷルトにも聞こえて居たみたいだ。
僕等は成るべく足音を立て無い様にやや距離を取って隠れた。
「ブイグガアアアアアア!!!!」
かなり大きい咆哮が聞こえた。草からひょっこりと顔だけ出して湖の方を眺める。
……出た、ギュㇻ̇ナㇷ゛レ̈ェ̇だ。全身が薄い青で龍みたいに長い首と其れに不釣り合いな四つの脚、足には水かさが付いて居ると云う。
奴は何処か不満そうに湖の中をジャボジャボと泳いで居る。
もしかしたら、自分の住処を荒らされて無いか確認するしかも知れない。
ヷルトが小指を突き出してサインを出す。
如何やら、行け、と云う事らしい。マジか、と思った。
僕は何回か彼を見たけれどもずっと小指を突き出した儘に為て居る。僕は覚悟を決めた。
ゆっくりゆっくり、足音一つ立て無い様に奴に近付いて行く。
すると、後ろからパチパチと為た音が察こえた。
……あぁ、分かった。大丈夫みたいだ。
僕はバレる事何か気にせずに走り出した。
奴は僕に気付き咆哮を放って来る。そして大きい巨体をするすると動かし僕に向かって来た。どんどん奴が迫って来る。正直、少し怖いのだ。
僕は奴の首を狙って姿勢を低くした。
そして飛び上がって首を狙って剣を振るった。
「ヒューテ̣ㇺメㇻ̈・ヰ̇!!」
後ろから声が聞こえた。すると奴の頭が稲妻が走った。奴は痺れて居るのか一時期に動きを止めた。
僕は其の一瞬の隙を逃さ無かった。
何方の方向で斬ろうかと手首を動かして居ると双剣は歯車の唸り声を上げた。
カチャカチャカチャ、と高い音が鳴り、そして──
其の剣は奴の首を貫いた。
刀身が長くなり血を噴き出させながら反対方向へと貫いたのだ。
……成る程、ヷルトが半ば無理矢理に此れを押し付けて来たのは此う云う意味が有ったのか。奇襲が得意と言える僕にとってかなり合う武器だ。
奴は其の儘倒れた。湖が紫色へと変色為る。
やったのか? と思い近付くと、腹の辺りへ手が入って来た。
ヷルトの手みたいだった。バシャン、と大きな音が為た
僕は少し嗚咽を上げ塊に為りゴロゴロと転がって行く。
何が起こったのかと辺りを見回すと奴が首を地面へと突き刺して居た。
……危なかった。ヷルトが居無かったらやられて居た。
「……如何やら一筋縄では行かなそうだな。」
ヷルトの声が後ろから聞こえた。僕は地面に手を突いて立ち上がった。
此処からが本番の様だ。僕は双剣をぎゅっと握り締めた。
獣人国へ行くと言ったな、あれは嘘だ。
……と云うのは冗談で御座いまして、先ずはワンクッション置いてから行きます。
村の様子も書かねば成らないので。
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モチベに成りますので、宜しければ。




