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第九十四話:乱痴気騒ぎ※

どうも、今回から、遣る(やる)、為る(する)、の漢字を解禁して了いました。

此れは流石に読み辛いかなぁと躊躇って居たのですが、やっぱり為無いとか遣ら無いとかは平仮名だと気持ち悪いなぁと思いましたのでバランスを考えて解禁しました。


十一月五日、モブの台詞を修正しました。

「……おい、着いたぞ。」

 ヷルトに其う言われて僕はぼうっとして居た思考を鮮明に()る。

 やっとか、長かった様な、短かった様な。


「うわあ、門途んでも無い事に成ってるね。」

 辛うじて罅割れて居た、と言えて居た其れは僕等がほんの二ヶ月程度離れて居ただけで崩壊()始めて居た。

 門の上部がぼろぼろと崩れ始めて了って居る。

 那の時本当に触ら無くて良かったと心の底から思った。


「……だな。一体此んな事にした野郎は何処の何奴なんだろうな。」

 彼は少し苛立った様に腐れ事を言い放つ。

 やはり昔から此の村に住んで居たからだろう。愛着が有るが故に許せ無いのだと思う。


「此れが崩れてると何かマズい事でもあんのか?」

 僕は後ろを向いた。ファルダが不思議そうな顔をして居た。

 彼は門の存在意義や、何故崩れると行けないのか分かって無い様だった。


「此れは村の入り口で有るからね。

 此処がボロボロに崩れてると来た人が余り良い印象は受け無いのよ。」


「其れと魔物が大量発生した時とかには此処を閉めるからね。

 村の人を守るには結構必要な設備何だよ?」

 粗方、僕が知って居る門の知識を話した。

 他には景観とか見栄えとか云う物も有るとは思うのだけれども、多分言っても分から無いだろうから今回は省く事に為た。


「ふーん……。」

 彼は其の言葉しか発して居なかったけれども、其の顔には何処か納得する様な表情を為て居た。

 良かった。今回は分かってくれたみたいだ。


「……ん?」

 ゆっくりと門を潜った彼が目の前で止まった。

 何か不測の事態でも有ったのだろうか?


「リング、ちょっと那れ見ろ。」

 此方を向くと広場の方を指して其う言う。

 彼が離れたのと入れ違いに僕が門を覗くと、広場に何か人が屯ろして居たのが見えた。

 あぁ、きっとどうせ面倒な事が起きるなぁと嘆息を吐いた時、広場に居る人達が一斉に此方を見て来た。


 何やら波紋みたいにざわざわする声が聞こえて来る。

 ……一体、何だろう?


 耳を傾けてよく聞いて見ると、帰って来た、とか、戻って来た、とか其の様な声がよく聞こえる様な気が為た。

 あぁ、きっと『悪魔が戻って来た』って意味何だろうなと面倒に思って居ると、集団から逸れた一人の人間が近付いて来る。


「あぁ、来た来た!!」

 其の女性は僕に近付いて手を取るなり、勢いよく走り出した。

 危うくずっこける所だった。……何だ? 一体如何為た?


 僕を集団の中へ引き込んだ。集団は円に為って居て皆が此方を見て居る。

 多分上方から見たらドーナツかバウムクーヘンみたいに見えるだろう。


 沢山の人と目が合った。何が始まるのだろうと思った。

 心臓が戦場に居る時位バクバクと為る。変に緊張為て来た。

 

 ……取り敢えず、魔法の準備だけは為て置こう。

 何か、此の儘リンチにでもされるんじゃないかと身構えた。


「「「「「おめでとう!!!」」」」」

「は?」

 何だって? おめでとう? 別に、誕生日でも無いし、

 そもそも、お前等と其処迄関わった事も無いのだが。


 眉を顰めた。困惑を隠せ無かった。

 ヒューヒューと口笛を吹く音も聞こえた。


「だって! お前学会員に成ったんだろ?」

 盛り上がって居る集団の中からとある男性が其う言って来る。


「え、まぁ……はい。」

 僕は頷いた。其れは事実だけれども。


「やったわ! まさか此の村から学会員が出る何て!!」

 ……何故か自分の手柄みたいにして居るけれども、殆どは其の後ろに居るファルダのお陰だからな?

 其れと僕が論文を纏めて発表したから、だからな?


 何故か僕に抱き付いて来る人も居る。

 そして全身をわしゃわしゃと触って来る。

 尻尾がぶち折れて了いそうだから全身を密着させるのは止めてくれ。


「あがっ!?」

 急にお酒を掛けられた。口に含んで了った。口に苦い発泡酒みたいな味が広がる。勿論。美味しくは無い。

 うわぁ、普通は喜ぶ所なのだけれど全く嬉しく無いな。はぁ。


 人間だったら服を脱いで体を洗えば済む話なのだけれども、獣人は其うでは無い。

 何故なら、殆ど毛皮を着て居るからだ。毛皮がお酒でべどべどに為ったら如何する……。


「……悪魔さん。」

 あ、例の、事を誤認して居るお母さんだ。


「凄いですね……! 一体、何んな論文を発表したんですか?」

 彼女は純粋に、僕の事を羨望する様な様な眼で見て来る。

 彼女に褒められると少し嬉しかった。寧ろ何か気持ちの悪さを感じ無かったのは彼女だけだ。


「「「「「今夜は祭りだ!!!!」」」」」

「……取り敢えず、あの、一旦お風呂入って良いですか……???」


「何だよつれねーなぁ!」

 男性が僕の肩を叩いて来た。

 其うでは無くてな。種族的な問題何だ。

 ……あぁ、もう。


* * *


 取り敢えずヷルトに手伝って貰ってお風呂に入った。

 彼はうんともすんとも言わず遣ってくれた。有難う、と心の底から感謝を言った。

 本当に、クールな男性だ。

 

 其の後は教会に呼ばれた。教会を貸し切ってお祭り騒ぎを為るみたいだ。

 布か何かで彩られた教会内はムードを醸し出して居るみたいだった。


 ……結局は、酒を飲みたいだけ何じゃないか? と訝しんで了う。

 別に嫌いでは無いけれども。


 只、其れだけだったら良いのだけれども、今回は状況が状況だ。

 何だか腑に落ち無い。


 良いか、ジョッキに並々と継がれたエールが運ばれて来たから今日は此れを呑んで馬鹿に為ろうじゃあないか。


 ……と云うのは建前で、本当はお酒を交わして村の人々が本当は如何思ってるか訊きたいだけだ。

 お酒は本音が出る。


 別に嫌って居るなら嫌って居るで良い。けれど、此処迄掌をくるくると引っ繰り返して()った事を水に流そうだ何て、虫が良過ぎるとは思わ無いのか。

 其うは問屋が降ろさんぞと。


 先ずは当たり障りの無い質問から為て行こうじゃないか。


「……此の村って、魔導師が居無いんですか?」

 僕は嫌味に成ら無い様な笑みを浮かべて目の前に居る彼等に話し掛ける。

 ……本当は、牙をぐわっと出して威嚇為て了いたい位(はらわた)が煮え繰り返って居るのだが。


「うん、あー、其うだなぁ。」

 目の前に居る彼はトロンとした目で言った、相当お酒が入って居る様だ。

 成る程、と云う事は本当に此の村から魔導師が生まれて無いのか。


 確かに、もし此の村から生まれたと成ったら喜ばしい事だ。


 僕の背後から何かが差し出されて来た。こんがりと茶色に焦げた生地に覆われて、中央からはこんもりと魚の形がこんもりと出て来ていた。

 此う云うのはミートパイならぬフィッシュパイ、とでも言えば良いのだろうか。


「紅目って……如何思います?」

 きっと悪魔と言われた根源は此れ何じゃ無いかと思い言ってみた。

 彼等は息を呑んだ。……やっぱり? 黒毛で紅目だから嫌われて居るんじゃないか、と云う僕の予想は有ってたのか。


「……ふふ、冗談ですよ、冗談。」

 僕は此れ以上無い位の笑顔を作って其う言った。

 ……其んな訳有るか。


「今回、此れって村の人達が全員参加して居るんですか?」

 箸休めとして、此の質問でも為てみよう。

 何だか、何時も依り少ない気が為たのだ。


「……あー、全員は……為て無かったよな? なぁモルス?」

 隣に居る男性が其の隣の男性に対し尋ねる。


「明日は納税の日だから何人……何十人だっけ? 何か遣ってるよ。」

 ……嘘だろ、其んな大事な日に此んな事やって居るのか。

 確かに此れは喜ばしい事だ、と云うの良く分かる。けれどな。

 もし納め忘れ──とか其う云う事が有ったら責任を押し付けるのか?


 其うなら、彼等が余りにも居た堪れないだろう……。


 なんだか、ブラック企業に有りがちな、部下に総ての物事を押し付ける上司みたいで見て居て気分は良く無い。

 僕は農民では無いから今日では無い。関係の無い話だが。

 ……彼等が何処に居るのか、訊いて置こうかな。


「……何処に居るんですか? 彼等。」


「いやいやいや、別にお前が訊く事じゃ無いよ〜〜。」


「彼等なら確かギュルゲ家に集まって作業してるよ。」

 さっきの尋ねられた男が呟く様に其う言った。


「おい!」

 隣に居た男が彼の肩を小突く。村人が彼を睨む様に目線を向ける。

 ……何で言っちゃ行け無いのだろうか。彼等にとって不都合な事が有るのだろうか。


 其んな感じで表面上は楽しげなパーティーが開かれて行く。


「何でリングを嫌って居たんだ。」

 唐突に、ヷルトがジョッキを置いた。酔って居るのだろうか。

 表情は変わら無い様に見えるが、声に抑揚が無く、何だか目の色が真紅に輝いて居る様に見えた。


「リング、って……?」

 酒に酔って居るのかきょとんした顔で鸚鵡返しの様に訊く。


「コイツだ。」

 僕の肩を自身に寄せて彼等に見せ付ける様に言った。


「あーあー。」

 此の話を聞いて居ただろう数人の村人が波の様に同時に頷く。


「いや、ほら、最初は……何か、悪魔、とでも思って居たんけど……。」


「でも! さ! 此うやってね、魔導師に成ったんだし、此の村のお陰だよね。」


「でも、何か其処迄酷い事為無くても良かったんじゃないか?」

 ヷルトが立て続けに彼等に尋ねる。


「いや、けど! 俺等も此れからは仲良くするから、さ!

 忘れてくれよ、な?」


「そうそう、良いじゃん、過去は過去、今は今じゃん。」

 村の人達が僕を諫める様に其う言って来る。

 ……ふざけるのも大概に為て欲しい。此処の住民は人を苛つかせるのが大層得意な様だ。

 僕の耳が立って居て、毛が逆立って居て、おまけに尻尾が左に揺れて居る事すら分から無いのだろうな。


 身の保身しか出来無いのか此奴等は。


 ヷルトが溜め息を吐いた。ぼそぼそと声を弱めて話し掛けてみる。

 

「……如何したの?」


「此んな腐った奴等だったっけかな……って。」

 完全に落胆為て居る。一寸の希望すら消え失せた様に見える。

 ざわざわとし、盛り上がって居る彼等に反比例為る様に、彼の落ち込み具合は異常だった。


もしかして今回、読む人に依っては一番胸糞悪い話なのでは。

自分で言うのもおかしな話ですが、何だか現実に有りそうですもの。


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モチベに成りますので、宜しければ。

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