第九十三話:帰宅※
十一月四日、文が抜けて居たので修正しました。
僕等は馬車に乗って居る。
けれど、那のぐわんぐわんとした感じが無い。
馬車の走者が言うには、新型の馬車なのだか。詳しくは教えてくれなかったが。
サスペンションとか其う云う物を取り付けたのだろうか。
「……あのさ。」
「何だ?」
僕は気に成って隣に居る彼に話し掛けた。
「……ファルダ、君此れ乗る必要有るの?」
「別に良いじゃねぇか。」
「転移魔法ばんばん使えるんでしょ?」
「おう。」
「しかも一回其れでに村に帰ったんでしょ?」
「おう。」
「……乗る必要、有る?」
「無いな。」
僕は詰め寄ると彼は腕を組んできっぱりと言った。
「おい。」
ねぇのかよ! と心の中で迫真のツッコミをした。
其うだとは薄々思って居たけれども。
「別に良いじゃんかよ。」
まるで我儘を言う子供みたいに僕の方を見やる。
「君の分のお金も掛かってるんだよ?」
「んな俺が知るかよ。」
彼は無責任に言い捨てる。
魔物だと云う事を良い事に。此の野郎。
「おっと、お客さん、クロベン村に来ましたよ。
今夜はもう遅いので此処で一泊泊まりましょう。」
走者は濃緑の綺麗な瞳で此方を見て言った。
「え、あぁ、其う何ですか? 分かりました……。」
急に言われたものだから、僕はへこへことし作り笑いをした。
「おーいヴァルトー、降りるってよー……。」
僕は彼の肩をちょっと大袈裟に揺らす。
さっきから何かぼそぼそと寝言を言って居る。
「……ん、あぁ。分かった。」
窓に腰掛けて居た彼はゆっくりを瞼を開き、ごしごしと眼を擦る。
耐えきれ無く成ったのかふわあと欠伸をした。
彼が欠伸をしたのを見てか、ファルダは共鳴する様に欠伸をした。
しかも、彼の方が長かった。此の現象、何て云うのだろうか。
「あぁ、リング! 聞いたよぉ!
魔導学会の会員になったってさー!」
村に着くなりブルラが僕の両肩を大きく揺すって来る。
気持ち悪く成りそうだから止めて欲しい。
「え……其の話……何処で聞いたんです?」
僕は驚いた。いや、何方かと言うとやや困って居たと思う。
「さあ? けど此んな村に迄来てんぐれぇじゃんよ、国中大騒ぎだと思うよ?」
のほほんとした様子で其んな事を言う。
嘘だろ。僕は其んな名声何て要ら無いぞ……多分、今後の活動の支えに成るだろうし。
自由にやって行きたいのだ。僕を褒め称えてくれる人何ぞ身内だけで良い。
……とは言え、きっと有名に成る事で得られる物も有るのだろう。
けれど僕の天秤に計った時其れと付き纏ってくる物事の大きさが不釣り合いなのだ。
あぁ、其れとアㇻ̇バㇺ村の人は何う思うだろう。
悪い方向にしか捉えない人達だ。多分難癖付けて来るのは安易に想像出来る。
しょうがない、善い事も悪い事も総て受け入れよう……。
何て考えて居ると、ブルラは不思議そうに僕を見詰めて来た。
「……え、やなの? 有名に成んこと……。」
「やだって云いますか……うーん、善い事に対して悪い事の方が多過ぎるな、って。」
僕は呆れ果てた様に其んな事を言った。彼はへーっと言うと、余程おかしいのか、其れ共理解出来無いのかヒステリックに笑い出した。
「いやぁ、ごめんごめん、へへ……其んな人居るんだ……って。」
彼の目はやや震えて居て声は強張って居る。其の様子は何だか不気味だ。ホラー映画に居てもおかしくは無い。
「普通、名誉とか名声とか……欲しい物だと。
だって其うでしょ? 皆から褒められんだもん。
気持ち良く成りたいでしょ?」
何だか、彼の歪んだ部分が見え隠れする様な発言だった。
其うだろうか? 確かに褒められるのは嬉しいが、余りにも褒め千切られると逆に恐ろしく成って来る。
言語化するのは難しいが、謂れも無い気持ち悪さが込み上げて来るのだ。
「……無欲何だね?」
彼は普通の笑顔に戻って其んな事を言った。
如何やら勘違いをして居る様だ。其んな聖人みたいな人でも無い。
「いえ、欲は有ります。と云うか、煩悩だらけです。
那れ欲しいとか那れしたいとか。」
軽く数えただけでも、きっと百八個以上は有るに違いない。
中々に貪欲な人間だと自分でも其う思う。七つの大罪をぎりぎり犯すか犯さ無いか位の。
けれど、貪欲なのも差して悪く無いかも知れない。
「ふ〜〜〜ん……?」
彼は頭を掻いた。全くと言って良い程理解出来て無い様だった。
逆に言えば、彼は其処迄名誉とか世間体を気にする人なのだろうか。
自分が言えた事では無いが其れに執着しても良い事は無いぞ。前世の自分みたいに成るぞ。
けれど、其の言葉は胸の奥にひっそりと沈ませて置く事にした。
「……ま、いーや……取り敢えず、又泊まる感じ?」
「其うですね……其う、成りますかね。」
* * *
「リングリング!! あんた凄いじゃないの!!」
ユードグリフが宿泊する民家の扉を壊れそうな勢いでがっと開けて、僕の顔を見るなり嬉しそうな顔をする。
「あ、ユードグリフさん。」
「此れで、もっと獣人達の待遇が良く成って行けば良いわね。
まぁあんたに背負わせる事じゃ無いけれどね……。」
彼女は僕と対面に座り、はぁと溜め息を吐いた。
「……未だ其んな悪いんですか?」
僕は不思議に思って質問してみた。
昔依り、良く為ったと聞いたのだけれど実際は其うでは無いのだろうか。
「うーん、昔依りかは仕事も有るし、確かに良く成っては居るのだけれども……。
如何せん、肉体労働とかしか無いのよ。其れも、ホルベみたいなの。」
「まぁ、けれど分から無いでも無いのよね。其う云う仕事来る理由は。
私達の方が明らかに力も強いしね。」
「其れは其うですね……。」
「けれど、其うじゃ無い獣人だって居るの。皆が皆生まれ付き強い訳じゃ無いわ。
其んな子が頑張って勉強して企業に就こうとしても獣人ってだけで落ちるのが常よ。」
「あぁ……。」
何だろうか、前世の黒人、移民差別何かを彷彿とさせる。
今回は其れなりに理由が有るからまぁまぁ分かるけれども、でも何処か腑に落ち無い。
けれど、僕は人間だ……其んな事出来っこ無い、と何時もの卑屈な考えに陥ったけれども、父親の顔が僕の脳裏に過った。
……其うか、少なくとも体は獣人何だ、じゃあ、僕が率先してやっても良いのかも知れないな。
やれるか如何かは分から無いけれども、少しづづ改善して行けば良いな。
きっと莫大な時間が掛かるだろうから僕は着火剤にでも為ろう。
「……何とかしてみます。」
僕の口から此んな言葉が出る何て僕も予想して無かった。全く、途んだ馬鹿野郎だ。
彼女は僕の其の言葉を聞くと目を見開き、僕の肩をがっと掴んで来た。
「ほんとぉ!?」
「……いや、あの、確証は無いので……出来る限り、と云う事になっちゃいますが……。」
牙をぐわっと出してるもとか其んな事依りも、彼女の爪がやや喰い込んで痛い。
僕は言い出す事も出来ずに耐えて了った。
「うん!! お願い!!」
其んなに笑顔で言われると僕は断る事が出来無い。
其んな此んなで僕は彼女と口約束を交わして了ったのだった。
「……ところで、他の皆は何処なの?」
鼻をすんすんとさせて他の人達を探して居る様だ。
「あぁ、多分寝てますよ。疲れてますしね。
今回馬車を引いてくれたナルムさんは隣に居ます。」
「へー、何であんたは起きてんの?」
「此れです、見えます?」
僕は日記帳みたいなのを指した。
彼女は前から覗き込んで来る。
「今後の計画表です。今後如何云う研究を進めて行くか……って感じの物です。」
「てかあんた敬語使うのね?
共闘した時はタメ口だったのに。」
何やら不服そうな表情だ。
「……那の時は危機的状況だったからですよ……身内でも無い限り普通は敬語を使います。」
はぁと溜め息を吐いた。
逆に那の状況で敬語を使えと云う方が難しいのでは無いか?
忠告するのに長ったらしい敬語を使ってたら如何しようも無い。
……けれど、其れとは別に、何だか戦って居る内に何かのリミッターが外れて行く様な感覚を味わうのだ。
ホンノウとか云う奴なのだろうか。
「ふーん……。」
「じゃあ、タメ口で話してくれない?」
何を言い出すかと思ったら、僕の鼻を押さえて其んな事を言って来た。
彼女は僕を茶化したいのだろうか。
「え、いや……。」
「じゃあ噛むわよ。」
其の鋭い牙を出して威嚇する様に言って来た。
「え、あ! はい!? いやうん!?」
僕は変にどぎまぎして了う。
那んな途轍も無く鋭い牙で噛まれたら一溜まりも無い。
「……んで、何んな研究をするの?」
「んー、まぁ詳しくは言え無いんで……だけど、数年前からやってて、紅目に関係するもの。」
「ふーん? 学会には出した事有るの?」
「一応、何度か。全く認めて貰えま……無かったけれどね。」
あぁもう、むずむずする! 気持ちが悪い!
「成る程ねぇ……つまり……。」
彼女が其処迄言った所で僕は手を後ろに合わせて背を平行に折った。
「御免なさい!! やっぱり無理です!! 敬語使わせて下さい!!!」
「……えぇ。」
彼女は顔に皺を寄せて呆れ果てた様な顔をした。
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