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第九十一話:ドゥレマの過去②※

前回のお話の続きです。


十一月四日、本文がしつこかったので修正しました。

 其の次の日、俺等は天幕を貼って夜を過ごして居た。

 辺りは薄暗く、もう殆ど日は沈んで居た。


 俺と妻の間にはパチパチと音を立てて居る焚き火が在る。

 

「……ねぇ。」

「……何だ?」

 少し不安そうな表情で急に其う話しかけて来る。


「大丈夫……かしらね?」

「……大丈夫だよ、きっと。」

 俺は確証も無く其う言って居た。

 きっと、大丈夫──其う、きっと大丈夫何だ──


 と俺がスープを平らげて居ると何処から途も無くガサガサと云う音がした。

 俺は立ち上がり周囲を見渡す。

 文字通り毛が逆立って居る。多分、尻尾も上がって居るだろう。


 少し、口からシューシューと声を漏らしながら首を左右に振って辺りを見回す。

 途轍も無く、嫌な予感がした。


 俺から見て右斜め前の方向、其処の高い背の草がガサガサと揺れる。

 何か、匂いもする。人間臭い臭いがし無い。と云う事は──


 此処迄考えて、はっとした。嫌な予感が的中したのだと分かった。


「居たぞ!! 殺せ!!」

 現れたのは鬣をどんぶりと蓄えたライオンだった。

 村の中心格の様な存在の奴だ。


「お、おい、俺等が何してったってんだよ!?」

 俺は彼等からじわじわと距離を取りながら右手を突き出す。

 妻の手をぎゅっと握った。


「知ってるぞ!! お前!! 紅目の子を産んだんだってな!?」

 後ろに居る茶色い狼が自分自身の鼻をツンツンと指しながら皺を寄せて牙を見せ付けて来る。

 明らかに怒って居る。殺す気まんまん、と言った様だった。


 嘘だろ。つまり、コイツ等は俺等の臭いを辿って此処迄やって来たのか!?

 何と云う執着だ。


「家族共々!! 皆殺しだ!!」

 俺はライオンから放たれた其の台詞を聞いて、兎に角全身全霊で走り出した。妻の其の手をもっと力強く握った。

 後ろから金属の擦り合う音、獣の咆哮みたいな声が聞こえて来た。


 振り返ると、沢山の獣人が武器を持って、そして此方に明確な殺意を持って殺しに来て居た。

 俺は森から抜け出す様に走って行った。


 くそ、元々逃げるのには向いて無い体なのが此の時許りは憎たらしい。

 上から、何かが降って来た。ジャガーみたいだった。


 如何やら木の上に潜伏して居たらしい。

 奴は剣を降った。妻に当たりそうだった。


 俺は彼女を引き込んで自分自身の体で攻撃を受け止めた。


「あだっ!!!」

 右腕が取れて了ったみたいだ。けれど、彼女を守れるのなら腕の一つや二つくれてやる。

 俺は直ぐ様足を振り上げて奴の鼻目掛けて蹴り上げた。


「がっ!!」

 奴の鼻に直撃したみたいだ。

 きっと、其うしたらもう直ぐは追って来れ無いだろうと、又、走り出した。


 けれど、俺が急ぎ過ぎた所為か、彼女は転んで了った。

 足を捻挫したらしく、立ち上がれ無いみたいだった。


「逃げて!」

 必死の表情で俺に顔を合わせて言って来た。

 ──情け無い。──本当に、男として、獣人として情け無い……。

 何が、腕の一つや二つくれてやる、だ……。


 でも、けれど、もうしょうがない。守れ無い。

 此処でおどおどしてたって俺が殺されるだけだ。

 俺は彼女の言葉に従って其処から逃げ出した。


「ごめん!! ごめんよ!!!!」

 俺は精一杯の謝罪を口にしながら其の場を去って行った。

 ……聞こえて居るだろうか、ちゃんと。


 少し歩くと、何か声が聞こえて来た。


「居たぞ!! 」

 後ろからだ。嗚呼、想像もしたく無い。

 何が、ボゴ、ボゴ、と殴られる様な音と共に怒号を浴びせられてる様だった。


 耳を後ろに向けたのが悪かった。俺は前に向け直して又走り出した。

 俺は或る程度走しり続けた。けれど、体力の限界だった。


 途中で息を切らして半分歩く様に成って了って居た。


 音がし無い事を良い事に何処か安心して居た様に思える。

 俺が木に手を触れた瞬間、急に右足に激痛が走った。


「〜〜〜〜!?」

 叫ぶ暇も無い、其んな激痛。ゆっくりゆっくり視線を下にやる。

 血がドバドバと出て居るのを、見て了った。バランスを崩して了った。

 仰向けに倒れ込む。


 そして、左腕、左足にも同じ激痛が走った。

 痛みに耐える様に顰めっ面に成って居る俺の目線の中に、ぼんやりと誰かの顔が見えた。


「……ごめんな、けれど、此れは村の掟。

 命迄は、直接取ら無いでやる。」

 其奴はチーターみたいな顔だった。

 成る程、潜伏して居た訳か。先回りして、其の瞬発力を生かして俺を達磨にしたのか。


 ああ、其うか、俺は此処で野垂れ死ぬのか。

 きっと、魔物に体を啄まれて腐乱死体に成って死ぬのか。


 其う考えると、もう全てが如何でも良く成った。

 妻の事も、リングの事も、エコーポー国に行く事だった、此の世界総ての事がもう如何でも良く成って行く。


 俺は目を閉じた。せめて、最後は楽しい夢でも見られます様に、と心の中で誓った。

 

 なにやら、響めきが聞こえる。俺の周りで、ざわざわと声が聞こえた。

 けれど、其んな事今の俺には何も関係無い。なんせ、何の道死ぬのだから。

 心臓でも突き刺されて死ぬのだろうか。きっと、激痛が走るだろうなぁ何て考えて居ると、ざわめきは何時の間にか消えた。


 俺は目を開けた。辺りは不気味な程に静かだった。

 ……ゆっくり、口角を上げた。馬鹿め。


 如何やらもう死ぬだろうと勝手に仮定して見逃してくれたみたいだ。

 俺はありったけの魔力の体に注ぎ込んだ。下半身からぞわぞわともにょもにょと嫌な感触がした。

 宛らの化け物の様だった。


 そして、左肩からも同じ感覚が伝わった。

 右腕もやろうかと思ったのだけれど、頭痛がキーンと伝わって来た。


 ……駄目か。

 理由は分から無いけれども、俺は自然と魔力を流すのを止めた。


 俺は立ち上がってみた。さっき迄無かった両脚がしっかりと有る。

 問題と言えば、寒い位だ。


 左手にも力を込めて動かしてみた。

 握って開いてを繰り替えしてみると正常に動くみたいだった。


 毛皮に付いた土を慣れない左手でパンパンと払い、先ずは周囲の状況を確認してみる事にした。

 先ずは……此の右肩を如何にかしよう。


 さっきから、血が出て居る様な気がして嫌なのだ。

 ええと、鞄は……何処だ。


 辺りをきょろきょろと見ると、投げ捨てられて居る鞄を発見した。

 其れに近寄り、中身を確認する。


 中には食料とか、お金とかのめぼしい物は無かったが、手拭いが二つ有った。

 持ち上げてみると、そこそこの大きさだ。


 よかった、持って来て居て。其の場に座り込んで手拭いを折り畳む。

 もう一つは広げて中央に畳んだ其れを入れ込む。

 右肩に畳んだ所が来る様にして、口と左手を使って首にへと其れを掛けた。


 ……取り敢えず、応急処置は此んなもんで良いかな。

 もう一回鞄を探ってみる。他には何かめぼしい物は無さそうだったけれども、妻の形見でも有る。持って行こう。

 俺は其の大きな鞄を背負わず片手に持って歩き始めた。




 其れから何時間が経っただろうか、歩けど歩けどエコーポーらしき国は見え無い。

 其れどころか、城壁すら見え無いのだ。


 もう体力も無い。とぼとぼと歩く位しか出来無いのだ。

 ああ、結局、俺は死ぬのか? 此の儘誰にも会わずに、死ぬのか。其れだけは勘弁したい。

 けれど、もう歩く事すら儘成ら無いのだ。


 俺は近くの木にへたれ込む様に座り込んだ。

 はぁはぁと息を漏らして上を見上げると、もう太陽が登って居た。

 何だか、うとうとして来て了う。


 もう、良いか……十分、頑張ったよな。

 俺が其の場で寝ようとし始めた其の時、誰かの声が聞こえた。


「うわっ!! 如何したの!!」

 目をゆっくり開くと、彼女は白色の髪を生やした獣人みたいだった。

 俺は差し伸べられた其の手を取った。


 不思議と、怖くは無かった。

そんなこんなでドゥレマは今エカルパル国に居る訳です。

其の後ドゥレマの妻は如何為ったかと言うと……御想像の通りです。


追記:ブクマ件数10を超えてました、感謝!

   実はブクマ超えている時も有ったのですが其の語直ぐ剥がれてしまって言う機会が無かったのです。


   此んな作品を読んで下さって居る読者の皆様方には頭が上がりません。足を向けて寝られません。


此の作品が面白いと思ったら評価をお願いします。

モチベに成りますので、宜しければ。

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