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第八十八話:論文発表と醜い罪悪感※

今思ったのですが、論文発表と云う依り研究成果発表の方が正しいのでは……??

取り敢えず、今回からの御話では直して置きます。


不味い、私の日本語の不自由さがバレてる。


其れと今回、設定がぶわあって出て来るのでうわ何で其んな事聞いて無かった!

的な事象が発生するかも知れません。此れは完全に私の物語構成力が低い所為です。反省。


後、私研究論文に付いては一度も書いた事が有りません。

ですので、理数系の人が見たらツッコミどころ満載かも知れません。

其の時は容赦無く感想欄にツッコミを入れて下さい。お願いします。


※十一月一日、タイトルのナンバーが間違って居たので修正しました。

 今日は研究成果発表最終日だ。

 僕はさっきから心臓がドキドキしっぱなしだ。

 けれど、僕のドクンドクンと打つ心臓とポリリズムする様に一定周期でぐーぐーと聞こえて来る。


「……ガル、ガル起きて。」

 其の音源はガルだ。さっきから電車で居眠りをして居る人みたいに体をガクガクとさせて居る。

 

「ん? ……んあぁ……。」

 欠伸を噛み殺す様に目を瞑りぱっと開けた。


「……僕の発表見たいんでしょ?」


「あ、もう其んな?」

 寝起きだからか、表情が明らかにぼけっとして居る。


「うん。」


 僕はさっきから論文を何度もぺらぺらと捲って確認して居る。

 緊張を抑える為に。


 喉を触ってうううっ、と痰が喉に絡んだ様な声を発して息を整えた。


「……ちゃんと見といてよ?」

 ガルに向かって其う言うと、僕は席を外して通路へとゆっくりと歩いて行った。

 すると、目線が僕の方へと一気に集まる気がした。


 色んな人に見られて居る感覚がするが、何故か僕は途轍も無く冷静だった。

 心臓がバクバクする感覚も中央の台へと向かって行くと共に次第に収まって行く。


 そして、妙に冷静に成って行った、ズカズカと、大物歌手みたいな雰囲気を纏って歩いて行く。

 飽く迄、此処に居る人達は僕の研究成果を聞きに来て居る。

 僕に付いて何を言われることも無い。


 僕は中央の台へと来ると首を左右に振って周りの人を眺めた。論文用紙をトントンと揃えて用紙を確認する。

 目を閉じて上を向いて耳を澄ます。異常な迄に、其れは世界が無音に包まれたみたいに静かだった。

 目を見開いて学会員の方を見た。


 さあ、此処からは僕の世界だ。


「先ずは名前と論文の題名に付いて話して下さい。」

 目の前に居る男性が僕の方を睨み付けるみたいに見て来る。

 壁の凹凸に反響して声が僕の耳に通って来る。


「……はい、名前はカインドロフ・クリングルスで、題名は『変身魔法の研究と活用方法』です。」

 僕は妙に冷静な其の口調でゆっくりと其う言った。


「カインドロフさんは今迄銀狼に付いての研究を発表して居ましたよね?

 其れはもう、お止めに成られたのですか?」

 隣に居る髭を生やしたヅィー族の男性が渋い声で、けれど僕を訝しむ様に訊いて来る。


「あぁいえいえ、其方は少し研究が滞って居りまして……未だ纏められて居りません。

 今回は其れとは別に、少し突発的では有るのですが、途轍も無い発見をしましたので論文を書いた次第です。」

 僕は其う云うと彼は目を瞑って溜め息を吐いた。

 そして、僕の眼をギロッと見ると手を合わせて其の上に顎を置いた。


「では、どうぞ。」

「はい。」


 僕は論文の用紙を眺めた。うん。きっと、粗は無い筈だ。

 息を深く吸って唇を噛み彼の方を向いた話し始めた。


 ガチャ、と扉が開く音がしたが気にも留めなかった。


「……兼ねてから変身魔法と云う物は研究されて居ました。理由は、使えたら自分自身の姿を偽装したり魔物への研究に使えるから、です。」


「しかし、今迄数多の研究者が研究しても分かりませんでしたが、今回分かったので発表して行きます。」

 僕は用紙から目を離して目の前を見た。やはりと言うべきか、学会員は怖い目をして僕を見て来る。

 其処からは、論文と学会員を交互に見る様に話して行った。


「前提として、魔法と云う物は魔素、と云う空気中を漂う物質と結合して起こる現象なのは皆さんご存知だと思います。一種の奇跡的な現象です。そして、魔法の大きさや属性に依って或る程度魔力の消費が比例する事が確認されて居ます。」


「属性は基本四属性、変則三属性に分かれ、これは魔素の種類に依って分かれます。

 魔素にはイヴ、エカ゚ャ、ウルラ、オヹール、アクォード、アェレ、オェニューが有ります。」

 イヴからオェニューは飽く迄エカルパルアルファベットに乗っ取って付けた名前だ。

 アルファ、ベータ、みたいに。固有名詞では無い。


「其々、熱属性、冷属性、風属性、雷属性、ダーベイ属性、ゲード属性、地属性に対応します。」


「そして、無属性と云う物が有ります。此れは魔素と反応せずに発動する唯一の魔法です。」


「今回、研究で変身魔法が無属性に属する事が分かりました。」

 会場が騒めく。けれども論文発表の途中で横槍を入れるのはルール違反なので皆はざわざわとするだけだった。


「元々、コータス・ルータグさんの「魔法の属性の提唱」で否定されて居ますし、他の魔素は今迄発見されて居ません。決定的な証拠として魔法が発動する時の微かな音と光は確認出来ませんでした。」

 其の事を言うと騒めきがドンドンと大きく成る。けれど、審査員は表情一つ変えずに僕の話を聞いて居た。

 そして僕が渡しただろう資料を眺めて居る。


「……えー。」

 次は何だったっけか。

 論文をじっくりと眺める。


「次に、発生させる呪文に付いてです。

 前々から呪文に付いては考えられて居ました。」


「ヴュリチベル・エル・ノーマ著『呪文手記』、ヅォッツァ・メラール著『魔導大辞典』、カデグワ・チョー著『魔法の謎を解き明かす』に『ラ゛ヰ゜トㇳ・ズ̌ィチ̇ル̇・ズィーズィ』、と書いて有ります。」


「其の為、呪文はこれで間違いは無いでしょう。」


「問題は短縮魔法です。短縮魔法は属性が分から無い為か、作られて居ないみたいです。」


「さて、では何故呪文が分かって居て研究が進んで居なかったのでしょうか、今回二つ、仮説を用意して来ました。」

 僕は小指と薬指と差し出して周りをぐるぐると眺めた。

 さっき迄あんなに騒付いて居たのに皆やや訝しげでは有るが、興味深そうに僕の話を聞いて居た。


「一つは属性が分かって居ないから、です。一説には魔素は思考を判断して魔法を放って居る、と言われて居ます。」


「けれど、此れでは属性何て無かった時代に魔法を発動出来て居た事に理由が付きません。」


「二つ目は、魔力をかなり多く喰らうから、です。」


「昔の統計ですが、此んな物が残って居ます。

 千三百三年のエカルパル国死亡者、重傷者統計です。」


「今から読み上げます。注意して下さい。名前は黒塗りで伏せられて居るのですが……。」

 僕は資料の方の紙を取って注意深く眺めた。


「……氏、変身魔法を使った事に依り死亡。

 氏、変身魔法を使い昏睡状態に。

 氏、変身魔法を使い植物状態に。」


「と、有ります。」

 辺りを見回すと耳を塞いで居る人も居た。とある獣人がうわあと顔を顰めて居るのも分かった。


「此の事から、使うと死亡する可能性の有る魔法の為、研究が中々進まなかったのだと思います。」


「すると、何故私が使えたのか、と云う理由が出て来ます。

 理由は紅目だからと考えます。」


「紅目は元々魔力の多い特異体質です。其の為、だと思います。」


「実験は自分の体ともう一人手伝って貰いました。」

 魔物に手伝って貰った事は言わ無い方が良いだろう。


「無詠唱でやったのですが、其れで耐えられたのは其のお陰だと思います。」


「活用方法に付いて話す前に、注意点に付いてお話ししようと思います。」

 僕は論文をじっと見詰め、学会員の方を向いた。何故か、少し柔らかい表情に成って居た。


「……此の魔法は魔力を多く使います。其の為、完全詠唱で使うのはオススメしません。

 無属性と云う事が分かったので、短縮詠唱を使って下さい。」


「しかし、短縮詠唱では骨格を変える事が出来ません。

 此れは今後の課題だと思います。」

 周りは少し項垂れた様な表情をして居る人も居た。


「そして、如何やったら上手く発動出来るか……に付いてですが、此れは此の論文が展示された時にご覧下さい。」

 此処で言ったら、話の邪魔に成りかねない。


「最後に、活用方法に付いてです。」


「一つ目は、魔物の生態調査に使えます。変身魔法で魔物へと擬態し、追って行けば分かるだろうと思います。」

 会場が又騒つく。さっきと違って困惑して居る様な感じでは無かった。


「警戒心の高さと厄介な魔法から今迄分かって来ませんでしたが、此の魔法で分かるだろうと思います。」


「しかし、さっき言った様に短縮詠唱では骨格を変える事が出来ません。

 見た目が違う動物に対して魔物はかなりの警戒心と敵意を持ちます。」


「なので、此れも完全詠唱を如何に使える用にするかが問題に成って来ます。」


「二つ目に、防御魔法の代わりに使える可能性が有ります。」

 さっきの髭を生やした学会員の男性がふぅんと声を上げた。


「魔物や獣人の中には鱗や毛皮の硬い種族が居ます。もし攻撃を受けた時に其処の一部分だけを変えれば攻撃を受け流す事が出来ると思います。短縮詠唱で出来る事ですので実用性は有ると思います。」


「最後に、纏めです。」


「長年変身魔法に付いては分かって来ませんでしたが、変身魔法は無属性で有り、短縮魔法も発見出来ました。」


「しかし、魔力を多く喰らう関係上、最悪の場合死ぬ可能性も有ります。実用性は無いかも知れません。」


「なので、今後も研究し、完全詠唱を如何やって使える魔法にして行くか、が次の課題に成りました。」


「何か質問は有りますでしょうか?」

 すると、髭を生やして居ない方の男性が立ち上がった。


「誰と? 何の様に実験をしたのですか?」


「はい、えーと、謝辞にも書いて居ますが、ファルダ……。」

 僕は少し此処で思考が止まった、魔物なのに男性、と言って良いのだろうか。


「……と云う男性と実験をしました。」

 結局、行って了った。一応雄だとは思うから嘘は吐いて居無い。


「何度か変身魔法を使って、其の時に体調、具合、何に変身出来たかと結果を記して行きました。」

「……成る程。」

 男性は納得した様でゆっくりと座った。

 すると、後ろから声がする。リング、と声が掛けられた気がした。

 余り聞き慣れない声だ。


 最初は気の所為だと思って居たのだが、其の声は連続的に聞こえる。

 僕は後ろを振り返ってみた。


「リングー、俺だ、ファルダだー。」

 と声を弱めて手を振って居た。

 ……何時の間に来たんだ!? 帰ったのじゃ無かったのだろうか。


 僕はにっと口角を無理矢理上げて前を向いた。

 何故か、嬉しくは無かった。


「他に……。」

 其処迄言った所で、髭を生やした男性が立ち上がった。

 何か質問されるかと耳を彼に向けて身構えると、急にパンパンパン、とゆっくり拍手を始めた。


 其れにつられるかの様に、波浪の様に拍手が伝播して行く。

 パチパチパチパチ、と拍手は何重にも重ねられて途轍も無い反響と波を生み出した。


 僕は論文を投げる様に置いた。何かが魂切れた。

 そして耳を両手で塞いだ。其れでも彼等は拍手を止めてくれはしない。


 もう、止めてくれ、此んな奴が賞賛される何て、本来有るべきで無い事だ。

 さっき迄自信満々だったのに急に其んな事を思った。


 目の前を見ると、前世の那の上司の姿が見えて僕の肩を叩いて居る様な気がした。

 

『ほら、言っただろ、お前はクソだ、って。』

 幻聴だと思うが、其んな事を言って来た。

 彼は清々しい程に憎たらしい笑顔を浮かべて居た。


 ……だよな。

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モチベに成りますので、宜しければ。

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