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Abteilung 部と局と課

 日本の官公庁で「局」「部」「課」をどう訳すかは、その官公庁自身が決めるもので、実際には他所の例を見ながら決めるとしても、根拠になる統一規定はないようです。


財務省局部課等英文名称一覧

https://www.mof.go.jp/about_mof/introduction/divisional_composition/index.htm


 むしろ「局」「部」「課」の呼称を(日本語で)どう選ぶかが、「最初の人たちがそう決めた」としか言いようがない無秩序なものです。例えば日本海軍には「水路部」がありました。海図をつくり、のちには海洋気象データも集める機関でしたが、これは「海軍水路部」と書くと正しい組織名称ではなく、あくまで「水路部」でした。初期には職制も別で、水路正(海軍少佐相当官)といった呼称を使っていました。


 日本陸軍参謀本部(大本営陸軍部)も、日本海軍軍令部(大本営海軍部)も、部長が何人かいて、その下に課長がいました。陸軍省や海軍省は局の下に課を置いていました。時代をさかのぼると、陸軍参謀本部が陸軍省参謀局であった時期があり、だから局を使わず部を置いていたのかもしれません。逆に海軍軍令部は「局」であった時期がなく、初期には第一局、第二局を置いていましたが、1893年に第一部のように「部」に改めました。


 ドイツ陸軍参謀本部の場合、第2次大戦期に「課」にあたるものはAbteilungでした。このAbteilungも「分けたもの」であり、陸軍では「大隊」によく使われる表現であり、部なのか課なのか局なのか考え込むような使い方もまれにありました。例えば弾薬工場に3つのAbteilungがあって、それぞれ砲弾生産、銃弾生産、積み出しを担当していたような例です。


 その上の部に当たるものが、「役職あって組織なし」でした。5人のOberquartiermeisterがそれぞれ、ひとつまたは複数の課を担当したのです。作戦課を担当に含むOQu Iが陸軍参謀本部第一部長や海軍軍令部第一部長にあたると考えられますが、そうすると参謀次長や軍令部次長に相当する役職がドイツ陸軍参謀本部にはない……ということになります。


 労農赤軍(のちソヴィエト陸軍)参謀本部は、управление(Upravlenie)とОтдел(Otdel)をそれぞれいくつか持っていて、後者は人事・戦史と言った戦闘指揮から遠い事柄を担当していました。そして、次長に当たる参謀総長代理を置いていました。


 プロイセン陸軍では、複数のOberquartiermeisterが置かれる中で最先任の人をGeneralquartiermeisterと呼びました。こうなると(部長兼)参謀次長と呼んでもいいでしょうね。第1次大戦の英雄ヒンデンブルク元帥は、いったん退官していたのを戦争で復帰したようなおじいちゃん(1847年生まれ)でした。その参謀長を務めたルーデンドルフは、ヒンデンブルクが参謀総長になると実権をふるい、参謀本部を改組してErster Generalquartiermeisterという役職を新設し、自分がそれに収まりました。「首席部長」というところですが、もちろん普通は「参謀次長」と訳されます。第2次大戦期にはGeneralquartiermeisterは置かれず、例えばベック参謀総長が辞職した時は、OQu Iであったハルダーが後任となりました。ハルダーが解任されて後任に指名されたツァイツラーは、まだ少将であったのをヒトラーが大将に特進させて任じたもの(1895年生まれ)で、Oberquartiermeisterを置くと先輩になってしまうせいか、以後Oberquartiermeisterは任じられなくなりました。


 面倒くさいことを言うと、開戦時に4課長(補給)だったワグナーと5課長(鉄道・輸送)だったゲーリケはそれぞれ戦時動員に当たり、補給総監、輸送総監に任じられ、OQuを飛ばして参謀総長直属ということになりました。ツァイツラー就任後も留任しています。

9/18 誤字修正

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