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死語の世界、あるいは世界の中二病

 フュージリア兵は歩兵の一種ですが、国と時期によって、その性格が違います。フュージリア兵とはもともと、フュージリア銃を持った歩兵です。火縄の代わりに火打石を使って点火する銃であり、そうした銃が使われなくなると、部隊の性格もあいまいになっていきました。


 プロイセン軍にはフュージリア兵は比較的後から登場し、フリードリヒ大王はいくつかフュージリア連隊を創設して、もっぱら第二陣を預かる軽歩兵と位置付けました。つまり第一陣が崩れた場合、命令を待たず柔軟にこれを支え、第三陣以降の予備隊に行動の自由を与えるものとしたのです。フリードリヒ大王が没した直後の1787~1788年に連隊の独立大隊化と擲弾兵大隊の改称を含め、フュージリア大隊が多数創設されましたが、ナポレオン戦争をはさんでプロイセン軍が再建される際、これらの大隊はいろいろな連隊にパラパラに吸収されました。「軽歩兵」ということで射撃に優れることを期待されていたのか、1841年にドライゼ銃が導入されると、(もと)フュージリア大隊が真っ先に受け取りました。結局みんな受け取ったので差などなくなったのですが、第1次大戦のころになってもグレナディア大隊は行軍や突撃の訓練重視、フュージリア大隊は射撃訓練重視という伝統……というより意識は残っていたそうです。


 それとは別に、連隊そのものにフュージリア連隊と名付けられることはよくあり、こちらは全く実質的な差を生みませんでした。第2次大戦でも、1943年に歩兵連隊のほとんどがグレナディア連隊と改称される前に、ごく少数の歩兵連隊はフュージリア連隊と名付けられていますが、これも景気づけ以上のものではありませんでした。


 開戦から1942年までの間に、ドイツ歩兵師団は歩兵9個大隊を6個大隊に減らされ、もともと2個中隊しかなかったとはいえ、偵察大隊を事実上失いました。このため師団直属の歩兵1個大隊を編成することが多くなり、当初こうした大隊はDivisionsbataillone(師団大隊)などと呼ばれていましたが、これがフュージリア大隊の名称を受け継ぐようになりました。まあ偵察大隊の代わりであり、先鋒であり、軽歩兵だというわけですね。


 大戦末期の国民擲弾兵師団については、一段と値切りが進んで、フュージリア大隊に当たるものはフュージリア独立中隊となりました。まあ編成が完結しないとか師団残余だけで戦っているとか、そんな時にこんな細かいことを言っても仕方ないですね。末期最貧戦線のことを語ると生き生きしてくる人がいますが、私は編成表に意味がなくなった1945年のことは、どうも真面目に調べる気になれません。


 イェーガー(猟兵)というのはもともと山岳地帯で猟に親しむ家庭の若者が、そのまた初期には優良な猟銃ごと雇われるもので、兵士の気質も忠良なプロイセン歩兵とは違っていました。それを見てフランスでも編成されたのが、同じ「猟師」を意味するシャッセールです。射撃の腕と移動の早さを期待される歩兵でしたが、ナポレオンはこれとは別にヴォルティジュールという兵種を作りました。「軽業師」というような意味ですが、やはり射撃に優れ、散兵や偵察隊として働き、戦場から戦場への移動には乗馬歩兵として振る舞うというものです。なかなかこれが務まる兵士はいません。モスクワで負けてから、もう昔のような部隊は再建できなかったと言います。


 じつは第2次大戦期、フランスの歩兵分隊は機関銃班のdemi-groupe de fusiliers、小銃・小銃擲弾班のdemi-groupe de voltigeursから成っていました。パッと見て来歴なんかわかりませんよね。

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