93、静かなダンジョン
「あれじゃないか?」
山道に差し掛かる麓にぽっかりと大きな洞窟の様な穴がある。横に立て札が立ち、賢者攻略済み初心者用と書かれているが上から赤いばつ印がつけられている。
「そうみたい。近くに人はいないみたいね。」
ダンジョンを見張っている筈の者もいない。
「この周辺はオークの群れに向かって行ったズィーロさん達以外の反応はないな。」
リゼルが[索敵]でズィーロ達のところまで確認できるならかなりの範囲を見ていることになる。反応がないなら既に逃げたか、オークの討伐に行ったか...生きていないかだ。
「リゼ、[索敵]の範囲を広げすぎたら魔力切れになるよ。」
魔力回復薬を渡して注意すると、リゼルが頷いて回復薬を呷る。
「うぐっ。あ、ありがとうな...これも凄い効き目の魔力回復薬だな。」
「作成者が私だからね。効果とコストを優先した結果なんだよね~。そのうちリゼにも教えてあげるね。」
「お~、賢者様の御技をエルが更に進化させたんだな、できれば味も何とかしたいな。」
「.......、......。............?」
(賢者というよりは、先人達の回復薬だな。味についてはエルノラが考えているのだろ?)
「世界医術師会のギナマ先生に丸投げしたけどね。」
回復薬が順調に出来あがり、商業ギルドに流れているので魔力回復薬も味のマシなの物が出てくるだろう...と思いたい。
「そういえば、先人様達といえば200年前に突然消えられたとか、ハイエルフ達に聖王国に連れられて戻らなくなったとか伝わってるな。ハイエルフも聖王国も伝説級の話だから前者が有力説か?」
「聖王国ファルネか。ハイエルフの国だな。我は消えた幻の王国でかつては六大国だったが今は物語にしか出てこない国だと聞いている。先人様方は突然消えられたが正しいだろうな。」
リゼル、ハルル、ラピスが聖王国についての論議を歩きながら始めだした。ダンジョンの入り口に差し掛かり異様な気配にリゼルが足を止める。
「あれ?ワイバーンがたくさんいると聞いたが静か過ぎやしないか?」
足を踏み入れた薄暗いダンジョンは洞窟の様になっていて奥が暗くて見えない。生き物がいる気配が無く、私達からの音しかない。
「[ライト]」
魔法で沢山の光の玉を出して放つ。光の玉は先々に散って行く先を照らしダンジョンないが一気に明るくなった。
少し進むと広大な洞窟で下へと続く道は深く螺旋状になり横穴が空いている様な感じだそこからまた別の道やら行き止まり等になっているのだろう。空気が冷たく湿った感じがする。
疑問なのはモンスターがいないことだ奥の方に引っ込んだのか?やはり、一匹もいない。
「全然反応が無い。オークと同じ位なら1000体のワイバーンはいると思ったけど...。」
「.............。.........。」
([神眼]にはメノウらしき者ともう一人知らない者が最下層にいるな。護衛君3号も下を案内している。)
「とりあえず、行ってみよう。」
報告にあったワイバーン達がいないのは不思議だが四人で奥へと向かうために歩を進める。
「ここまで何もいないと逆に不気味だな。」
暫く歩いたがやはり生き物がいない。リゼルは周囲を見渡し横穴に入っては首を振る。
「エルノラ、こちらの道から奥に続いている。」
「....、..................。」
(待て、奥に行く途中に何かあるようだ。)
ハルルが行き止まり近くの横穴から顔を出して呼んでいるのをラピスが近寄り奥に続く道の途中にある壁を指す。護衛君3号もニョロニョロとラピスと同じ方向を指した。
「..........。............。」
(そこに入り口が見える。魔法で隠されている。)
ラピスが[神眼]で目を開き、壁を見て手を翳す。
すると壁が波の様に揺らめき消えた。
「隠し通路か、メノ...師匠が考えそう。罠があるかもしれないから私が先に行くね。」
言うが早いか、えげつない罠があるかも知れないので止められる前に先陣をきる。
「あ!?エル!!」
リゼルが直ぐ後を追って来ようとするがハルルにガッシリと捕まれプラ~ンとなった。
「ハルル!?何するんだエルが!罠があるんだろ!?!?」
ジタバタと暴れるがハルルは全く気にせずゆっくりとリゼルをぶら下げたまま歩きだす。
その後をラピスがため息を付きながらついていった。
「リゼル、エルノラしかメノウの罠は無効化できないんだ。我等がエルノラより先に行くと80%の確率で死ぬか、瀕死になる。メノウはエルノラ以外えげつないんだ。」
理由を知らないで暴れ、私を心配するリゼルにハルルが説明する。
「そうそう、私の魔力に反応して解除されるから私が先に行くのが一番被害がないの。」
一通り罠を解除してリゼル達の元に戻ってきた。
「エル!だとしても先に話してから行ってくれ!心配する!?!?わぁ!」
ガバッと上から抱きつかれたがハルルに解放されてそのままストンと落ちると顔が一気に近寄り心臓がドクンと音をたてた。
「......。.....。」
(離れろ。近い。)
ベリッと剥がされた。
不意打ちはヤバイんだよ。無駄に美形だから心臓に悪い。
「ふぅ、こっちだよ。」
気を取り直し静かにするように伝えて、魔法で音が漏れないように気配を消して解除した道を進む。
私の指示に疑問を持ちながらも三人がついてくる。奥に向かうに連れて話し声が聞こえてきた。
一人は、聞き覚えのある声で特定の人物以外口調は優しいが出ている言葉は辛辣のメノウ。
もう一人は、知らない女の声だ。内容まではまだ聞こえないが言い争っている様に聞こえる。
私たちは二人の会話が聞こえるところまで移動すると行儀が悪いが聞き耳をたてることにした。




