92、一番の危険は身近に
門の外には近くまで迫っていたオークの群れとそれを先には行かせまいと足止めする冒険者達で混戦していた。ズィーロ率いる冒険者達は足止めの冒険者達と交代しつつグループをつくり自分達の二倍ある大きさのモンスターを囲みながら倒していく。その間にも別のオークが背後を狙い近づき攻撃を仕掛けてくる中、皆ギリギリの戦いをしていた。
沢山の血の臭いが漂い、土埃が視界を遮る。鋼の音が鈍く響いて倒れ行く冒険者とモンスターの中をズィーロ達と駆け抜けていく。
ハルルを先頭にラピスに結界と増強魔法を掛けさせ、リゼルと私で右側をズィーロとアーバンで左側のモンスター達を目に付くだけ屠っていく。倒しきれなかったモンスターは後方のラピスとジェネラルがトドメをさしていく。
「ハイクタに入る前とは大違いだ。こんなにモンスターが沢山のいるのを初めて見た。」
私の隣で剣を振りかざしながらリゼルがそう呟いた。
「リゼのいたアルネストは古の森のモンスターが多いけどモンスターが溢れる事はないし、可能性のあるダンジョンがないからね。」
会話しながらも目に付くオークを斬り伏せていく。
「ひとつだけ誰も入れないダンジョンが古の森の奥にあるけどあの辺りは全くモンスターどころか動物もいないんだよな。近寄らないというか避けてるが近いかな。謎の遺跡ってよばれてる。」
「...へぇー。」
(その遺跡しってます。何故なら私のスタート地点だから。地上に繋がる為の遺跡だからね。)
息も乱さず二人で次々と倒していくとジェネラルが呆れた声をかけてきた。
「...貴方達のSランクは実は間違いだろう?オークを一振りで会話しながら倒していくなんて普通ならあり得ない。」
「えっ!?ズィーロさん達も同じですよね?」
左側のズィーロ達を見るとどっちが何体倒せるか争うようにアーバンとオークを斬り伏せている。それなら私たちもまだ範囲内だろうと思ったが?
「ズィーロは剣神の加護で戦いの天才だ。アーバンは持っている魔剣の力で戦闘力が飛躍的にあがっているんだぞ?」
「私たちも同じようなもんですよ。リゼは剣神の加護持ちだし、私にはこの剣があるからね。」
と、自分の持っている改造しまくって原型のない元神剣...名前は忘れた。の愛剣[創造と破壊]を見せる。
「そこの男はその可能性もあるとは考えていた。問題は貴女だ!なんで、鞘をしたままなのにオークが切れるんだ!?鞘に見えて抜き身なのか!?」
「いえ、鞘です。昔、抜いたら大変なことになったので本当に必要な時以外は抜かないように釘を刺されてるんです。」
絶対に抜くな、本気で振るなといわれてます。かつての仲間の言葉は守ります。
凄く痛い子を見る目線をジェネラルから感じるが、気にしないことにする。
「エルがいうなら相当ヤバイんだな、その剣!」
リゼルは素直に信じ、剣をキラキラした目でみていた。そんなリゼルにもジェネラルは痛い子を見る目線を向けた。
「お~い!そろそろダンジョンの入り口に着くぞ!」
ズィーロがアーバンと共に少し離れた所から元の位置に帰ってくるとハルルに止まるように伝える。
「ここからもう少し真っ直ぐ進めばダンジョンの入り口が見えてくる。山の入り口近くにあるからすぐ分かると思うぞ。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「なあ、本当に付いていかなくて大丈夫なのか?」
刀に付いた血を払いながらアーバンが尋ねてくるが首を振る。
「大丈夫、大丈夫。この先は任せといて!」
私の軽い返事にズィーロもアーバンもジェネラルも怪しむ目を向けてくる。
「どこから来るんだ、その自信は。俺達でもワイバーンが待ち構えてるダンジョンの中は死ににいく様なもんなのに.....。」
アーバンとジェネラルがそれに頷く。
「エルは賢者様の弟子だし、ハルルとラピスは賢者の仲間だから問題ないって事じゃないか?」
リゼルがそういうとズィーロ達の顔色がどんどん悪くなっていく。
「お、俺達はオークの殲滅に戻るから無事に帰ってこいよ、じゃ、じゃあな!!」
「空耳だ.......空耳。」
「け、けん、..........じゃ...?」
ズィーロは遠い目で空を見だしたアーバンと目を泳がせながらオロオロしだしたジェネラルの首根っこを掴むと逃げるようにオーク達の群れへと突っ込んでいった。
「俺、何か変なこといったか?」
態度がおかしくなったズィーロ達を見て首をかしげたリゼルはハルルやラピスに聞くが二人とも同じように首をかしげただけだった。
彼らの態度がおかしくなった理由を知るのは獣王国のギルドで[血濡れのエルフ]の事を聞いていた私だけだろう。
(賢者の名前であの顔色か...オークの血まみれは気にしていないのに賢者って聞いただけであの反応...)
ちゃんと本人に話を聞こう。私がまだ知らないやらかし案件がある気がする。
「..............?」
(もう出しても大丈夫か?)
ラピスが袖口を捲ると護衛君3号がひょっこりと顔をだした。
「ダンジョンの案内よろしくね。」
護衛君3号が蔦を動かし了解の意を伝えた。
「そうだ!リゼの剣って私が前に渡したロングソードだったよね?ちょっと見せてくれる?」
「ああ。」
リゼルにロングソードを渡してもらい確認すると綺麗なまま刃こぼれ無く新品同様だ。品質保持の効果が付与されている為、私が作成した時のままの攻撃力になる。
今の武器屋に売られている最高の剣はズィーロが持っていたバスタードソードだった。
どんな素材からでもレシピさえあれば何でも作れたゲームで作成したリゼルのロングソードは通常のロングソード作成には到底使用しない物が使われている為攻撃力がズィーロの持っているバスタードソードと同じなのだ。ジェネラルはそこまで見ていなかったようだが、わかる人がみればこのロングソードはあり得ない。
「このロングソード合成してもいい?」
いきなりの申し出にリゼルは驚いた。こんな何もない場所で武器を作り替えると言われたからだ。武器屋で数日間をかけて合成を行うもので今ではそれを行うものもいなくなっている。
「...まあ、元々エルのだしな。すぐに終わるのか?」
早々に私がやることを受け入れたリゼルは多少哀しそうな顔が気になるが...ちょっと目が潤んでいるが、無視してアイテムボックスからリゼルの兄達がわざわざ届けてくれた黒い柄の軍剣を取り出す。同じロングソードなので相性はいいはずだ、旅の間に改造して見た目詐欺の神剣になっているが大丈夫だ...多分。
「[武器合成]」
両手に持った剣が宙に浮かび私の魔力(ちょっぴり神力)を纏いながら光の玉となって1つになり融け合う。
一段と眩い光を発し現れたのは黒い柄のロングソードだ。ただし黒い柄は黒水晶の様に煌めき、刀身の部分は中に銀の細工が施された耐久性のある最固鉱物でできている。
よく見なければだだのロングソードだ。
「よし!バッチリ!」
剣を掲げあちこち見回しても完璧な出来だ。
「......................。」
(またえげつない物をつくったな。)
「エルノラから少し漏れてたのがヤバイんだよ。」
ラピスが頭を抱え、ハルルは息を飲んで眩しそうに剣を見るが近寄らない。
「あんまり変わらないように見えるが兄上達が持ってきたアルネストの軍剣だよな?見た目は前よりキラキラしてる感じがするが....?」
リゼルが私から受け取り軽く振る。
「お!!!!?」
振った方向に向かって大地が切れた。一メートル程。
「リゼル!前と同じに考えたら駄目だ!エルノラの改造は甘く見ると被害が増える!」
ハルルがリゼルの手を掴み負荷魔法を強化する。
「こうやって自分に負荷をかけて、慣れてから徐々に負荷を外して自然に手加減ができるようになるまで負荷を外しては駄目だ!」
リゼルは切れた大地に驚愕した後、ハルルの教えを素直に聞いて負荷魔法をかけた。
「ありがとうハルル!助かった。まさか大地が切れるなんてな。」
「......................。」
(エルノラの改造は経験者だからな。)
「我らは、仲間の武器で死にかけたからな。」
懐かしい思い出を思い出すとは思えない悟りを開いた様な遠い目をしたハルルにラピスも同じに心境のようだ。
「....、.........................。」
(まあ、そのお陰もあって回復魔法の使い手になったがな。)
「ごめんごめん、渡す前に説明すればよかったね。一振りでドラゴンも綺麗に切り落とせる優れものだよ。暫くは負荷魔法で慣れて貰うけどリゼなら直ぐ使えるようになるよ!」
「あ、ありがとう。嬉しいよ。」
苦笑いのリゼルの目に先程と同じ目が潤んでいる様な気がしたが気のせいだと思うことにしよう。 ...うん。




