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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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91、治癒魔法は万能ではない

執務室から一階のギルド受付に降りると、そこには沢山の冒険者達で溢れていた。

血の気が多そうな筋肉質の様々な年代の男女冒険者達がズィーロに気付きこちらを向く。


沢山の冒険者達がズィーロに注目したのでズィーロが思わず一歩下がったが襲ってこないのをみて安堵したのか表情を引き締め混乱する冒険者達に声をかけた。


「今緊急連絡が入った!ダンジョンから予定よりも早くモンスターが溢れた!動ける者で迎撃する!」


「「「「おお!!!」」」」


「各パーティーのリーダーはギルドマスターアーバンに指示を仰げ、魔術師が多くいるパーティーはギルドマスタージェネラルの元で指示を仰げ。後はギルドマスターバルゼノンの元に行け!では解散!!」


解散を告げられぞろぞろと大移動が始まったのを階段から眺めていると端の方に数人の怪我人が見える。魔術師の治療を受けているようだが怪我の具合がひどくどんどん青ざめていた。


「ヤバイな....。」


ズィーロも気がついたのか早足で人混みを掻き分け怪我人の元に歩み寄る。その後を私達も着いていくと魔力回復薬を大量に抱えたジェネラルが寄ってきた。


「これを持っていてください。代わります。」


回復魔法をかけていた魔術師に魔力回復薬を持たせるとジェネラルが怪我人に回復魔法をかける、先程より早い速度で傷口が塞がっていくが顔色はそのままだ。


「エルノラ、あの冒険者血が流れすぎてる。」


「...........。」

(あれでは助かるまい。)


「エルよりかなり遅いな。大丈夫なのか?」


「....今は緊急事態って事にしますか。」


私を見つめる三人に頷きジェネラルの隣へと移動して座るとジェネラルの手の上から手を重ねて魔力を流し込む。


「お、おい。なにをしてるんだ!?」


いきなり手を重ねられたジェネラルは驚いてこちらを振り向くが思ったよりも私との顔の距離が近かったので驚いて顔を背ける。フードで見にくいが首が赤くなっていた。


「今はそんなことをしている場「黙って。」」


「内部損傷からの大量出血。ジェネラルさんの魔法じゃ外傷しか癒せてない。内側から先に癒しをかけるから私の魔力に合わせて。」


そう指示するとジェネラルが真剣な眼差しを向けた後、負傷者に目を向けて魔法を内側に流し始めた。

ジェネラルを黙らせ負傷者の傷を内側から癒すように合わせた魔力を流す。内部損傷の修復がされ始め、血流を魔力で作り正常に戻す。大量に魔力を消費するので私の魔力と混ぜないと出来ない荒業だ。この負傷者はこの方法でないと間に合わない。別の方法をとると私が目立つのでそれは今後の為にも避けたい。


「ぐっ....うっ....。」


ぐったりしていた負傷者が反応を示した。顔色も正常に戻ってきた。


「この人はもう大丈夫ね。他の負傷者はいつも通り治癒をかけて。」


ジェネラルはわかりました。と答えると他の負傷者を魔力回復薬を持たせた魔術師と共に癒しにいった。


「....あのジェネラルが言うことを聞くとは。」


ズィーロは感心したように呟くと戦うための用意を始めた。バトルスーツの上から黒い騎士を彷彿させる装備を着けていく。手には赤い紋様が刻印された両刃のバスターソードが握られている。


「グランドマスター!補給終わりました!すぐ行けます!」


「こっちも指示が終わった!行けるぞ!」


ギルド職員の制服を着た水色の髪の女性と朱色の髪をした少しタレ目の男性がズィーロに向かって集まる。


「バルゼノン、ステラ。先に紹介しておく。冒険者のエルノラ殿とリゼル、ラピス、ハルル殿だ。この四人は煌国より勇者認定された実力者でダンジョンに着いたら別行動で中に潜る。道を作る為に協力してやってくれ。」


二人はこちらを向くと笑顔で答えてくれた。


「ステラです。ギルドマスター補佐をしております。」


「ギルドマスターの一人でバルゼノンだ。」


「挨拶は終わったな?では行くぞ。ジェネラル!行けるか?」


負傷者の治癒を丁度終えたジェネラルが立ち上がりこちらに向かってくる。


「ああ、行ける。アーバンは外で冒険者達に指示を出している。」


「俺たちも行くぞ!」


冒険者達を引き連れアーバンに合流するために冒険者ギルドを後にした。


街中は閉めきられ人々の姿は無く、賑わっていた店も避難勧告が出されてすぐ片付けられた為、今は無人のように静かだ。


大通りの広い道をズィーロ率いる冒険者達が外門に向かい駆けていく。冒険者達の足音だけが街中に響いていた。


外門にはアーバンが軽鎧で身を固め腰には日本刀を差している。黒い髪によく似合う銀の刀はレア素材を集めて作る国宝級の武器だ。攻撃力も高く扱いやすいが制限がかけられ防御力が下がるデメリットがある。


彼のレベルでこの辺りのモンスター相手なら問題ないだろう。こちらの視線に気づいたアーバンが軽く手をあげた。


「ズイー、準備はできているぞ!門の外で魔術師達が足止めの魔法をかけている。先に来たのは1000体程のオーク達だが、見張りによると次も同じ位の数でワイバーンが濃厚のようだ。」


オークは巨体で力が強いモンスターだが動きが遅くA級モンスターの中では脅威レベルが低い。Sランクのパーティーなら余裕で対処できるレベルだ。ただ数が多い。冒険者の数はざっと数えても200人程、次に来るワイバーンはオークより強く大きく空から襲いかかる厄介な敵だ。それがオークと同数なら絶望的だろう。


「前はゴブリン、オークが主で300体、ワイバーンが出てもその中の一体程だったのに....。何だこの絶望的な数のモンスターは!」


ジェネラルが悲壮な叫びをあげた。聞いていた冒険者達もざわめき青ざめているものが多い。


「だがやるしかない。俺達がやらなければ街の皆が犠牲になる。一年の間ずっとモンスター達を蹴散らした俺たちならやれる!!俺達は冒険者ギルド本部の中でも選りすぐりの戦闘エリートの集まり!俺たちに倒せないモンスターはいない!!」


ズィーロの叫びがざわめいていた冒険者達を鼓舞し、うつ向いた顔を決意の秘めた目に変えてズィーロに向ける。



「俺達は誰だ!!」


「「「「「ハンターだ!!!!!」」」」」


全員の声が興奮に塗り替えられ獲物を狙う目になった。


「な、何だ?」


リゼルはガラリと変わった雰囲気についていけないようだ。


「[鼓舞]だね。」


「先人達が使っていたアビリティのひとつ。対象者を奮い立たせ恐怖を消し去り戦わせる。まだ使える者がいたんだ。」


私の言葉に珍しくハルルが解説した。ハルルも持っているが使用した事がない。使用したら最後世界の半分は竜により破壊されるだろう。やめてほしい切実に。


「俺達には聞いてないみたいだけど?」


「[鼓舞]は自分よりレベルの低い者達しか効かないよ。リゼも対象者だけど今は白がついてるから無効化してくれてるよ。」


白が付いてるといわれキョロキョロと見回す。が目には見えない。


《今、頭の上にいるよ。》


白の声が私達にだけ伝えられリゼルが上を向く。


《あ、こら、落ちるだろ!》


リゼルはビックリして今度は下を向く。


《フシャー!》


落ちたようだ。


「ご、ごめん白。大丈夫か?」


《精神体だから問題ない!》


「リゼの頭がお気に入りだからよくいるけど重さもないし害もないから気にしないであげて。いつも通りでいいから。」


《...........》


他にいい説明が思い付かないのだから仕方ない。そんな、心外ですみたいな目線を送らないでください。


「そうか、白が気に入ったならいつでも使ってくれ。」


リゼルは素直で好い人です。白も仕方ないから使ってやる、となんだかんだいって守りを強化している。


「エルノラ殿達。なるべくオークを早く倒し、まだ出てくる前にワイバーンを叩くことにした。外門を出たらすぐにオーク戦になる君らはどうする?」


ズィーロが鼓舞した冒険者達をアーバン達に任せて先に外門の外に向かわせたのを見送りこちらに話しかける。


「私達は先に入り口に向かいワイバーン達をなるべく減らして中に入ります。オーク達はお任せしますね。」


ズィーロが驚いて固まるがすぐに正気を取り戻した。


「は!?お前達だけで飛んでいないとはいえワイバーンを減らすだと!?無茶だろ!ワイバーンもオークと同数程いるんだぞ!?」


「.......問題ない。我一人でもいける。」


ラピスの後ろに隠れたハルルが呟いた。


「...!?そうか、ハルル殿はSSSランクの獣王国の英雄か。...わかった。オークを退け道を作る、できたらすぐに抜けてくれ。」


私達は頷くとズィーロと共に戦闘の音が激しくなった外門の外へとむかった。


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