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Good luck in my world  作者: エンリ
第三章 緑の国グレーベ~煌国ノスアレア
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84、泣く熊と消えたハニー

テディが癒しを受け、気が付く前に状態異常予防のアイテム(液体)を振りかける。これで森を出るまでは大丈夫だろう。


「なんでこんな所にいるんだろうな?」


まだ森の中腹で、見たところ森に出現するモンスターをギリギリ倒せるかどうかのレベルで幻惑対策もなくここにいるのは自殺行為だ。


「テディ...ぐっ、さんが目覚めないと何ともいえないね。」


気を抜くと込み上げる。気を付けねば。


「んっ、......むう。」


ピクリと指が動き眉をしかめたテディがゆっくりと目を開く。


するとポロポロと目が潤み大粒の涙を流し始めた。厳つい熊さんが涙を流す姿を見ると何かが擽られる。...疲れてるのかもしれない。

※注)テディは山にいれば10人中9人は裸足で逃げ出す山賊のような風貌です。


「ううっ、ぐずっ、うううっ...。」


リゼルと私はギョッとしてテディを心配し、ラピスとハルルはオロオロしだした。


「ど、どうしたんですか?テディさん、どこか痛いんですか?」


「テディさん怖かったのか?ここには何もいないぞ?もう、大丈夫だ。」


泣きやまないテディさんを二人で慰める。



「ラピス、こんなときどうすればいいんだ?我はこんなこと初めてでどうすればいいか分からない。」


「.....、.................。」

(おかしいな、癒しは完璧だし外傷もない。)


考え込むラピスにひたすらハルルがどうしたらいいか?と話しかける。


テディはそんな私達を見て少し落ち着いたのか涙が止まった。


「グズッ、...あんたらは、トルネさんの宿を聞いてきた...。ベアードの知り合いだな?」


「そうですよ。エルノラといいます。こっちはリゼル、ハルル、ラピスです。」


リゼル、ハルルは前にも会ったので頷いていたがラピスをみて首をかしげた。


「もう一人はそんなに白かったか?銀で黒っぽい印象だったが?」


ナハトの事をいっているのだろう。彼は今別行動だと伝えたらまたテディの目に目に涙がたまってくる。


「そう..か、置いてきぼりにしたわけ..じゃあないんだ.な..グズッ。」


「彼が自分から離れない限りはそんなことしませんよ。テディさんは何で泣いているんです?」


流れる涙をそのままにしながらテディはポツリポツリと語りだした。


二日前に二人組の女が来た。どうみても血の繋がりがあるように見えない二人は嫁さんを姉妹だと言って連れていこうとした。だが嫁さんはテディさんを置いて行けないのでそっとして置いて欲しいと頼んだら二人は出ていった。


次の日の朝、隣に寝ていた筈の嫁さんがいなかった。慌てて飛び起き家中を探し回るとテーブルの上に手紙が置いてあった。


手紙にはこう書かれていた。



愛するテディへ


これを読む頃には私は国を遠く離れています。離れたくはないですが、やらなければならないことができました。

心配しなくても大丈夫です。必ず戻ってくるので宿をお願いしますね。

勝手に何も言わずいなくなってごめんなさい。愛しています。さっさと終わらせてくるね。もし浮気したらあなたを殺して私も一緒に逝きますよ。

貴方を愛する妻 レアル


おっとりした美少女のような奥さんが書いたとは思えないような内容だが筆跡は間違いなく奥さんらしい。


「テディさん愛されてるな...それにしても奥さんの名前ハニーさんじゃなかったんだな。」


「俺の奥さんの名前を他のヤローに呼ばせたくないからな。人前ではハニーと読んでいる。ちなみに奥さんは俺をダーリンと呼ぶ。」


だからリゼル達にも奥さんと呼べと言った。彼女の名前を知ったのは仕方ないが口にだすのはやめて欲しいそうだ。


(奥さんの名前どこかで聞いたような...?)


私が考え込んでいると再びテディが涙目になった。


「只でさえハニーを狙ってる奴が多くいるのにいく場所も告げずに...他に男がいるんじゃないかって皆言ってくるしよ、居てもたってもいられなくなっちまってがむしゃらに走ったら幻惑の森に誘われちまったんだ。」


がっくりと肩を落とし、今度はじめじめと膝を抱え始めた。


「やっぱりハニーは他の男と仲良く手を繋いでさよならって...俺なんかより細くて女みたいな顔立ちの方が好きだって...グズッ。」


 「テディさんはハニーさんのこと信じないんですか?必ず戻ってくるって書いてありますよ。浮気したらテディさんを殺して自分も死ぬって、あまり賛成はできないですけどテディさんの事を愛してるっていうのは本当なんじゃないですか?」


これも一つの愛の形ではあるだろう。

どうでも良ければ手紙など残さずに消えるだろうから。


「俺ならいつ帰ってきてもいいように宿を守るな。どこに行ったのか分からないならなおさらだな。探しに行ってる間に帰ってきてそこに誰も居なかったら悲しい。」


リゼルと視線がかち合う。その瞳は悲しいような寂しいような光を宿していた。


「そうだな!!」


テディの声でハッとした私はリゼルから視線を反らした。


「ハニーが他の男の元に行くわけがない!今まで散々どっかの貴公子やら公爵やら美形な冒険者やら沢山声をかけてきたが、誰も相手にしない所か俺のどこが好きか聞かれてもいないのに恥ずかしい位喋って相手をドン引きさせてたんだ!ハニーは必ず帰ってくる!俺は宿で待つ。待ち続ける!!」


「...............................。」

(どうやら幻惑の森には陰鬱な気持ちにさせる香りも漂っているようだな。)


今まで黙っていたラピスがフワリと風魔法を使ってこの当たり周辺に漂う霧に混じった香りを飛ばして来たようだ。濃い霧も共に飛ばされ森の中が見やすくなる。


「話がついたか?もう、泣かないか?」


ハルルはまだオロオロとテディを心配している。


「あ、ああ。大の男が泣くなんて情けねぇな!お前達のお陰で助かった。宿に着いたら泊まっていってくれ、サービスするからよ。着くときには丁度夕餉の時間だろ?昨日仕込んだシチューがあるからよ。」


テディの提案に私達はお言葉に甘えることにして共にグレーベのテディの宿屋へと向かった。


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