83、二人目の竜巻 ラピス(白)
「はぁ、偉い目にあったよ。」
「....................。」
(天使族が何故か女神の御使いと認識されているので余計に信憑性がましたのだろう。)
「世界を平和に導く勇者一行ともいわれてたな。」
「女神像一体欲しかった。」
ラピスを仲間に加え、城を後にした私達は煌国ノスアレアのギルド地図を貰いと共和国へ向かう為緑の国に戻っている途中だ。
ハルルが槍で切り開いた道を通り難なく森の中へ入る。行きには無かった濃い霧が漂っているが特に問題はない。
「ラピスはシェリーダ様の補佐でもしてたのか?」
「...........、...........。」
(....私は、聖樹の様子を見ていた。)
「ああ、女神様の神託にあった聖樹が傷ついているって話しだな。」
「....。..................。」
(そうだ。原因を探り癒す為の場所を特定しなければならない。)
「それが共和国にあるんだよな?後は賢者メノウ様を探すだな。」
ちらりとリゼルに視線を向けラピスはコクリと頷いた。
「ラピス、森は緑の国内だから目立つ前にそろそろ羽をしまってね。」
天使族にとって羽は誇るべきものだが他種族にが多い土地の場合移動に邪魔になったり傷がついたり汚されたりするので基本的にはしまっている。
「え!羽ってしまえるのか?どこに!?」
驚くリゼルを余所にラピスは軽く手を振ると羽がパッと消えた。
「.............、.........。」
(異空間魔法の応用だ、羽のみを包むようにして異空間にしまっている。)
「へ~!羽の所には服に切り込みが入ってるんだな。」
「我にも切り込みが入っている。羽を持っている種族なら大体成人前には羽をしまえるように使えている。」
「そうか、余り他の種族とは接点がなかったから色々勉強になったな。」
「帝国アルネストはヒューマン種、獣王国ゼノンは獣人種、煌国ノスアレアはエルフ種、魔国バルデナは魔族種だね。聖王国ファルネは精霊種だったかな?」
「........。..............。」
(そうだ。面倒な者達がたくさんいる。)
私がチラリとラピスを見ると、どこか遠い目をしながら悲しそうな声で呟いた。
「森に誰か倒れてないか?」
リゼルが目を凝らし指差す先に人が倒れている。急いで駆け寄るとやはり人が倒れていた。
うつ伏せで倒れていたのは熊の獣人男性のようだ。
近づこうとしたらハルルとリゼルの手に遮られハルルが近付き倒れている獣人男性をひっくり返すと見たことのある男性だった。
「あれ?ベアードさん、じゃないな。このエプロンはテディさんか?」
リゼルがテディの着けていたピンクのフリフリエプロンを見て判断した。エプロンでしか判断がつかないようだ。
「なあ、エル。外傷はないみたいだが....エル?」
振り向いたリゼルの見た先には仕舞ったはずの純白の羽で私を包んだラピスが明らかに目線を合わさずにオロオロしているところだった。
「どっ、どうしたんだラピス?」
私の回りには防音魔法がかけてあるのでリゼルには何も聞こえていない。今、人に見せられる状態ではありません。
ラピスは見ていた。リゼルが熊の獣人の名前を出した瞬間エルノラが防音の魔法を使いながら自分の胸に飛び込み、神の御力で羽を強制的に出現させ包むように指示された。
主は凄く大爆笑している。少し広めに包み込んだ羽の中で涙を浮かべながら顔を赤く染め口許がこらえきれない笑みになり自分の胸板をどんどんと叩いている。
(....何事かと思ったが、防御力を集中させていて良かった。笑っている理由は良く分からないが...まあ、楽しそうで何よりだ。)
「?エル、どうしたんだ?」
ラピスがそっと羽を開くとわずかに目が赤い私をみてリゼルが驚いた。
「泣いてたのか!?テディさんはヤバイのか?」
首を横に振り羽を仕舞ったラピスにテディの事を頼む。
「........、..................。」
(心配するな、その獣人は幻惑にかかっただけだ。)
テディに近付き跪くと顔の上から手を翳し魔力を流す。魔力で状態を詳しく調べて診察しているのだ。
「...........。」
(幻惑だけだな。)
テディを見ると顔は出会った時のままだが凶悪さが目を閉じているため少し和らいでいるが、時折苦しそうに顔を歪め酷い痛みを我慢しているような表情になる。
「[...........]。」
([癒しの波動]。)
翳していた手から違う種類の魔力が流れ包み混むように薄い緑色の魔力がテディを覆った。
ラピスは癒しのスペシャリストだ。
神聖騎士を主な職にしているが体力、防御力のパラメータを補う為であって本職は表示はされないが治癒術師の最高ランクである[全てを癒す者]を会得している。
[全てを癒す者]は人に限らずあらゆるものを癒し治癒する。死者も条件付きだが蘇らせることが出来る。
彼は神眼、魅了、治癒と特殊な他者から見れば喉から手が出る程欲しがる能力の持ち主で見た目も稀少種の天使族、整った中性的な顔立ちから幼い頃から他人は勿論、同族にも狙われていた。
彼と出会ったのは私がゲームを初めて間も無くの事でレベル上げと素材集めをしていたダンジョンの宝箱の中で発見した。
罠を警戒しながら開けた宝箱の中に白い羽根が沢山つまっていたので羽根が材料かと思い取り出そうとしたら傷がだらけの子供が出てきた。それがラピスだった。
天使を助けるイベントだと思った私は次のイベントが始まるまで共に経験値を積みなるべく彼が怯えない様にソロのイベントをこなしていった。彼は直ぐにレベルと共に成長し私の背に追い付く頃には自分の身を守れる程成長した。
私といる間、彼を狙う者がいなかったのだがそれは私を良く見ていた前神様が彼に認識阻害の加護を一時的に施していたからだった。
この出会いがなければ彼は捕らわれ利用され討伐イベントの堕天した破壊神として組み込まれる予定に無理やりねじ込まなければならなくなる所だったと聞いた。
それが世界の破滅を加速させるところだったとも聞いた。
その後、彼は私と他の仲間と出会い自分から能力を高め役立ちたいと思うようになってくれた。そして私達にはなくてはならない存在になった彼はとても喜んでいた。




