78、早すぎる別離
ナハトが魔神の欠片の影響を受けて成長してから欠片同士がナハトの意思に関係なく共鳴して欠片の場所に誘われたり、彼を実験に使った闇ギルドがナハトをまた連れ戻すのを考慮して黒には私達から離れる時は必ず秘密裏に側にいるように指示していた。
だから黒は今、隠匿を使いナハトと共にいる。転移しても問題ない。
《黒、聞こえる?》
《はい、聞こえています。》
《ナトは無事?転移した場所は何処かわかる?》
《...魔国バルデナだと思います。今ナハトと共に魔王城の一室に閉じ込められています。部屋の内装が見たことがあるので間違いないと思います。無理な長距離転移の反動で気を失っていますが無事です。》
《そう、城内なら魔王が関わっているのかも、すぐ迎えに行くね。》
《いえ、マスターはラピスの元へ行ってください。ナハトは我が様子をみて助けます。いつでもマスターの所に転移可能ですから暫くナハトと共に探ります。》
《...わかった。必要らナトに私達のことを話してもいいよ。そこには魔神の欠片があるだろうから注意して、ナトの力になってあげて。》
《マスターのお望みのままに。》
心話を切り上げ、心配そうな顔で待つハルルとリゼルに説明する。
「今、ナトは魔国にいる。黒が付いてるから大丈夫だって。暫く様子をみて犯人や情報を集めて貰うつもり。安全は確実だから先にラピスと合流してほしいって。」
「黒が付いていれば安全なのか?」
「黒は強いし、いざとなったら私の元にナトと一緒に転移してこれるよ。」
「リゼル、間違いない。黒は我より強い。」
ハルルのぶっちゃけにリゼルも私も驚いた。
(ちょっと!ハルル!!)
「....黒がハルルより強い....。」
深く考えるようにめを閉じて黙るリゼルに私は慌てる。ハルルはしまった!というように口を押さえたがもう遅い。
はっとした様にリゼルが目を開き何かに納得した。
「フェアリーフォックスは英雄より強いのか!さすがは伝説級?あれ、神獣だったか?伊達じゃないな!」
リゼルは他に疑問を持つことなく納得、感心して終わってしまった。
(リゼ....私を疑わないにも程があるよ。何か心配になってきた。)
私が旅する事情をあれこれ話さなければいけないか、いっそ記憶を消してしまうかと悩んだ時間を返せ。まだ話すにはリゼルのレベルでは早いのだ。
自分が思ってる以上にリゼルとナハトを仲間として大事に思っている。だからこそ彼らのレベルを上げ至高のレシピを集めているのだ。
「明日、朝一番に出発ね。緑の国の冒険者ギルドで地図を手に入れたら煌国に向かいましょ。なるべく早く魔国に入るに越したことはないからね。」
「その、これから会いに行くラピスと言う人はどんな人なんだ?すぐ会えるのか?」
「ラピスは我の親友、無口、天使族だ。」
ハルルの短い簡単な説明ではよくわからないよ。だがリゼルはへぇーと天使族の部分に興味をしめしていただくだった。なので私が補足する。
「ラピスは喋っていても声が小さいから無口に見えるだけだよ。見た目は色白美人だね。男性だから女性扱いすると酷い目に合うから気を付けてね。」
「中性的な男ってことか....もしかして誰か間違えて酷い目にあったのか?」
「赤があった。エルノラが相手にしない時ににラピスに抱きついたら叩きつけて崖から落ちていった。あれは面白かった。何もしなければラピスは優しい。」
「へっ、へぇ。」
リゼルのラピスへの警戒心が上がったようだ。ひきつった笑顔になった。
「じゃあ、おやすみ。明日からはもう少しスピードを上げるから身体強化の魔法で魔力が尽きないようにしっかり寝て回復してね。」
ハルルにラピスへの注意事項を聞き始めたリゼルに特に言い聞かせる。ハルルはレベルが高いので基本値も高い。だから身体強化を使わないのでいいが、リゼルは私達に追い付くには身体強化をずっと使い続ける事になるのでしっかり回復しないと途中で倒れる事になる。
「わかってる。気づいたら迷子になってるのは三回で十分だからな。ナトと一緒に[索敵]しても遠すぎて見つからなくて途方にくれるのはあんまり味わいたくない。」
私も驚いた。一緒に走ったら調節を隣で走ってたハルルに無意識に合わせていてリゼルとナハトを置いてきぼりにしていた。
スキルの[追跡](自分の足跡やパーティーの足跡を見たり、マークした相手の足跡をたどることが出来る。)を使い慌てて探しにいったのだ。
苦笑いしながらリゼル達と別れ寝室へと入り自分の回りに防音と無干渉の結界をはる。
《大丈夫ですか、マスター?》
「大丈夫....じゃなーい!!!ナトが拐われるなんて、自分から行くならまだしもあの子はまだ欠片に呼ばれてないのに!!」
白はずっとピアスから私の心の乱れを感じていたのだろう。たまらず声を掛けてきたようだ。
私は怒っていた。ナトがいつか魔神の欠片に呼ばれるのは分かっていたので黒を付けていたのだから自分から行くのはいいのだ。
かつてナハトの首に着けられていた奴隷の首輪に魔力を押さえられていた、あれにあった。闇ギルドの印に離れていても転移を可能にするマークが付いていた。だからこそあの場ですぐに外したのだ。
だが今回の転移はナハトの魔力をマークしていたようだ。奴隷の首輪を外されている可能性もあるのを見越していたのだろう。
魔力の強い者を長距離から喚ぶのはかなりの魔力消費になるが、向こうには今のナハトより魔力がある者がいると言うことだ。
今のナハトは修行の成果もあり40000程の魔力がある。大帝国アルネストにいたリゼルの兄
で魔術師のクラウネスよりレベルも魔力もかなり上になる。クラウネスは王子とはいえ宮廷魔術師になる程の実力者らしいので世界の基準はクラウネスに近いか、魔力の多い種族でもナハトよりは少ないらしいと前に黒と白に聞いた。
《黒がいるので大丈夫ですよ。魔力も神力も使えるマスターの下僕がいるじゃないですか。》
ピアスから白がくるんと出てきて私の腕の中に降り立つ。首を傾け大きな瞳で見つめキューンと鳴いて可愛らしいアピールをする。だがその瞳の奥は私を気遣う色が見えたので体に[洗浄]の魔法を使い武器、防具を外すとそのまま白を抱き締めてベットへ入った。
《うえっ!マ、マスター!?》
白の狼狽える声を無視してギュット抱き込みまたイライラする心を押さえて夢の中へと入っていった。
《うれしいけど、僕死ぬかも....グエッ。》
白の呟きは結界に阻まれ誰にも拾われることはなかった。




