77、時は金なり
トルネが差し出してきたのは至高のレシピの一つだった。
「珍しいので買ったはいいが、料理人に見せても読めないと言われてな、火の国のリリアちゃんのとこのガルーダも途中までしか読めんというから金庫にしまっておいたんじゃ。」
(トルネさん、リリアちゃんが本当に可愛いんだね...ガルーダの所のリリアちゃんだよ普通は。レシピは料理レベルが足りないと読めないからしょうがないよ。)
至高のレシピは料理マスターに成るために渡したガルーダの試練のレシピとは違う。料理マスターのその上のスキルである[愛の料理人]に至る10種の上位レシピだ。
レシピは料理レベルがレシピレベルに達してさえいれば読みとり作る事はできる。が、実は至高ではない。
料理マスターが作って初めて至高の料理となる。前に貰った至高のショコラもシェフは覚えていることは出来るが料理マスターではないので作っても只の美味しいショコラで至高ではない。
「秘伝のスパイスをピタリと当てておったから、エルノラ殿ならもしやと思っての。」
「ありがとうございます。一番の報酬です。」
レシピを受け取り確認するとレシピが書かれている隣に真の材料と分量が書かれているのが見える。
(これで至高のレシピは所持していたものを合わせて8枚。あと2枚で揃う。)
もうすぐであの計画を実行することが出来る。至高のレシピは10種集める条件で出来ることがあるのだ。
リゼルは何か言いたそうに見ていたがトルネがいるため聞けずにそわそわしている。ナハトと共にハルルを別室へ連れ出していた。
「食事は満足されたかの?たまに抜き打ちで味を確かめに来るんじゃがスパイスの風味が少し落ちている感じがするの。だから客足がのびんのじゃ、もっとスパイスをふんだんに使うように注意しておくかの。」
これ以上カレー味が増えたら大変そうなので客として感想を言っとくか。
「トルネさん同じ味が続くと人は飽きますよ。すべてのメニューに同じスパイスを使うのではなく二つほどに限定して特別感をだしたほうが味も際立ちますし、限定の種類も週か日替わりにすれば飽きもなく客足ものびると思いますよ。」
トルネは素晴らしい考えですな!と早速部屋を出て実行に移すために懐から、こちらは謝礼金です。とお金の入った小袋をカシャンと置いた。
出ていくトルネに伝言ありがとうございましたと伝えるとまた情報が入ったらお伝えしますぞ。と足早に去っていった。
さすが商売人、時は金なり。
トルネが出ていったのを確認してそわそわしていたリゼルが防音魔法を使う。
「エルが料理マスターだってしってるのか?」
リゼルをちらりと見て答える。
「情報収集能力が凄いか、ガルーダルさんから聞いたのかな。私は[料理マスター]じゃなくて[愛の料理人]だけどね。」
「どう違うんだ?」
「[料理マスター]の進化が[愛の料理人]だよ。」
リゼルが目を見張るとハルルがリゼルの肩を優しく叩く。
「エルノラは全てマスター以上。誇れ。」
「僕は魔術師を極める所から始めます!さっそく日課のノルマを、こなしてきます!」
「!知らない土地で一人で行くな。」
ナハトは修行してきますと魔法の訓練に外に走って向かい、ハルルが慌てて追いかけていく。ピアスからも気配が消えたので約束通り黒が密かに付いて行ったようだ。
「ハルルって人見知りの割には面倒見がいいんだな。」
「まあ最悪の場合は避けられる私がいるから安心して構えるんだよ。元々面倒見がいいんだよね本当は。」
顎に手をあてて首を傾ける。
「最悪の場合?...それって.「そうだ!リゼは聖騎士だから極めれば神聖騎士になれるね、目指してみる?」
ぼそっとリゼルが最悪の意味を考える前に話題をすり替えると案の定興味を示した。
「神聖騎士?聖騎士の上があるのか?」
非常に興味があるようだ喰いついてきた。
「あるよ。聖騎士は剣術と防御と癒しの魔法、補助魔法が使えるのは知ってる?」
「ああ、タルナに叩き込まれたから一通りは使える。」
「その一通りは初歩止まりなんだよね。200年前には聖騎士、神聖騎士、神聖騎士王って段階があったの。今は何故か知られていないけどね。ちなみにナトの魔術師は、大魔術師、真魔術師ってなる。」
「エルは何なんだ?賢者の弟子か?」
「皆が呼ぶ賢者はあるけど、弟子はないよ。私は魔剣士だよ。」
「魔剣士?聞いたことがないな。剣士や魔術師はわかるが...。」
町民の兵士たちは剣士が多く狩人や魔術師も騎士団で見たことがあるが私が知っている半分以上の上位職は全く知らないそうだ。
「魔剣士はどうやってなるんだ?」
「初級職の剣士と魔術師を最高値まであげてマスターになって組み合わせれば、条件を満たせた時点で職種が変わるよ。元にも戻せる。」
条件についても色々と教えていく。初級マスターを二つ組み合わせたり、他の組み合わせも可能で有ることを教える。最終的には五つの最上位職種に集約されるがなるべく多くの職種を体験して目指すか、最低限の取得で目指すかでパラメータが変わるのだ。
「魔剣士か、何かかっこいいな。だが神聖騎士を先ず目指してみる。」
リゼルは剣神の加護を持っているからマスターになるのは騎士を上げるのみ防御を伸ばせば苦もなくなれるだろう。
「明日、ハルルに攻撃してもらって防ぐ練習を取り入れようね。」
私の提案にリゼルが遠い目をしながら頷いた。
バタン!!!
「大変だ!!エルノラ!ナハトが拐われた!」
勢いよく扉が開けられ部屋のドアが吹っ飛んだ。飛び込んできたハルルはクールビューティーを捨て慌てふためいている。
「ハルル、落ち着いて。何があったのかちゃんと喋って。」
肩を捕まれ前後に振られながらもハルルを落ちつかせる為に高みにある顔を掴み引き寄せ目を合わせる。さらっとした艶のある髪を無視して米神より後ろから生えている細目の竜角をガシッとつかんだ。
「ヒギィ!......酷い。」
敏感な所を捕まれ涙目になったハルルは恨みがましい目を私に向けてくる。
「落ち着かないと私の首が外れるでしょ!」
ギロッと睨むとハルルは冷や汗をかきながら黙った。
「ナトが拐われたってどういうことだ?」
リゼルがハルルに聞くとハルルはナハトを追いかけ外に出て話しかけようとしたとたんナハトが目の前から消えたらしい。
「本当に急に消えた。魔法が使われたんだと思う。転移の魔法が使われた名残があった。」
ナハトが消えた当たりには転移の魔法の魔力が残っていた。ハルルは当たりを探し索敵で周囲も見たがやはりいなかったらしい。
「かなり遠くに転移したみたいだ。我が探知出来ないほど遠くに転移するなんて現人にはできない。」
竜人の特性の一つである[大地の知人]の効果で探知の範囲が自分のいる国の境界線まで広げることができる。ということは、今いる緑の国以外になる。
自分が転移するなら兎も角、他人を転移させようとするには相手の名前と倍の使用魔力、距離による追加の魔力がいるためレベルの低い今の現人には無理がある。
「確かめる方法はあるから待って。」
私は黒に心話を繋げた。




