68、血濡れのエルフ
メノウがやらかした出来事の中で有名な話を一部を聞かせてもらった。
先にジルダに聞いた話だと、獣王国では三年前にバルバドスが故郷の霊峰へ里帰りした帰り道に氷竜に襲われ瀕死の所を颯爽と現れたメノウが氷竜を魔法で焼き竜に。
バルバドスをお姫様抱っこで獣王国まで送ると、傷を一瞬で癒した後、氷竜の鱗をギルドに提出してまた颯爽と去っていった。
それは大勢の人と国王に目撃され、バルバドスが獣王国でギルドランクをSSSランクにと要請し、氷竜を倒す実力があるならと認定。
国王は治癒力の高さとバルバドスをお姫様抱っこで助け出したのを気に入り調べさせると他国で賢者と呼ばれているとの情報を入手、では獣王国でも賢者として対応するようにとの王命を王国全土に伝令した。
(バルバドスさん、気の毒に。命の恩人だとは思うけど、お姫様抱っこは目立つ為にわざとだと思うよ。先に癒せば歩けるだろうしね。SSSランクだけは国ごとの承認が必要だからバルバドスさんを利用して国の好感度上げるのに丁度良かったんだね...。大の男をお姫様抱っこは無いだろうに...。)
その後、獣王国の街から遠く離れた村等で治療や開拓等を行い危険なモンスターを退治したとの報告が辺境警備隊から連絡があったり、村が襲われないように巨大な動く蔦の塀を造り、近寄るモンスターを勝手に倒してくれているとの感謝の報告もあったらしい。
(...大きくなりすぎて失敗作になった、護衛君二号だな。)
更には一年前にモンスターの氾濫を押さえたハルルを遣わして?くれたお陰で死傷者数が少なかった事もあり更に賢者として獣王国では有名なようだ。
........... 問題は次だった。
共和国では5年程前にふらっと現れ、初めは危険なモンスター退治を優先してギルドランクを上げていた変わり者のエルフ魔法使いの認識だったらしい。短い期間で実力を示しランクがSになった頃、国から声がかかり英雄扱いされ始めると何故か山に籠って出てこなくなった。
一年ほど引きこもり、出てきたと思ったら新ダンジョンを攻略していたらしく、ダンジョンのボスであるタイタンと呼ばれる一つ目めの巨大かつ狂暴な人型SS級(通常、Sランク保持者パーティー複数人で対応可)を一人で倒し、右手にタイタンの首を左手に体を引きずり血を撒き散らしながら街に入った。
それを見た共和国の人達がパニックを起こし、国とギルドが協力して街の人を宥め、清掃した。この出来事は[赤い惨劇の日]と呼ばれ、しばらくの間赤い色が共和国から消えたのだという。今でも余り赤色は好まれないのだとか。
国は街を血濡れにした理由を聞いた所、実力を示して世界中を冒険する為の肩書きが欲しいといわれ、まだ足りないなら後三匹程頭を取って来るといわれ共和国の代表は、もうやめてくれと懇願しながらSSSランクを授けた。
その時についたあだ名が[血濡れのエルフ]。
共和国ではメノウは恐怖の象徴になっているのだとか。
共和国でやらかしたメノウは次に煌国に向かった。煌国にエルフが帰ったと共和国で喜んだ後衝撃の噂が流れた。女神教にドハマリした[血濡れのエルフ]は改心して賢者と呼ばれる様になったと、半信半疑だったが共和国も煌国からメノウを賢者として認知するようにと要請があった為、渋々国として認知した。他にも色々あるらしいのだが自分たちが知っているのはそれ位だと気絶から回復したマニマニから謝られた。
(エルフって一般的には温厚で血生臭さには縁が無い筈なんだけどメノウは特殊だからな~、エルフ族が多い煌国で[血濡れのエルフ]が改心?...シェリーダの顔色が悪くなって困った顔をしたのはこれが一番の原因だな。)
今の話を聞いた感じでは、5年前には目覚めていて共和国でギルドに入りランクを上げて、次に煌国に行き改心?で何故か賢者と呼ばれ始め、二年程はわからないが次に獣王国でもバルバドスを助けてランクと賢者を認定させた。また少し開いたが 一年前に帝国に行き、獣王国に寄ってハルルを起こし、放置して煌国へ向かった辺りで行方不明。
(どちらにしても本人に会えばわかる事だけど、どこにいるかだよね。多分聖樹の様子を見たならあの場所の可能性は高いかな....。)
「エルノラ様は賢者様のお弟子様なのですよね?どのような御方なのですか?」
「メノ....師匠は、一言で済ませるなら研究馬鹿?変態?魔法オタク?」
「いや....、一言じゃないです。」
「本人いないですよね!?私たち血まみれにならないですよね!?」
「全部マトモじゃないですね....。」
ネネタヤからは突っ込みが、マニマニは青い顔でオロオロ見回し、ジルダは理想が壊れたかの様に脱力していた。
「見た目はエルフだから顔立ちは整ってる。魔法の実力は勿論、細剣の使い手でもある。ただ興味の有る無しで態度が180度違うから面倒臭いかな。」
「賢者様を面倒臭いですませられるのはお弟子様だけですよ。」
マニマニから突っ込みがはいった。
「マスター、女が目覚めましたよ。」
今まで私の肩で大人しくしていた黒がピクリと動き教えてくれる。
「そちらの二匹の従魔は喋れるんですね!?」
ジルダがキラキラした目で黒と白を見つめている。
「言葉を操る従魔はかなりの高レベルですよね、さすがは賢者様のお弟子様....。」
マニマニは珍しいのかまじまじと見つめるので黒と白が引きぎみだ。
「マニマニさん!アレーナさんが目覚めたなら早く行くのです。」
ネネタヤが早く早くと、マニマニを急かし背中を押す。ジルダと私も後に続き彼女の元に向かった。
「おや、今呼びに行こうと思っていたところでしたよ。」
白衣を着た山羊獣人の老人が立ち上がりジルダに書類を渡す。
「特に外傷はないようですね、気絶する前の事もちゃんと覚えているようですし、お話も聞ける見たいですね。」
書類に目を通しながら話しかけると山羊獣人の老人は頷き部屋から出ていった。
衝立で仕切られた簡易なベッドに横たわったアレーナの元へまずマニマニが向かいネネタヤも後に続きジルダと私も近づく。
アレーナはゆっくりと体を起こし、まるで別人の様に穏やかな瞳で私を見ていた。




