65、色々重なった結果
地上に降り立ち蔦が完全に塵となり消えていったのを確認する。黒が結界を解除するとシェリーダが駆け寄ってきた。
「聖樹が動き出したのではなく蔦が寄生していただけみたい。」
「おお、エルノラ様、白様、お手数をお掛け致しました。何とお礼を申し上げればよいか...。」
白から降り立ち隣に立つと柔らかな毛並みを撫でる。
「今回は緊急事態につき特別な対応よ。本来は見守るだけなんだけど聖樹に関しては別だもの。それに私の知り合いが原因みたいだしね。」
「今回の原因がエルノラ様のお知り合いとは、彼の事ですか?」
白に首根っこを猫のように咥えられたラピスを見てシェリーダは首をかしげる。
「ラピスも知り合いだけど多分原因はもう一人の知り合いかな。シェリーダは獣王国から賢者メノウが来てないか連絡が来なかった?」
「賢者メノウ殿ですか?そういえば何度か獣騎士団長のバルバドス殿から我が国に一年ほど前から問い合わせが来ていると聞いておりますが、賢者メノウ殿がこちらの国で見かけられた事はありません。ラピス殿のことも今知ったのですがもう少し見張りを強化したいと思います。」
「聖樹の様子を見に行くって煌国に向かって、国に着いたって連絡はあったらしいけど、その後連絡が途絶えて一年たつらしいよ。」
「......連絡があった後、気になったので兵士に調べさせたのですが記録にないとの事でした。賢者メノウ殿は......目立つ方なので入ればすぐ知らせる様にはしてあったのですが...。
」
シェリーダが少し言葉を濁しながら確認はできてないと断言した。
「何?ここでも何かやらかしたの?」
シェリーダの顔色が少し悪くなり困り顔になる。何をやらかしたんだ?本人に問い質すしかないか。
「あ~...女神様を心から信仰しているのは分かるのですが神殿にある白い女神像に全てエルノラ様の色を着色しようとされまして...」
白を肩に乗せていたから私が女神だと気づいたのか、と思ったが女神像を私色にした物があったから気づいたのか。
「もっ、勿論、幸いなことにすぐに気づき一体だけ着色されましたが、女神の間の像だけなので私以外知る者はおりません!」
黙りこんだ私に怒ったと思ったのかシェリーダはエルノラ=女神だとは自分以外知られていないと弁明していた。
「ありがとう、シェリーダ。メノウが迷惑をかけたわね、これからも期待しています。」
シェリーダは片膝をつき、深く頭を下げた。
「マスター、白に咥えられた者が起きたみたいですよ。」
黒がいまだに白に咥えられたままのラピスに近寄って頭に飛び乗り私の肩に着地する。
咥えられたラピスの正面に回り確認するとラピスは目を隠す様に前にかかる白銀の髪を手でゆっくりと払う所だった。
髪が退かされても彼の瞼は開くことはない。
彼は盲目なのだが魔力で眼を覆い見える様にしているため瞼を開かなくても魔力を遮断しない限り目で見る以上によく見えている。
彼は[神聖眼]といって魔力に神力を混ぜた特殊なスキルを持っている。
これは彼の職業、神聖騎士の特殊スキルによる[神聖]が盲目のキャラで習得すると与えられる条件別特殊スキルで見たいものが魔力が続く限り何でも見れる。何でもだ。
ただし条件がある。それは、純粋であること。
もし異性の裸や人のプライバシーに関わる秘密等を自分の意思で見ようとするとシャットアウトされるのだ。
「......................」
何かぼそぼそ聞こえる。
「久しぶりね、ラピス。遅くなってごめんね。」
ちゃんと聞こえている。読み取っているか?彼は声が小さいので聞き取りにくい。恥ずかしい訳ではなくこれが彼の普通なのだ。無口といっても間違いない。
「............。...............、................。」
「そうね。聖樹を癒してくれてありがとう。ただ今回は色々不幸が重なったみたいね。」
コクコクと頷くラピスを見て未だにラピスを咥えていた白が口を離し解放すると元の大きさに戻り黒が乗っている私の肩の反対側へと乗って口を開いた。
「マスター、よく聞こえますね?結局彼に何があったんですか?」
私はラピスから聞いた話を簡単に説明した。
「まず、彼の言葉を聞くときは風の魔法で言葉を拾うこと。彼が知っているのは、目覚めて白に会った後、私が迎えに来るのを待っているついでに弱っていた聖樹を癒そうと一番効果のある接続魔法で癒す事にした。たけどいつの間にかポケットに入っていた護衛君三号が白の神力で覚醒して巨大化、暴れまわり接続魔法が切れなくなってしまったらしいよ。あと他の人には会ってないって。」
「蔦は僕の神力で覚醒したんですか...ラピスを守る為に近付かないように襲ってきたんですか?」
「それもあるけど、ラピスを助けられそうな人を探してもいたんだよ。護衛君三号は殺傷はしないで本来なら拘束するだけの機能なの、でも私達がラピスに殺気もなく近付いたら足場を作ってくれたでしょ?白の神力で少し自我が目覚めたみたいね。」
小さくなった護衛君三号を手のひらにのせるとウネウネと動いている。本体は枯れずにすんだ様だ。
ラピスが手を私にのばす。
「...........?」
「ええ、勿論。」
ラピスに護衛君三号を渡す。ラピスは護衛君三号にお礼を言うとポケットにしまった。
「ということは、メノウ殿は結局関わっていないのですか?」
シェリーダはラピスに話しかけるがラピスは首を傾けただけだ。
「............,...........。」
考えるようにぼそぼそとささやく。
「彼が最後に眠りに付く前にはポケットには何も入ってなかったなら、聖樹の様子を見に来た時にメノウがラピスを探し当てて、護衛君三号を念のために渡したあと聖樹の根を確認しに行ったのかも。だから間接的には関わってる。」
「聖樹の根ですか?」
「ええ、さっきラピスを解放する時に聖樹の様子をみたけど一部の根が切断されていたようなの。自然なものだと思うけど聖樹が弱っていたのはそのせいね。応急処置はしたからもう大丈夫だけど一度切断された場所は見た方がいいわね。場所は共和国ハイクタ周辺ね。」
「なるほど......早速調査いたします。」
「私の方も旅をしながら調査するわ。ラピス、私は今獣王国に仲間がいるの、こちらに向かう予定だから迎えに来るまでシェリーダを手伝ってあげて。」
「..........。」
コクリと頷き立ち上がる。私の側まで来ると
ブワリと今まで無かったラピスの背に純白の翼が現れ私達を包みこむ。
天使族の自由に出し入れできる翼は純白であるほど純粋で大きいほど力が強い。翼で相手を包み込むのは親愛の証なのだ。
ちなみに滅多にないが、心底仲の悪い信頼できない相手は翼で攻撃されるのだ。バシンと平手打ちの様に。
その光景を初めて見た時は爆笑してしまったのは言うまでもない。
無言でたたずむラピスが翼で包み込むと思った瞬間、翼が赤を強打し吹き飛んで転がり崖から転がり落ちていった。あの光景は後にも先にも一度きりだった。何故そうなったかはまた次回語ろう。




