64、異変の調査
《白、黒、救助を優先。その後、皇王以外人払いしてから結界を張って待機。》
《《了解》》
白は捕まっていた蔦をスルリと抜け黒の元へ転移すると羽を広げ捜索する。
「黒、いた。三時の方向。」
「そのまま気を反らせておけ。」
黒に言われた通り蔦を上手く挑発しては離れてを繰り返すと蔦が白に集まり捕まっている方の蔦の動きが鈍る。
黒も羽を広げ駆け昇ると素早く捕まった人を蔦から奪い咥え去る。
そのままシェリーダの結界の中に入るのを見届けた白はさらにスピードを上げて蔦を撒くと結界の中に飛びこみ結界を更に強化した。
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トントン
「エル?支度は出来ましたか?」
扉を叩きナハトが声をかけてくる。
「ナト、ちょっと用事が出来たからリゼとハルルと一緒に先にギルドに行って貰える?朝御飯、私はいらないから。」
「えっ!エルが朝御飯をいらないなんて!!大丈夫なんですか?」
朝御飯は大事だけどそんなに驚くなよ...。
「大丈夫、大丈夫。なるべく早く行くから。」
「わかりました、朝食が済んだら二人と一緒にギルドで待ってます。先に地図を貰っておきますね。」
「よろしくね~。」
鏡をアイテムボックスに仕舞いながらドア越しにナハトの足音が遠ざかるのを聞き、誰にも部屋に入れないように結界を張る。
索敵にも人がいるのを確認できるよう幻影魔法を部屋ごとかける。
「よし、準備OK!」
《白、私を連れてって。》
私はまだ煌国に足を踏み入れていない為、直接転移できない。自分の足で転移先を増やすのが楽しみにだったが今回は仕方ない。
《はい。》
白が返事と同時に私の前に現れる。
「マスターの姿で転移されるんですか?」
「女神姿で出たら大変な事になるじゃん。」
基本女神の間にしか降臨しないのには訳がある。色々面倒なのだ、色々と。
「確かに、...久しぶりに拝見したかったです。」
「必要に迫られたらね。」
白が私の肩に乗り転移魔法を発動させる。
目の前にはあんぐりと口を開けたシェリーダがいた。
(そういえば、会うのは初めてだった。)
「初めまして?皇王さま。」
話しかけられてハッとしたシェリーダは自分の痴態を恥じたのか頬をほんのり赤らめ姿勢を正す。
「シェリーダと申します。どうぞシェリーダとお呼びください。女神様であらせられますか?」
丁寧なお辞儀をしながら確信を持った質問を微笑みで返す。
「そうですか、御無事に引き継がれお祝い申し上げます。」
言葉にしなくても肯定と受け取りシェリーダが言祝ぐ。
「私はエルノラ。今はAランク冒険者で白と黒は従魔。」
私と白と黒の自己紹介を簡単にするとシェリーダは「では、そのように」と理解してくれた。
結界の外は蔦が結界を壊そうと頑張っているが結界内は静かなものだ。
「捕らわれていた人は?」
「無事に医療所へ運ばせました。人払いも済んでおります。」
「確かに回りにはいないわね。」
索敵で確かめられる近い範囲に私達以外はいない。
「シェリーダは私の仲間である天使族のラピスを知ってる?」
「...ラピス殿?ですか?天使族は少数なので知っていますが彼等の中にラピスという名の方はおりません。」
「白は会ったんでしょ?聖樹の近くで。」
「はい。聞き取りづらかったですが。」
聞き取りづらいなら本物だ。
「聖樹の近くに...ですか。毎日祈りを捧げに来ていますが見かけておりません。」
思い出すように瞳を閉じ記憶を探っているようだがシェリーダは首を横に振った。
「僕が彼を見たのはボンヤリと聖樹の前に立っていた所でした。マスターが言っていた特徴と一致していたので声をかけました。「女神の守護者か?」と、彼は「そうだ。」と答えたので「女神の元に行くか?」と尋ねたら「知らない人についていけない。」「彼女が来るまでこの場所にいる。」と言ったのでそう伝えると答えその場を後にしました。」
「そう、後は本人に聞きましょうか。」
結界を抜けようとする私を慌ててシェリーダが止める声が聞こえるが気にせず結界の外に足を踏み出す。肩に乗ったままの白が踏み出した直後に襲いかかる蔦を部分結界で弾き防いでくれるので邪魔される事はない。
聖樹に近付くと巨木に巻き付く幅が1メートル程ある蔦が上まで続いているのが見える。それに登り螺旋状に目的地に一歩ずつ近付いていく。途中で下を見ると結界の中で尻尾を左右に揺らしこちらを見上げる黒と口許を手で押さえ青くなりながら不安そうに見上げているシェリーダが見える。
「マスター、蔦の動きが変わりました。」
先程まで進行を防ぐ様に激しく攻撃してきた蔦はウネウネと動き、進む道の幅を広げるように巻き付き始めている。もう少し進めば到着する目的地辺りは何重にも蔦が重なり今私の頭上が屋根のようになっている。そこに漸く到着するとかなり広い足場になっていた。
蔦で出来た広い足場は蔦がまるで意思を持つかのように頑丈に作られ、隙間も段差もない。足場より上の方には蔦は無く、蔦は聖樹の幹へと続き、幹には人が埋まっていた。
白銀のショートソバージュに色白の肌、高い鼻梁と薄い唇は顔の整ったマネキンの様に精巧だ。髪と同じ白銀の長い睫毛は閉じられているので余計にそう感じる。彼は顔と広げた肘から両手以外は全て聖樹に埋まっており、足がある筈の場所から先程まで攻撃して今は足場となった蔦が出現していた。
「.........。」
彼は間違いなく私のサポートキャラの一人である天使族の治癒術師であり神聖騎士のラピスだ。
「[サーチ]」
[名前] ラピス [種族] 天使族
[性別] 男 [年齢]28 レベル250
[職業種] 神聖騎士
[状態] リンク中(聖樹) 継続治癒中
HP 529999/600000 Mp 52910/80000
ラピスは聖樹と繋がって癒していた。
「とりあえず足から蔦が生えてるのは明らかにおかしい状態だからラピスを取りだそうか。」
「マスター、リンクを切らないと廃人になるのでは?」
ワキワキと手を動かしラピスに手を掛けようとした所で白から声がかかる。
「やっぱり?じゃあ先にリンクを切るか。」
自分から接続解除をするなら安全で早いが外部から強制的に切ると最悪、魔力断絶を起こし精神にまで異常を残す事になる。これは魔力が精神と密接な関係が有るからなのだ。暫し悩み、神力を集めて光る指先をラピスの額につける。光はラピスに移り淡く全体が光ると消えていった。神力がラピスの魔力の一時的な身代わりをするので解除可能になる。
「これでよし!」
次にラピスの手を掴み引きずり出す。
すると聖樹にはなんの衝撃も亀裂もなくズズズッとラピスの体が簡単に引きずり出す出されていく。
無事に全て五体満足で抜けた様だがラピスの足には小さな緑の塊が引っ付いていた。
「これって、昔メノウがイベントで作ってた護衛君三号?」
魔王の城へ行った途中でドリアードと呼ばれるモンスターからある体の一部を攻撃すると低確率で落とす[蠢く蔦]をメノウが研究に使いたいとこれまた低確率で親好度が高いと発生するキャライベントの一つ[研究は君の為に!]の研究に使われていた護衛君三号と名付けられた自立型防衛蔦だ。
ひょいと摘まみ上げラピスから引き離す。
あれだけ暴れ攻撃してきた巨大な蔦は聖樹から離され本来の姿に戻ったようだ。
聖樹に巻き付いたままの蔦やこの足場も枯れる様に茶色く変色してきている。
「マスター、僕の背に乗ってください。この男は咥えます。」
白の体が淡く光ると体躯が三メートル程に大きくなる。私がひらりと背に跨がるのを確認するとラピスを咥え茶色から更に黒く炭の様に変色し塵と消えていく蔦の足場から大きく羽を広げ黒達がいる地上へ降り立った。




