59、あの英雄?
ギルドの窓口に戻って出迎えてくれたのはオロオロして顔を青ざめたジルダと仁王立ちで額に青筋を浮かべてアラベスタを睨み付けたバルバドスだった。
「よぉ、バル!殺気出してどうしたんだ?」
片手を上げ軽い感じで殺気を放っているバルバドスを気にも止めずに聞く。
「よぉ、では無い!!何だあの連絡は!!」
火に油を注いだようだ。顔を赤くし激怒している。
「?何か連絡したか?」
全く何の事かわからないといった感じで聞くアラベスタにバルバドスの怒りは頂点を振りきれたようだ。
「貴様はいつも、いつも、いつも!!!誰彼構わず自分の都合で闘いを挑みおって!!我の客人ぞ!!何が「お前の知り合い今から訓練場に連れて行く」だ!!」
今までも同じ事があったのだろうバルバドスがアラベスタにいい加減にしろと捲し立てている。
だがアラベスタはバルバドスから視線をそらし口笛を吹いてやり過ごそうとしていた。
「だってよぉ、お前は全然相手してくれねぇしよぉー、ダルに会いに行くには距離があるし仕事もあるだろぉ~。」
「ムゥ、そっ、そうか。なら、たまに相手してやろう。だから誰彼構わず連れ込むのをやめろ。」
アラベスタに絆されたバルバドスが譲歩する。 ........チョロい。
「申し訳ありません。バルバドス様。父がいつもご迷惑をおかけします。」
バルバドスが落ち着いたのがわかったのかジルダが丁寧に謝罪する。
「そなたも苦労するな....まあいい。ここへ戻ってきたということは終わったのだろう?」
「おう!楽しかったぜ~、思った以上だ。なぁリゼル?」
「はは、ありがとうございます?」
肩を組まれ苦笑いしながら礼?をいう。
「珍しいなお前が一人で満足するなど....」
「エルノラさんとは手合わせをなさらなかったんですかマスター?」
バルバドスとジルダが信じられないといった風にアラベスタに聞く。
「オレよりも強い奴の相手を二回連続は流石にキツイからな~。明日でいいなら相手をしてもらいたいが瞬殺されるかもしれんしな~だが「ちょっと待て!」してくれ....ん?」
アラベスタの言葉を遮りバルバドスが待てをかける。
「アス!お前より誰が強いのだ!?」
バルバドスがアラベスタに問い詰めているのを横目にリゼルとナハトとボソボソ話す。
「バルバドスさんがバルでダルタスさんがダル、何でアラベスタさんはアスなの?」
「多分バル、ダル、アラじゃあ語呂が悪いからじゃないか?」
「アスなら名前にも入ってるしね。」
「じゃあ僕はナハ?」
「ナトでいいんじゃないか?俺はリゼか?
エルノラはエルだな。」
「仲良しみたいでいいね。僕達も。」
「じゃあ私はナト、リゼ、って呼ぶね。」
三人だけで呼ぶ愛称を決めて他の人には今まで通り名乗ると決めた。
そして結局の所、アラベスタがのらりくらりとバルバドスの質問をかわして賢者の弟子だからと落ち着いたのだった。
「ほぉ~、じゃあお前達はこれからあの英雄どのに会いに行くわけだ。」
「英雄って何をやらか....コホン、どのような功績を残されたんですか?」
何をやらかしたのか気になりバルバドスに尋ねると彼は思い出すように目を閉じ語ってくれた。
「ハルル殿がメノウ殿に連れられこの国にいらした後メノウ殿が直ぐに煌国へ向かわれて数日後、大規模なモンスターの氾濫が起こってな。数百年ぶりの氾濫は凄まじく我々も死を覚悟して戦場へ赴いたのだ。」
「あの時は流石のオレも楽しむ所じゃなかったな~。救いだったのはハルル殿が居た事とモンスターのレベルが低かった事だな。」
「ああ、火の国側からではなく水の国側からの氾濫なら.......いや、多分ハルル殿なら大丈夫だろう。」
「どういう事です?」
なぜ水の国からの氾濫ならと言ったのか、なぜ大丈夫なのかナハトには分からなかったらしい。バルバドスに聞くと彼はちゃんと説明してくれた。
「ハルル殿は、モンスターが氾濫しているのを聞き我々が数の多さに苦戦し圧され始めた頃に国の貴族からどうしてもと頼まれて助力に来て下さったんだが、我らを自身より後ろに下がらせてくれと指示されそれが成った後、手に持った得物を凄まじい力で振るった瞬間、モンスターの三分の二が消滅したのだ。その残りも瞬殺でな、あっという間に殲滅してくださったのだ。水の国は魔国に近くモンスターも魔国に近付く程強くなる。そちらからの氾濫なら苦戦を強いられるかと思ったが....ハルル殿は同じ様に苦もなく殲滅されたであろうな。」
「ふわぁ~、凄い!」
「それは凄いな!」
リゼルもナハトも怖がる所か早く会ってみたいと興奮してバルバドスに詰め寄っている。
「それで、功績を遺す為に国からの要請でギルドに加入してなかったハルル殿を特例でSSSランクにしたんだぜ~。」
「まあ元々、賢者メノウ殿が煌国ギルドでSSSランクなのでな友人であるハルル殿も問題なくSSSランクになったのだ。」
SSSランクは国とギルドから認められた世界レベルでの災いが対処可能な人物に与えられる者で一切のあらゆる阻害の免除や経費等の申請を待たずに受ける事ができる。世界に今はこの二人だけで報酬もかなりの金額なるらしい。
(賢者(笑)メノウって色々やらかしてるんじゃなかったっけ?....それにハルルは引きこもってるのにそんな二人がSSSランクで大丈夫か!?)
「でもそれならなぜハルル殿は引きこもっているんですか?お強いんですよね。」
ナハトが不思議に思うのも当たり前だろう。
「ハルル殿は貴族のご令嬢方に狙われたのだ。」
「「ああ....」」
リゼルとナハトがそれで納得したらしい。
「何事も無かったのだが、その後、賢者メノウが迎えに来るまで部屋から出たくないと言われてな、我も恩人のご友人であるハルル殿を竜人のよしみで匿っていたのだが要らぬ噂をたてられ更に引きこもる悪循環で仕舞いには泣き暮らしているのだ。そこにちょうどエルノラ殿の事を聞いたという訳だ。」
「要らぬ噂って何ですか?」
ナハトが子供特有の疑問に思ったら先ず聞いてみるを実行する。
「ブハッ!!」
なぜかアラベスタが盛大に吹き出した。
「....これは誤解だと先ずいっておく。」
「?はい!」
「.....我とハルル殿が.......つが....だと....流れたのだ。」
「???すみません、よく聞こえませんでした。」
「ブホッ!!」
更にアラベスタが吹き出した。顔を真っ赤にして腹を抱えて痙攣している。
「....我とハルル殿が番だと噂が流れたのだ....。」
バルバドスが静かに語ると無言でアラベスタの元に行き未だ痙攣している体を後ろから抱えてコブラツイストをかけた。
「ギブ!悪かった!!ギブ、ギブ~!」
「ふん、次は殺る。」
竜人の力では獣人のアラベスタも流石に死の恐怖を覚えたらしい。青ざめて黙った。
「エル、番って何ですか?」
流石に聞けなかったのか私にこっそり聞いてきた。
「番は運命の相手かな。一般的には伴侶。結婚相手であり恋人を指していて竜人種は必ず番がいて現れるとその人以外見えなくなる位大事な人の事だよ。竜人には自分と同等かそれ以上の種が番になるみたいだね。男性同士は先ず無いけどね。」
「それは悪意がある噂だな。」
「おお!わかってくれるかリゼル殿!」
リゼルがバルバドスの気持ちを汲んだ。
リゼル達兄弟も婚約等を後回しにしていたらそんな噂を流されたらしい。特に長男、次男は常に一緒にいるため信憑性があったとか、だが二人は丁度いいからとそのままにして悪意で流した貴族達を裏から制裁したとか....。
「さあ、早くハルル殿の元に行こう!
我の執務室から出れば噂も消えるだろうからな。」
「こちらの業務はすべて終了しておりますので!またのお越しをお待ちしております。教育もしっかりしておきますので~!」
「今度来るときはエルノラが相手してくれよな~、鍛えとくからよ~!」
パイン親子に手を振られながらギルドを半ば三人引きずられる様にでて馬車に乗り王城へ向かうのだった。




