51、魔神の欠片
「闇ギルド[魔女の宴]は魔女と名乗る三人の女が率いる魔神信仰ギルドじゃ。長女[艶の魔女]レアル、次女[宵の魔女]アルアネシス、[欲の魔女]サジェスタの三姉妹じゃが、血が繋がっている訳ではない義理の姉妹じゃ。最近頻繁に名前を聞くようになったんじゃが誘拐ではなく孤児を売る人身売買じゃった。孤児を引き取り魔神関連の生け贄や実験に使用しているとか...恐らくじゃが今回の誘拐も実験の為かもしれんがのぅ、だが今回の早い救出で捕まるリスクやら色々割りに合わなくなっんじゃろうな、この辺りからは手下もいなくなったようじゃ。」
そして懐からカードを一枚取り出すとこちらに渡してきた。
「さて、賢者様のお弟子さんにお近づきの印として商業ギルド代表から紹介カードを渡したい。商業ギルド加盟店からの割引と情報を求めたときの報酬の割引と顔役との繋ぎ短縮じゃ。」
「おい、いいのかよ!世界中にある商業ギルドの破格の対応じゃねぇか!?」
ぎゃいぎゃいと商人兄弟が喚いているのを気にもせず話続ける。
「エルノラ殿がワシらの力が必要なときに使ってくれればいい。無理強いはせんし、不必要な要求もせん。なに、賢者様の弟子でもあり、これから有能な冒険者に贔屓にしてもらえればワシらにも損はないからの。」
「そっちの目的のほうが納得できるぜ、狸爺...。」
「煩い奴等じゃ、お前達も商人の端くれなら有望な若者に目を付けるのは当たり前じゃろうて。まあ何にせよリリアちゃんが無事に帰ってきたんじゃワシらもまだ飲むかの。では商業ギルドで縁があればまた会おう。」
そういうと商人兄弟を引きずりながら他の商人仲間達のもとへ食事に行ったようだ。
「闇ギルドとは穏やかじゃないね、警備を強化しないといけないじゃないか。ガルーダル明日にでも警邏部から商人達に警備強化の通達がないか確認してきとくれよ。」
「おうよ。...そうだ!宿が満室になってたからエルノラ殿はこの食堂から出て左側にある家を使ってくれていいってさっき伝言を預かってたんだ。」
「ああ、警邏部管理の空き家だね。あそこならいざと言う時の為に寝具もちゃんとしているからね。その子も寝てるみたいだし連れてってやりなよ。」
私の腕の中でうっすらと赤い顔のナハトが寝息をたて始めていた。
「そうですね。ありがたく使わせて貰います。リゼルとマゼルタさんに先に休むと伝えて頂けますか?」
「ああ、勿論だよ。運ぶの手伝わなくていいかい?」
「大丈夫ですよ。軽いですから。」と軽く横抱きに抱え直す。いわゆるお姫様抱っこになる。
「良くみたら可愛い顔をしてるね~、ダークエルフは久しぶりにみるよ。この辺りは獣人以外は余り見ないからね、皆、獣王国にさっさと行っちまうからねぇ。」
軽くナハトの頭を撫でてマーテルさんは先にガルーダルから家の鍵を預かると開けにいってくれた。
「...料理マスターの話を色々と聞きたかったが今日は無理そうだな、残念だがまたの機会に頼むぜ。」
ボリボリと頭を掻きながら残念そうに話す。
「ええ、わかりました。ではお休みなさいガルーダルさん。」
ナハトを抱いたまま隣の家に向かう。
木の扉が空け放れていたのでそのまま入っていくと二階に上がる階段の前にマーテルさんがいた。
「部屋は二階の奥だよ。部屋は二階に三部屋一階に二部屋あるからね。あと、ここには部屋に風呂が併設されているから自由に使っても大丈夫だよ。はい、これがこの家の鍵だよ。」
「ありがとうございます。」
「いいってことさ。朝御飯はこっちで用意しとくから朝鐘が二回の時間以降においで。じゃあね、お休み。」
「お休みなさい。」
―――バタン
マーテルさんの背中を見送り、二階の階段を上った先にある扉が開いている部屋へ入ると、ベッドの毛布が開かれておりそのまま靴を脱がせて中に寝かせるとナハトが身じろいだ。
「...我..魔神..なら.....。」
夢をみているのかうなされるようになり汗をかき始めている。
「あの...共に......」
何かを求める様に手を伸ばしさ迷う手を捕まえ握る。するとナハトの顔が安心するようにほころび力が抜け静かな寝息をたてる。
《マスター、ナハトはまたうなされているのですか?》
《魔神の欠片が影響しているんだね~。》
「シンクロ率が、かなり高いからね...」
ナハトがうなされ始めたのは今回が始めてではない。
ホロネイ山を抜けた辺りから少しづつ始まり闇市の人身売買時の影響でうなされているのではと共に寝起きしていたリゼルが心配していた。
魔神の欠片は恐らく奴隷の首輪にあった[魔女の宴]の紋でわかる通り魔女達によって付与されたのだろう。魔女の元に欠片がいくつあるのかは知らないが。魔神になる為にはそれなりのレベルがいる。欠片を全て集め魔族種のどれかの種族でありレベルが99レベルから可能になるのが条件だ。ただ相性があり欠片を取り入れる順番をシンクロ率を高める順番で付与しないといけないのだ。
魔女達が条件を知らずに色々な種族の子供達へ欠片を付与して試しては魔神に成らないので取り上げた後に素質のない子供を売りに出しているのかも知れない。その中でナハトは拒絶反応が無かったので奴隷の首輪で印を付け様子を見ていたのだろう、首輪には追跡の魔法もかかっていた。その他にも条件を満たすと自意識がなくなり魔女の元に帰還するよう暗示の魔法もかけられていた。
まあ、かなり強固な魔法だからまさか解かれているとは夢にも思ってはいないだろうね。
さて今、ナハトのレベルは36まで上がっている。これから獣王国に行き水の国を抜け魔国に入るまでにはレベル99近くまでいくだろう。というか育てるつもりだ。
その時が来たらナハトは選択しなければいけないかもしれないね。
「魔神の眼の欠片はナハトを受け入れた。他の欠片もそれに引き寄せられる可能性があるかな。黒、もしナハトが私達から離れる場合、私が許可を出すまでナハトに優先で秘密裏に付いて行って。」
《...了解。》
《まあ黒の管轄だしね。》
「ナハトの意思を尊重しましょう。仲間だもんね。」
《《御意》》
ナハトの頭をゆっくりと撫でながら幸せそうに眠る幼い顔をリゼルが来るまで眺めていた。




