48、囮作戦 遭遇
気絶した男達をロープで縛り直していく。
「よし!こんなもんかな?」
パンパンと手を払っていると何か聞こえてくる。
耳を澄ますと、くぐもったような声?が聞こえた。
「この辺りからかな?」
気絶した男達の壁下から聞こえてくるようだ。
「...っ...へ...さい.....」
男達をずらし壁下を見ると床との境目に1センチ四方の穴が空いている。
罠の有無を確かめ、指を入れ引っかけると手前に持ち上がった。 そこには水晶玉が入っておりどうやら小さな隠し収納で他に十字架やら聖水の空瓶が入っている。
「ちょっと!誰かいないの!」
水晶玉から女性の声が聞こえる。
持ち上げ覗いてみると仮面で顔上部を隠し真っ赤な口紅を付けた瑠璃紺色のドリルヘアーの女性が映っていた。
「あら?お嬢ちゃんはどなた?」
「私はエル。貴女は?」
「私はアルアネシス、宵の魔女。[魔女の宴]三姉妹の次女よ。」
堂々と名乗ってきた。やはり魔女が関わっていたのかと演技を続ける。
「エルと言ったかしら?そこに鬼人の男達はいるかしら?」
「いるけど寝てるよ。」
「ね?寝てる?....エルは何故そこにいるの?」
「お手伝い?お酒運んだりとか。」
「何ですって!?商品を勝手に使うなんてお仕置きですわね。獣人騎士が嗅ぎ付けたから早く引き上げろと言ったのに!はぁ...面倒ね、勿体ないけど処分しましょ。」
持っている水晶が妖しく光を帯びていくのを気にせずに、話しかける。
「ねぇ、魔女さんが私たちを拐わせたの?なぜ?」
私の質問にアルアネシスは驚いたのか水晶の怪しい光が消える。恐らく毒魔法を水晶を通して発動させるつもりだったようだが魔力が霧散した。まあ発動してすぐ無効化するつもりでいたのだが...。
「えっ!?売るために決まってるでしょう? ...へぇ~、エルは怖がらないのね。...気に入ったわ!まあ、別に急いでいるわけではないしお姉さまには怒られるかもしれないけど、まだ時間はたっぷりあるもの。今回は見逃してあげるわ。じゃあね猫のお嬢ちゃん、また会えるといいわね。フフフッ」
ピシッ ピシッ パキッ サララッ...
水晶玉は魔女が写らなくなると同時にヒビ割れ粉々になって持っていた手からこぼれ落ちていった。
「宵の魔女アルアネシスか...」
イベントで魔女は出てくるが全て同じ魔女が関わっており姉妹ではなかったはずだがやはり完全にゲーム時とは違うのか。
そもそも一度ゲームでクリアしたイベントだから同じにはならないか...まぁ考えても仕方ないか。
「黒、聞こえる?」
《はい、聞こえます。》
「片付いたから突入して5分後にね。」
《わかりました。》
突入して来る前に白の元に戻ると結界を解除させカノンの元に行くと抱き上げリリアがいる牢に運ぶ。
「...ウ~ン...ムニャ...ママ~。」
カノンの犬耳が下がり胸元に頬擦りしている。うっすらと目尻に涙があった。
そっとリリアの横に寝かせると優しく涙を拭き取り頭を撫でる。
「マスター」
白がトテトテとこちらに近寄り大きく潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。
「?」
ポスポスと前足で自分の頭を撫でているのだろうが届かず額を叩いているようにしか見えない。
「小突けってこと?」
「マスタ~違いますよ~、ナデナデ!飴と鞭は大事ですよ!」
「...」
今は獣魔化してるが大の男がナデナデとか、しかも鞭も容認か。
「[雷撃(小)]。」
パリパリパリ
白に静電気のような魔法が走る。
「ギニャ~!?」
雷撃を放ったのは私ではない。
「し~ろ~...なにうらや...ましいことをマスターに要求してる!?」
ワアアア...........
男達はがいる部屋から沢山の足音と話し声が聞こえときた。
雷撃を放ったのは黒だった。白に飛びかかりながら離れてるあいだに~ズルい!などといってじゃれあっている(そんなかわいいものではない)。
二匹の首根っこをガッシリと掴みブラーンと吊るし離す。そのまま抱き止め頭を撫でてやる。フワフワの頭から耳まで痛くないようにそぉっと撫でる。
「いつも頑張ってるからご褒美ね。」
獣魔化している間も常に担当の地域に意識を向けている白と黒を労うのはやぶさかではない。
バタバタバタ--
「「エルノラ!!」」
リゼルとナハトが牢屋に飛び込んできた。
「うにゃん、マスターの事はお前たちが心配する必要は無い。我らが常に最優先で見ているフニャ~。」
撫でられながら猫のようにフニャけた声をだしながら私をあちこち無事か確めるリゼルとナハトに黒が声をかける。
クスクス
「エル、お迎えが来てくれてよかったね!」
リリアが起き上がり自分の事のように喜んでくれている。
さて捕縛も終わったようだしエルの出番も終わりにしよう。
「リリア、貴方にもお迎えが来てるよ。」
「えっ?」
実は捕縛する警邏部と共にガルーダルさんも来ているのだ。ただし勝手に乗り込まない、指示に従うことを条件に。
「あと、私の本当の名前はエルノラ。誘拐犯を捕まえる為に囮になったの。冒険者だよ。」
「!?で、でも、私と同じくらいの歳...」
リリアは今の姿が冒険者になるには早い見た目なので驚いているのだろう。冒険者は成人してから冒険者として名乗れる、それまではどれだけランクをあげようと見習いをつけなければいけないらしい。もしSランク冒険者見習いがいたらちょっと悲しい事になりそうだ。まず無いらしいけど...。
自分にかけた幻影魔法を解く。
淡い光を放ちながら猫耳は消え淡藤色のポニーテール、シルバーハーフプレートの胸当てに黒のパンツ、シルバーブーツの装いが現れる。腰に愛剣を差すと完成だ。
「まぁ、お姉さまだったんですね!」
目をキラキラさせながら恍惚としている。
「騙していてごめんね、も「リリアー!!!どこだー!!!」」
私の声を遮りガルーダルさんがリリアを呼び掛けながら飛び込んできた。
「リリア!ここにいたか、無事だな!変なことされてないか?」
「うん、大丈夫だよ。閉じ込められてただけだから。」
「今日、助ける事が出来てよかったよ。明日じゃ間に合わなかったかもしれない。」
苦笑いしながらリリアとガルーダルさんを見る。
「実は、く「カノン~!!!どこだ~!!!カノン!」」
またもや私が話してる途中に割り込まれる。
来たのは明るい茶色の髪に一房白が混じった短髪の犬耳が付いたライトグリーンの騎士服を着た青年が走り込んできた。
「う~ん...ふぁ~、マゼルタ兄上さま?」
まだぐっすり眠っていたカノンがムクッと起き上がり騎士服の犬耳青年を見て瞳を潤ます。
「ああ!カノン無事で良かった!遅くなってすまない!!」
カバッと勢いよく抱きしめられとうとうカノンの瞳から涙が溢れた。
「僕、ボク...泣かなかったんですよ。グスッ、兄上のような、立派なヒック、騎士になるから...ふぇ...」
涙を押し付けるようにグリグリと青年犬耳騎士の胸にすり寄る。
「ああ、お前は立派だよ。」
頭をポンポンと撫で落ち着いた辺りでこちらに気づいたらしい青年がハッとした。




