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Good luck in my world  作者: エンリ
第ニ章 火の国ランバ~獣王国ゼノン
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46、囮作戦 開始

日が傾き露店が閉店の準備を始める時間。

もうすぐ閉店だからと安く買えた果物や野菜を篭に詰めて、真っ白いふわふわの猫耳をピコピコと長い尻尾を嬉しそうにゆらゆら揺らし可愛らしい成人前の幼さの残る顔立ちは店の人がついついおまけをしてしまうほどの美少女だ。

「お嬢ちゃん、最近は物騒だから早く帰るんだぞ。ほら店じまいにキノコをやるから家で沢山食べな。」


野菜売りの狐耳のおじさんにキノコを沢山貰いながら、少女は笑顔でお礼をいう。


「美味しそうなキノコありがとう、おじさま!暗くなる前に帰ります。」


キノコを篭に入れ手を振って別れると先程より少し明かりが落ちたようだ。

今の時期は日が暮れるのが早く暗くなりやすい。


「急いで帰らないと...。」


家に帰る途中、大通りから外れた中道を通るのだが人が極端に少なくなりしばらくすると歩いているのは少女と前から歩いて来る旅人の外套を纏った体格的に男性らしき人だけだった。らしきというのは頭からフードをかぶり顔は見えないためだ。


少女は旅人と反対側の道を距離を取るように歩き自宅へと足を早めた。


「お嬢さん。」


後ろから呼ばれつい反射で振り返る。


「えっ...」


少女を呼び止めたのは道の反対側を歩いていたはずのフードをスッポリ頭から被ったやはり顔の見えない旅人だった。いつの間にか少女の後ろにいて呼び止めた旅人に不安と恐怖を感じ猫耳が伏せられ尻尾は警戒を現すようにボワッと膨らませつつピンッと立つ。


「一緒においで。」


旅人の声はくぐもった男の声だった。フードの下の顔は口元が深く外套で覆われていてわからない。外套から出した男の右手には魔石を持ち左手には小瓶を持っていた、それに気づいた時には遅く小瓶に入っていた液体を胸元にかけられる。

液体をかけられた辺りからフワッと山に生息する眠り花の香りがしたのを最後に少女の意識は重い瞼と共に閉じられた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ユサユサ ユサユサ


「んっ....。」


誰かに身体を優しく揺さぶられているのを重い頭で感じる。ゆっくりと瞼を開くと心配そうに見つめる瞳があった。


「静かにね、良かった気がついて。」


口にシィーと人差し指を当てた熊の獣人の少女がいた。ゆっくりと身体を起こすのを手伝って貰いながら辺りを見回す。


「私はリリアっていうの。あなたは?」


「わた...しはエル。」


喉が掠れ声が出にくい。


「眠りの花のエキスをかけられたのね、これを飲んで。大丈夫ただの水だよ。」


木の器に入った水を受け取りコクンと飲み込むと喉が少し楽になった。


「ありがとう、リリア。ここは?変な人に拐われたの?」


「ここはどこかわからないの、ただ古い建物で、長く使われていなかったみたい。私も最近拐われて来たの。牢に閉じ込められてるんだけど両隣にも牢があって右側にはカノンて名前の犬獣人の男の子がいるわ。左には明日、目をつけていた兎獣人の女の子を連れて来るから世話をしろって言われてるの。」


「...拐ってるのは一人なの?」


「いいえ、男が二人よ。一人は水晶に向かって何かを喋っていて、指示を受けてるみたいだった。もう一人は指示を受けた男の仲間で魔石を渡されてたわ。そいつに拐われたの。」


「多分私もそいつに拐われたんだと思う。水晶で指示出してる人が私たちを拐った黒幕かな?」


「多分そう...かな?エルは猫獣人なんだね。今頃お父さん暴れてないといいな~、私は熊獣人なんだけどお父さんが暴れると机や椅子をすぐ壊すからお母さんが怒って怖いんだよね。」


「心配してるよね、きっと今頃助けに来てるはずだよ。」


リリアはそうだね!とお父さんを信頼しているようだ。


「リリアお姉ちゃん、他に誰かいるの?」


幼い声が隣の壁からかけられる。リリアはエルを手招きして右の牢屋に隣接する壁に近付く。とそこには拳大の石が納められた穴がありリリアがゆっくりと石を退かす。


どかした穴の先には茶色犬耳の幼い少年がキョトンとした顔でこちらを見つめていた。


「こんにちは、あれ?こんばんわかな?僕カノン。お姉ちゃんはだぁれ?」


「私はエル。よろしくね、カノン君も拐われたんだね。どこで拐われたかわかるかな?」


「うん、わかるよ!ゼノインの宝石屋さん!」


キラキラした石が一杯あったんだよと元気良くこたえてくれた。


「ゼノインって獣王国ゼノンの首都じゃない!?結構離れてるわね...。」


しかも宝石屋さんは王家御用達の一軒だけだからもしかしてカノンはお坊ちゃん!?とリリアが一人で百面相している。


「カノンは泣かないで偉いね。」


私たちよりも更に幼く見えるカノンはまだ六歳らしいがしっかりしている。普通なら泣いて甘えても許される歳だ。


「僕は騎士を目指してるんです。兄上みたいにかっこ良くなるんです。だから泣いたりしないんです。」


カノンは犬耳をピンとたてて慌てて口を閉じる。

「あいつらが帰ってきました。」


カノンが誘拐犯達がこちらに来ていると教えてくれたのでリリアが慌てて石をもとの場所に戻す。



外套を着た二人の男が牢屋を訪れた。


「目覚めたようだな猫のお嬢ちゃん。」


「...........」


「熊のお嬢ちゃん、明日水の国から新しい子を連れてくるから猫のお嬢ちゃんの様に介抱してやるんだ。何もできないだろうが大人しくしてろよ。」


「...わかったわ。」


「俺たちはすぐ隣の部屋で寝ているから、何かしようとしてもすぐ分かるからな。朝飯まで静かにしていろよ。明後日には別のいい場所に連れてってやるからな。ハハッ。」


男達は外套で顔は見えないが仕事が順調に進みご機嫌なのだろう笑いながら隣に消えていった。


「不味いわね、早く父さん来てくれないかしら。」


リリアの声が不安に揺れる。


リリアとエルは二人で互いを慰める様に置いてあった薄い毛布にくるまり共に横になった。

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