43、伝言は....
大きな茶色の三階建ての建物に三メートルはありそうな大きな獅子と鷹の紋が入った旗が屋上から壁にかけられている。大きな獅子は獣王国の紋、鷹は火の国の紋で一緒に紋が入っているのは友好の証と共同施設の意味がある。入り口をくぐると、中はガヤガヤ同じような青い服を着た獣人達が行き交い騒がしかった。
中央にギルドのような受付があり二人の厳つい獣人男性が同じ青い服の上から警邏部の紋がついた軽装鎧を着込み立っている。
回りに行き交う人もそうだが皆様々な動物の耳が頭に付いておりヒューマンは今の所見当たらない。
真っ直ぐに進み受付の男性に声をかけた。彼は豹の耳をしている。
「警邏部へようこそ、お嬢さん。何か御用ですか?」
豹耳の厳つい男性は優しい声で訪ねてくる。怖がらせないようにだろうか、素晴らしい気遣いだ。
「ここにガルーダルさんが来ていませんか?」
「ガルーダルですか?確か娘さんが拐われたので犯人を手がかりを探すために魔術師の部署室にいます。二階の奥の部屋です。」
「わかりました。訪ねて行っても問題ないですか?」
「はい、先触れは今出しましたので大丈夫です。」
「ありがとうございました。」
受付から階段を見つけ二階に上がり奥の部屋へとむかう。魔術部署室と書いてある扉の前に来るとリゼルが先導し扉に手をかけて止まった。
「何か騒がしいな、俺が先に入るからエルノラとナハトは後ろにいてくれ。」
扉の向こうからはギャーとかウワァーとかコノヤローとか色々な声が聞こえている。
「...........」
ガチャ キィィィ
ノブを回して一人分程扉を開く。とヒュンと風を切り分厚い本が飛んできたがリゼルがキャッチする。
完全に開き中に入るとそこはあらゆる物が乱れ散乱しひどい有り様だった。気になるのはその中に人がまばらに倒れている事か...。
異様な光景のなかで部屋の真ん中に長いローブを来た角の生えた男性と食堂でみた熊耳大男がガッチリと手を組んでギリギリと拮抗していた。
「「「....」」」
《倒れている者達は飛んできた物による気絶ですね。》
黒がいつの間にか私の肩から降りて倒れている人達の様子を白と共に確認していた。
《回復魔法かけます?放置します?》
前肢で倒れている人の顔をチョンチョンと白がつつきながら確認してくる。
「今はまだ危ないから寝かせとけばいいよ。怪我してる人は治してあげて。」
《はい!わかりました。》
「そこのお二人さん、そろそろ落ち着こうか[バインド]。」
拘束魔法をかけて二人一緒に拘束する。
「何をする!!」
「離せ!!」
「....[サイレンス]」
二人して喚きたてるので落ち着くまで口も閉じさせる。口はパクパクしているが出る音はないので無音だ。
私はマーテルさんから預かった伝言の書かれた紙を熊耳の大男にみせる。スンッと鼻を吸ったあとこちらに目を向けた。
「ガルーダルさんですよね?私はエルノラと言います。こっちはリゼルでこっちはナハト。この二匹は私の従魔です。リリアちゃんを助ける為に来た冒険者です。」
とりあえず自己紹介をしておく。ガルーダルは驚いた顔をしたあと口をパクパクして何かを言ってるが言葉にはならなかった。
角が生えてるローブの男性も喉に手を当ててパクパクしている。魔力の流れから自分で解除しようとしているのかも知れないが無駄だ。
二人は大人しくなり落ち着いたようなのでそろそろいいか。
「暴れたらダメですよ、魔法を解きますね。[解呪]。」
発動していた[バインド]と[サイレンス]が解呪された。ガルーダルはゴホンと確認すると伝言を受けとる。
「マーテルからの伝言を読むからまってくれ。」
カサリと紙を開き目で文を追っている。とだんだん顔色が悪くなり汗をかきはじめた。
「でっ、..伝言は確かにマーテルのものだった。俺はガルーダル。あんた達が協力してくれるのはありがたい、一人でも多く人手が欲しい所だったんだ。」
紙を懐にしまうと顔色が元に戻り汗も引いていた。何が書かれてたのか気になるが触れないでおこう。
「大まかな事は聞きましたが、リリアちゃんの転移先はわかりましたか?」
私の言葉にはガルーダルは思い出したかのように魔術師に振り向く。
「そうだ!辿れないってどういう事だ!魔法の痕跡を辿るだけだろう!」
またガルーダルが魔術師に掴みかかろうとするのでバインドをかけようとしたらリゼルに止められそのままガルーダルを羽交締めでおさえつけた。
「はいはい、落ち着いてまず話を聞きましょうね。」
リゼルは言い聞かせるように優しく言ってるが締め付けはかなりきつい。
獣人の力はヒューマンより獣に近いので強い。熊獣人だと力は獣人の中でも一、二を争う強さだ。それを押さえつけられるリゼルにガルーダルは驚きを隠せなかった。
「あっ、あんた....俺を押さえるなんてヒューマンに見えるが獣人か!?」
「?ヒューマンだが?」
何をいってるんだ?という顔をしているのをみてまたガルーダルはショックを受けているがハッと気づいて問いかけた。
「こいつと同じように魔力を纏って強化してるんだな!」
半分正解です。強化プラスガルーダルとリゼルのレベル差です。
「馬鹿をいうな!強化魔法を使ってやっと何とか拮抗して、それでも腕が痺れる程なのに、明らかに魔術師では無いばかりか剣士にそこまでの強化魔法が使える筈がないだろう!」
今まで黙っていた魔術師が本職ではない剣士(正確には聖騎士だけど)に十八番である魔力操作で負ける筈がないと言いたいらしい。
「どうせその子供か魔法を使っているのだろう!」
明らかに魔術師の格好をしているナハトを指さしている。
「??僕は何もしていませんよ?」
「魔術師さん、私達も暇じゃないの。リリアちゃんが拐われた時に落ちてた魔石を貸して下さい。」
私が魔術師に手を差し出すと渋々懐から出し渡してくれた。
「言っとくが、魔力はたどれなかったぞ。何度か試したが途中で切れているから辿れんのだ。」
頭をガシガシと掻いてお手上げだといった。
「ナハト、おいで。これに手をかざして魔力を流して見て、少しずつね。」
私に呼ばれナハトは素直に私の手に乗っている魔石に少しずつ魔力を流し始めた。




