42、スパイス下さい。
[拐われた子供たち]のイベントが完全に始まるのは獣人の国(獣王国)に入ってからだが、イベントの詳細がゲームの時のままなら始めに拐われ始めたのは獣人の国の周辺国が最初だ。
ということは、それに当たるのは火の国と水の国。必ず獣人が狙われ、あちこちで起こった行方不明にギルドが積極的に介入して解決を目指し最も被害が多くなる獣王国のギルドが火の国と水の国と協力して中心となりギルド依頼をだす。ということになる。
獣人は強靭な肉体と精神をもつが小さい頃は未熟で半獣姿の為、か弱く見た目も愛らしいので犯罪に巻き込まれやすい。親がまず目を離さないし警邏部と呼ばれる獣人で結成された鼻の利く集まりが国に雇われているから子供たちは充分守られている。
なので、まず普通に浚うのは無理なことなのだが裏には魔女が絡んでおり犯人の尻尾を掴めず、匂いも辿れない為、困ったギルドは人海戦術で解決しようと考え冒険者たちに依頼する。詳細内容はこんな感じだった。
「リリアちゃんはもうすぐ成人なんだが熊の獣人にしては小さめで見た目も幼く可愛らしいからな、無事だといいが...。そうだ!あんた達は冒険者だろ?」
「はい、そうですけど。」
いきなり常連さんらしき人が私の肩をガシッと掴み尋ねてきたので肯定する。
「よかったらリリアちゃんを探すのを手伝ってやってくれよ!」
それを聞いた他の客たちも私達にお願いしてきた。
「俺達からも頼む!ギルドに依頼だしてみんなで報酬金を払うからさ!もちろん皆で協力して情報をだすし商品も安くしとくから!」
彼らは食堂の常連さんだけの人たちではなく商人連合の組合員らしい。独自のネットワークや商品の流通等を網羅している為味方にすれば美味しいですよ。と黒が囁いた。
「私からもお願いします。」
若い男性の声が聞こえ振り向くと女将さんにテルサと呼ばれた調理場の男性がいた。
「私はテルサディオと言います。リリアは大事な妹なんです!いきなりで無礼なのは重々承知の上です!どうか妹探しを手伝って下さい!」
ガバッと勢いよく頭を下げられた。
「何を勝手に余所様を巻き込もうとしてるんだい!」
勢いよく飛び込みテルサを叱りつけたのは女将さんだった。
「すまないね、こっちの事情だから気にしないでおくれ。」
「母さん!!リリアが心配じゃないのか!?」
「心配さ!だが冒険者には順序と契約があるんだ。情に訴えるのはちゃんと今の状況を把握してからだよ。冒険者達は命がけなんだからね!」
女将さんの正論に黙って悔しそうにしているテルサだが言い返すことなく調理場に戻っていった。
「マーテル!リリアちゃんが拐われたの本当だったのか?ガルーダルは?」
「拐われたのは本当さ、大通りの商人が見てたらしい。リリアに話しかける奴がいて何かを取り出したら、それがピカッと光って、話しかけた奴とリリアが一瞬で消えたと証言した。その消えた場所には魔石が落ちていて調べたら転移の魔法が込められていたらしい。今ガルーダルは魔石を調べてくれた魔術師の所で転移先を調べている最中さ。」
女将さんがふぅと疲れたようにため息をつき食堂の椅子に腰かけた。
「まだ何もわからないって事だな...よし!こうしちゃいらんねぇ!皆で他に似たような事件のがないか調べるぞ!」
「「「「「おおうっ!!!」」」」」
ぞろぞろと食堂からでて情報を集めに行った人達が、出ていき静かになった所で女将さんに話しかけた。
「リリアちゃんを無事に連れ帰れたら美味しかった絶妙なスパイスのレシピを個人用に報酬として教えていただけませんか?」
「えっ?」
「勿論、他に勝手に教えたりしません。」
「それは構わないが...あんた達は依頼を出したら確実に受けてくれるってことかい?」
私はリゼルとナハトを見て、受けたい意思を伝えると二人は笑顔でコクンと頷いた。
「はい。全力を尽くします。」
私の言葉に女将さんがありがとうよろしく頼むよ。と言って旦那さんがいる場所を教えてくれた。
「私はマーテルっていうんだ。娘はリリア、旦那はガルーダル。旦那はまだ魔術師の所にいるんだ詳しい話は旦那がしてくれるよ。これを渡してとマーテルに言われた。と言えば教えてくれるから頼んだよ。ここを真っ直ぐに歩いた突き当たりを右に曲がった先に獅子と鷹の紋が入った旗が飾ってある建物がある。その警邏部の建物にいるからガルーダルは何処だと聞いとくれ。」
警邏部にいって旦那さんを呼び、マーテルさんからの伝言を渡す。
「わかりました。」
「ギルドには依頼を出しておくからね。報酬金とは別の追加報酬でスパイスのレシピを用意しとおくよ。...ありがとう。」
親が心配しないわけがない。目尻にうっすらと見えたものは救出が成功したら流して貰おう。




