30、デザートには勝てない
「おや、お帰りお嬢ちゃん。」
[日だまり宿]の女将さんが出迎えてくれた。
「連れが増えてるね、二人部屋をとるかい?」
女将さんがリゼルとナハトをみて部屋をすすめてくる。
「エルノラ、明後日出発するんだよな?」
リゼルが私に聞いてくるのでその予定だとこたえる。
「女将さん、彼女の宿代は今日、明日使ったらあと3日分だろ?」
「7日分貰ってるからね。そうだよ。」
「明後日の朝には出るから余った分を俺達の部屋に回してくれないか?足りない分はこれで...足りるかな?」
「お嬢ちゃんが構わないならうちは大丈夫だよ。」
「はい。お願いします。」
わかったよ、といって女将さんが足りない分のグルーを受け取りリゼル達の部屋の鍵を渡す。
「晩御飯はもう食堂で食べれるよ。良いモーニクが入ったから食べてっておくれ。」
モーニクとは牛肉みたいな物だろう。見た目は白い牛だった。
エルフ族は肉を食べないと種族説明にあったがゲーム時代の私のサポートキャラは平然と食べていた。ダークエルフはどうなんだろう?
種族説明ではエルフ族の変異種らしいが...
「ナハトはお肉食べられる?」
「はい。」
何で聞かれたんだろう。みたいに首をコテンとたおす。
「エルフ族は食べない者が多いからな、ダークエルフ族は何でも食べれると思うぞ。好き嫌いはあるだろうけどね。」
リゼルが席に着き皆、お薦めでいいか?と聞いてきたので二人で頷くと注文をしてくれた。
ほどなくしてテーブルに置かれた熱々の鉄板に置かれたモーニクの厚切りステーキがジュ、ジュ~と肉汁が蒸発して良い音と香ばしい匂いを漂わせる。付け合わせの砂糖で甘く煮たキャロットとバターポテトが鉄板だ。
前回シチューの時のパンとは違い丸い木の実が入った少し固めのパンが皿に置かれる。
更にコーンの粒が入ったトロミあるスープが美味しそうだ。
「「いただきます。」」
私とリゼルが手を合わせて食べようとすると
ナハトが合わせた手をまじまじと見てきた。
「食事の前の挨拶だよ。終わったら[ごちそうさまでした]って言うの手をあわせてね。」
この世界アダメルシアは現実世界の影響を受けているので挨拶、言語等は統一しているので他国に行っても皆通じるのだ。ただナハトは分からなかったらしい。
ナハトは手を合わせて、「いただきます。」といって食べ始めた。
フォークとナイフを操り口に入れて咀嚼する。口の中に肉の旨味と程好い脂が合わさり至福の時を感じる。
カチャカチャ
ナハトはフォークとナイフが使いづらいようで四苦八苦していた。
ナイフとフォークを置きナハトの後ろに回り込みナハトの手に自分の手を添えて切ってやる。
一通り切ると自分の席につきまた食事を始める。横目でナハトを見るとフォークに肉を刺し
口に運び咀嚼すると手をほっぺたにあて、
「美味しい!」と喜んでいた。
かわいい。
「エルノラ、はいあーん。」
リゼルがパンをちぎり私の口元に持ってくる。
それがあまりに自然だったのでつい口の中に入れてしまった。
むぐむぐ、旨い。小麦の香りと木の実が芳ばしく口の中の脂を取ってくれる。
......じゃない!!
「なっ!一人で...むぐっ。」
更にリゼルにもう一口入れられる。
「おいしいか?女将さんがデザートにシャーベットをくれたぞ食べるだろ?早く食べないと溶けるぞ。」
それはいけない!
味わいつつ早めに食べ、スープを飲んで一息つく。いつの間にかナハトは食べ終わりシャーベットに舌鼓をうっていた。大人の量をペロリと食べきったようだ。
「ほら、シャーベット。」
ニコニコしたリゼルが私の前にシャーベットを置く。リゼルは先に食べ終わっていた。
「ありがとう。」
シャーベットを口にいれると甘酸っぱい柑橘類の味して口の中をサッパリさせた。
「エルノラって単純?」
「かわいいだろ?」
ナハトとリゼルの二人の内緒話は私の耳にはとどかなかった。
「「「ごちそうさまでした。」」」
「良い食べっぷりだったね、旦那が作りがいがあるって言ってたよ!明日も楽しみにしてな。」
「はい!楽しみにしてます。」
旦那さんの料理の腕は最高です。
リゼルが眠そうなナハトを抱え、部屋に先に行くからまた朝に声をかける。と言って部屋に行くのを見送り私も部屋にもどる。
部屋に入ると洗浄魔法を使い綺麗にするとベッドに腰をおろす。とその時、右耳から白からの連絡が入った。




