27、流された私と晴れやかな笑顔
目覚めた眠り姫、ハルネーゼ姫は呪いにかかる前の記憶がなかった。部屋に入ったまでの記憶はあるのだがそのあと何をしていたとか手に何かをとったとか誰かを見かけた等はないとのこと。
「貴方の指にはまっている指輪に見覚えは?」
「えっ....!あら?この指輪いつの間にはめたのかしら?」
右手の薬指に填まっている金色の台座には赤い小さな宝石が回りに填まっているだけで真ん中に在ったであろう宝石がは無く爪留めだけになっていた。
「とても....気になる物を部屋に持ってきたような....部屋に行く前も何だかボンヤリしていますわ....。」
イベントでは魔女の仕業だったが決めつけるにはまだ早いだろう。魔女関連のイベントは1つではないのでこれからまた起こるとすれば確証は得られるが今回は難しいだろう。
「....そうですか。その指輪は念のために預かっても宜しいですか?」
「ええ、私も持っているのは恐ろしいので。エルノラ様がお預かりして頂けるのならお願い致します。お父様とお母様もよろしいですわよね。」
ハルネーゼが指輪を外し王様と王妃様をみる。二人は軽く頷き指輪をハルネーゼから受け取り私の手へと渡す。
[呪いのかかった指輪]
眠りの呪いがかかった指輪。宝石に魔力を込めて造られた特殊なもの。填めることで呪いが発動する、発動した後呪いが込められた宝石は消滅する。 イベントのみ入手可能。 アルネイラの花で解呪。 [補助魔法]誘惑(中)効果切れ
受け取った指輪はアイテムボックスの[大事なもの]にしまった。
「エルノラ殿、ハルネーゼにもう害は無いのだろうか?」
「断定はできません。あまりにも情報が少ないですから。ですので王家の方々にはこれを差し上げます。」
私はアイテムボックスの鞄から小さな魔石を七個取り出した。
「この魔石には異常状態無効が込められています。これを身につけていれば特殊な場合を除いて回避できるでしょう。今回はおそらく指輪自体に誘惑の魔法が込められていた様ですから防止にはなるかと思います。」
魔石を王様に渡すと王様の手が震えていた。
「こ、このような!?....ありがたいがこの魔石を買うような私財が....」
どうやら売りつけると思われているのか顔色が青ざめている。
「しかも七つとは、一つでも国の三分の一の税収に匹敵するというのに....だが異常状態無効という効果など国としては凄く貴重過ぎるし欲しい!!」
(まじか....)
ゲームの時でもまあ貴重な方だったが廃課金プレイヤーは自分で量産して売ってたからな~。
私のアイテムボックスにも沢山入ってるし異常状態無効といっても特殊な異常は回避できない。
「あ~....ではお貸しします。お金はいらないのでアルネスト大陸を自由に歩ける権利をください。」
「なに!?エルノラ殿!この国が欲しいとか、王太子の嫁にとかではなくか?」
「いやいや!いりません!!」
国は貰っても困るし!王太子の嫁とか無理だし!心のなかで盛大に突っ込む。
「状態異常無効といっても毒、眠り、沈黙、誘惑、等の基本的なものだけですから。」
リゼルが私の肩にポンッと手をのせる。私がリゼルを振り返ると首を横に振り、
「充分凄いよ。通常は一つの効果で10%から50%防ぐのがやっとだから。各国で攻略をしている遺跡からも今の所それ以上は発見されていないし作れる魔石職人もいない。200年前には沢山いたらしいが今は魔国に一人いるとかいないとかの噂ぐらいだ。」
「まじか....」
思わず口からぽつりと出てしまった。
「父上、私にエルノラの護衛を命じてください。あと...........」
リゼルは王様に自分の王籍を抜くように願っている。
それは私を守る過程で死に至る可能性や自分の行動で国に害が振りかかる原因にならないようにするためだ。
「ちょっと待ってよ、リゼル!?なに考え...」
勝手に話を進めようとするリゼルを止めようとしたら耳元で囁かれる。
(賢者様の弟子で通したいなら俺がいた方が上手くフォローしてあげれるし、俺も世界を見て回りたいから良い機会なんだ。)
賢者の弟子にしてはやはりやり過ぎていたようだ。確かにリゼルがいればフォローしてくれそうだな。考えこんだ私はリゼルの口許が緩んだことに気づかなかった。
しばらく王様は考えて、分かったしばし待て。といって懐から紙を取り出した。
「エルノラ殿、こちらは報酬のギルドランクAの推薦書だ。これをギルドのダルタスに渡せばランクを変更して貰える、そして金銭も用意したので受け取ってくれ。これはランクが急激に上がる証拠の為、依頼達成の報酬金として回りに知らしめる為のものだから拒否はできない。」
まあ、必要な処置だろうね。助かります。
「ありがとうございます。」
王様から推薦書をもらいアイテムボックスにしまう。
「こちらこそ、何から何までありがとうございました。貴方様は弟子ではなく賢者を名乗るべきですね。さて、リゼルディスですがご迷惑でなければ貴方様の旅のお供として役に立つかはわかりませんがお連れ下さいませんか?」
王様はリゼルを見たあと私に頭を下げる。
「父上...。」
「エルノラ殿に弱い守りなどいらないだろうがリゼルディスがいることで少しでもこの先の旅が良いものになるならば王子一人切り捨てよう。本人の希望でもあるしな...。」
「あなた...」
王妃様が悲しい顔をしている。
「王子では無くなるが息子には変わりはない。それにエルノラ殿は優しい方だから大丈夫だ。」
王様が王妃様の肩を抱き慰めている。
あれ、連れていくのは決定事項ですか?
何か断りづらい感じだよね。確かにこれから旅をするのに既にやらかしてる身としてはありがたいけど。
リゼルを見ると晴れやかな笑顔だ。
「リゼルお兄さま、お二人で結婚式には必ず来て下さいね。エルノラ様!お兄さまをお願い致します。」
「リゼルディス、我々の分もエルノラ殿をお守りしてたまに手紙を書くんだぞ。」
「やはり行かれるのですか、リゼルディス様。聖騎士団長になって頂きたかった。いつでもお帰りをお待ちしております。」
ハルネーゼ、クラウネス、タルナがリゼルに挨拶していく。やっぱり決定事項らしい。
「はい、行って参ります。」
本当に、実に晴れやかな笑顔だった。




