17、古の森の幻の花
高級そうな天涯ベッドに眠っているお姫様。
綺麗に整えられた波打つ薄金髪を流し、自然にカールした長い睫毛の瞼閉じられている。可愛らしいが低くない鼻梁と口紅を引いているかの様な瑞々しい唇の超美少女だ。
天涯ベッドを囲むように四つの水晶玉が鎮座している。これが彼女の時を留めているのだろう。
([鑑定])
そっと水晶玉を鑑定する。
[時停めの水晶玉] 残48時間30分
時を一定時間停止させる。使用後消滅する。
数が増えるほど停止時間が長くなる。
囲むことでその範囲の時を留める。
(見といて良かった、やっぱり消耗品。
むしろ今まで良く持った方だね。確かアイテムボックスに沢山あったはず。)
取り敢えず三つ程取り出し置いていく。
「エルノラ、どうしたんだ?」
リゼルがいきなり水晶玉を増やしたので疑問に思ったようだ。
今この部屋には眠り姫、リゼル、王様、王妃様、クラウネスが勢揃いしている。
会いたいと伝えたら直ぐにそのままこの部屋に案内された。藁にもすがりたかったのかもしれない。
「このアイテムは消耗品で、一定時間しか効果がありません。今追加して置かないと後二日程で効果が切れるところでした。」
私の言葉に皆驚いているようだ。
「確かに賢者様は[この水晶玉は無限ではないから早めに解決されることを願う]と仰っていました。」
クラウネスは余り時間が無いことを知っていたので余計に焦っていたのかもしれない。
「取り敢えず三つ追加したのであと半年はいけます。」
「そんな貴重な品を使って...」
王様の言葉に沢山あるのでいいです差し上げます。と言葉を遮って姫様のステータスを確認する。
([サーチ])
[名前] ハルネーゼ・バラノート・アルネスト
[年齢]17 [性別]女 [種族]人間
[職種]王女 [状態]眠り(呪い特殊)
時間停止
状態に絞ってさらにサーチをかける。
[眠り] (呪い特殊)
呪いによる眠り。眠り姫のイベント用。
解呪による魔法は無効。古の森に咲くアルネイラの花を煎じた薬で解ける。
「ハルネーゼ姫の呪いを解くには古の森に咲くアルネイラの花が必要です。」
私の言葉にクラウネスとリゼルが其々反応した。
「アルネイラの花とはお伽噺にでてくる幻の花の事ですか?あらゆる呪いを解く神聖な花。実在するのですか?」
「俺達聖騎士団はその花を探しに古の森に入ったんだ。お伽噺の元になった文献にアルネイラの花の事が書いてあったから、だが途中で道を見失って...」
クラウネスはリゼルの話を聞いて青ざめる。
「リゼルディス、知らなかった事とはいえ本当に申し訳ない!!」
「兄上、言ったでしょ。体調が優れなかったのもですが道に迷ったのが原因でどちらにしても一度戻っていましたよ、瀕死でね。」
確かに迷子。
クラウネスはもう一度すまないといって気持ちを落ち着けた。
「エルノラ殿、重ね重ね申し訳ないのだが我が息子達と聖騎士団と共に古の森へ着いて行ってはくれまいか...賢者様のお弟子さんとして是非お願い申し上げたい。」
「勝手とは充分承知しておりますが、どうかよろしくお願いいたします!」
王と王妃様が揃って私のような小娘に頭を下げてくる。親として最大限のお願いだろう。王様としては駄目なんだろうけど嫌いではない。
「では、一つ条件があります。成功したらギルドランクをAランクにしてください。」
「Aランクにか、古の森のマウントスネークを倒したとの報告を受けているから問題はないだろう。今回の成功で我々からの信用も更に得られるから文句もでないであろう。承知した。ギルドマスターのドルタスを証人に呼び契約の手続きをしておこう。」
「わかりました。」
「リゼルディス、クラウネスお前達はエルノラ殿と共に聖騎士団へ行き兵を集めろ。騎士団長も今はそこにいる。クラウネスの罰はハルネーゼが起きた後とする。」
「はい、承知致しました。」
「はい、すぐにお連れします。」
「エルノラ様よろしくお願いいたします。貴方達は必ずエルノラ様をお守りしなさい。」
来たときと同じような温かい眼でしっかりと息子達を激励した王妃に必ずと二人の息子は返事をかえした。