148、神の箱庭
アイテムボックスから至高のレシピを取り出すと魔力を大量に流した。全てのレシピが宙に浮くと輝きを放ち一つに纏まる。
そこから新たな一枚のレシピが姿を現した。
神のレシピと呼ばれる隠しアイテムのレシピを手に取り金に輝く文字を読み取っていく。
そこに書かれた一筋縄では決して集められない希少なランクの素材がズラリと並んでいた。
一度集めたことがある神のレシピの材料はメノウから足りない分を貰っているので集まっている。
アイテムボックスから更に次々と素材を出していくと気づいたメノウが目を輝かせて近くに寄ってきた。が、他の仲間達は距離をとられた。
「おお、また神のレシピの調合が見られる!」
「すごく不快感がエルから漂ってるけど大丈夫なのか?」
「リゼはそれぐらいで済んでるんですか?僕は吐き気と悪寒が治まらないんですが....」
「我も治まらない。またあれをエルノラが作るみたいだ。」
リゼルより数歩また下がったナハトの隣でハルルが腕を擦った。そこにラピスとカインズが隣に立った。皆、影響の少ないリゼルの後ろに立っていた。
「.....まあ、いいけどさ。」
「前の時は、こんな特殊空間じゃなかったから大変だったんだぜ?俺達をよく問題児だと言ってるがエルノラも大概だぜ。」
「............................。............................。」
(癖のある素材ばかりを考え荒野で行っただけメノウよりマシだろう。アイツならその場で始める。)
じっと不快感のする方に顔をむけるとラピスが口を動かした。それを見たナハトが首を傾げた。
「神のレシピとは何度も作れる様な物なのですが?」
「.................................。」
(アレは使用者の望むものを召喚するための媒介だ。)
「今から貴重な経験ができるぜ。前の時は瞬きの間に消えちまったが今回は大丈夫そうだ。」
ゴクリとつばを飲み込む音がやけに響いた時、神のレシピのアイテムが一つになるところだった。
無事に調合され、黄金色の液体が、美しい細工の施されたクリスタル瓶に入れられた形で現れた。
「完成![神の箱庭]だよ。」
それを手に取り皆に見せるとリゼル以外が青褪め膝をついた。
«アイテムから放たれる威圧に皆ついていけてませんよ。マスター。»
白に指摘され、アイテムを隠すと皆ハア〜と息を吐き立ち上がった。確かに女神になる前にこれを見た時は同じ様な感じだったかもしれない。今は全く何ともないが....。
「食べ物じゃあないみたいだけど、どんなアイテムなんだ?」
「これはね、蓋を開けて...」
手で隠しながら蓋開き中身をその場に零していくと床に付くことはなく空中をまるで線の上をなぞるかのように流れ始めた。明らかに小瓶なのだがそれ以上の液体が私達を囲むように流れて行く。
液体はある魔法陣を描き頭上へと浮かび上がっていくと液体が下へと零れ落ち周りの景色を塗り替えていった。
「これは異空間の中に更に異空間を造っているのか?」
「.......................。」
(まるで聖域を造っているかのようだな。)
「すごく神聖な気配がしますね。」
「俺は何かワクワクするな?」
「カインズ、暴れるな。我のそばにいろ。」
「.....これって俺がさっきまでいた....」
周りの景色が星空になり、まっ白い石造りの神殿が姿を現した。その神殿の中から誰かが出てくる。
「やあ、まさかこの方法で帰ってくるとは思わなかったよ。」
片手を上げ苦笑いをしながらこちらに向って来たのは9歳程の黒髪、黒目の美少年だった。
私を隠す様にリゼル以外の仲間が前にでる。リゼルは横にいるだけで嫌そうな顔をしていた。それを見た美少年はクスクスと笑うと嬉しそうに私とリゼルに声をかけた。
「いい子達だな、リゼルディスはお早いお帰りで。間に合ったようで良かったよ。」
正面で歩みを止めた美少年はニコリと笑いかけ、警戒すり仲間たちを見回した。