142,リゼルディス参戦
「白!?なんでここに?リゼは!?」
白には瀕死のリゼルを任せたあった筈だ。管理者の補佐として白の眷属にするべく治療がてら預けたのだが放置してきたのだろうか?
«リゼルならマスターの後ろにいますよ?»
白は首を傾げながら不思議そうに私に告げた。肩にポンと重みが乗りゆっくりと振り返ると真っ白で金の刺繍が入った騎士服を纏ったリゼルがいた。
薄い金髪には白い髪がメッシュがはいり、薄紫色だった瞳は片方が金色に変化しているようだ。白の眷属になったことで影響が身体に現れているのだが、こんなに早く馴染むわけがない。私が女神の力を馴染ませるのに200年かかった様に眷属でも数十年は眠りにつく計算だった。
«妹神と仲間を助ける為に...だそうです。»
白が上に首を向けたのを見て誰の仕業か理解した。
「...ハァ、後で呼び出しだな。まあいいや。」リゼルに向きなおると言葉をかけた。
「おかえりリゼ。調子はどう?」
ぼんやりとしていたリゼルは視線を落とし私と目が合うとビクッと驚いたが「エル?」と呟くと優しく微笑み頷いた。
「好調だよ。ここは不思議だな...少し身体が重く感じるよ。」
「ここはお仕置き部屋だからね。神の力が制限付きで使える代わりに身体能力が半減するの。思いっきりやるのには問題ないんだけど力の微調整が聞かないんだよね。」
「人の身なら余計にだろうな。ああ、だから俺を起こして送り込んだんだな、あの人..?いや、神様か?」
その神様の事を聞こうと口を開こうとしたその時リゼルの手が私を横切りルイーンのから放たれた攻撃を弾いた。
「まずはアレを先に片付けますね。」
リゼルが私の横を抜け後ろに庇うように前へ出ると手を翳し空中で何かを掴み引き抜く様に動作するとその手には白銀に輝く光のオーラを纏った細剣が握られていた。
「あ...リゼ..あの...僕..」
リゼルがルイーンに向かおうとする前にナハトが声をかけるとリゼルはナハトをみて首を傾げた。
「君は...もしかしてナト!?えっ!?成長期ってそんなに成長するものだっけ?...あの時は気にする暇も無かったけど大人の男になったなぁー!!」
肩をバシバシ叩かれ苦笑いを浮かべたナハトはリゼルに伝えたかった言葉を口にした。
「リゼ、ごめんなさい。狂化していたとはいえ命を奪う所でした。初めてできた僕の仲間なのに。」
項垂れるナハトの頭を軽く撫でると優しく笑いかけた。
「ナトが無事ならそれでいいよ。それに先にエルに一歩近づけたしね。」
軽く片目を瞑ると隣にいたラピスとメノウを見て首だけ互いに会釈した。
「ここは俺が出るので、もう少し離れていてください。ナトもエルと一緒に黒の結界までさがってくれ。」
そう言うとリゼルはルイーンに向かって対峙した。剣を構えるとルイーンが少し怯んだように見えた。
「白、リゼは完全に馴染んでるの?」
«はい。前神の兄神でありマスターの仲間だと仰る方が強制的に馴染ませてくださいましたから。リゼルは大丈夫ですが...兄神様は恐らくリスクがあると思います。»
白が私の肩に乗り報告してくれるのを聞きながら、かつての仲間を思い頭をかかえた。
「相当なリスクだろうね、前のを合わせればさ。頭が上がんないよ。」
そんなやり取りをしながら白の眷属になることで手に入れた神の力をどう扱うか見守る。
「白は黒と一緒に結界を張ってね。リゼの初仕事だから存分にあばれられるようにね。」
«マスターも中へ!その身体は人の身ですから神の力がどう作用するかわかりませんよ?»
白に促され結界を張ったタイミングで黒が結界を解き結界の外にいた私達を入れ結界を貼り直し、白が最後に黒の結界と同調させ強固な結界を完成させた。
「エル!リゼは一人で大丈夫何ですか?確かに途方もない力を感じますが...」
「リゼは大丈夫。この器の限界までしか神の力を使えないコントロールできない状態の私や白と黒より、今の状態で100%神の力が使えるリゼの方が強いもの。」
安心させるようにナハトに向かって頷くと、ルイーンに向って剣を向けるリゼルの背中をナハトはじっと見つめた。