132、ハイエルフの業
魔術研究所の一室でファルファは荒ぶっていた。小さな体を大きく動かし羽根をパタパタとして主張する。
「うう〜!!ムカムカするですぅ〜、気持ちが悪いですぅ〜!!」
到着そうそうべチャリと顔に張り付いてきたファルファの羽根を優しく掴み引き剥がすとイヤイヤとへばり付かれた。
「はぁふぃがあっふぁんでふか?」
(なにがあったんですか?)
「よくぞ聞いてくれたです〜!さっき所長が3人も女性を連れてきたのです!お二人は存じてますが問題は最後の一人です!青い髪のドリルヘアーをしたハーフエルフの女性だったんですが、すご〜〜〜〜く嫌なオーラを感じだのです!」
通常はそんな感じを抱くことは全くないし初対面のはずなのでこんなに嫌悪感も抱くはずもないのに見た瞬間にそんな感情になったという。
そこで現れた私達に近づいたらその感覚が薄れ飛びついてきたらしい。
「あの女性は一体何者なのでしょう?魂が拒否している様な感じで…それもあってムカムカするですぅ〜!」
「そろそろ離れなければお前を観察するぞ?」
メノウがボソリとファルファに呟くとバッ!と急いで離れていった。
「.........................。」
(心当たりがあるが..まさかな。)
考え込むようにだまりこむラピスをメノウが声をかけ二人で何か話しているようだがファルファに促されラナージ達がいる部屋へと案内される。
「これ以上近寄れないので後はお願いしますです〜。」
扉から少し離れた所で振り返ったファルファはペコリとお辞儀すると受付へと戻っていった。
「エルノラ、妖精族は昔ハイエルフに狩り尽くされ一度滅ぶ直前までいったのを覚えているか?」
「ええ、ハイエルフが聖樹を手に入れるため、結界を破るのに使った妖精の羽根と心臓を手に入れるために妖精の国を襲って滅亡寸前まで行ったのよね。」
ゲームを始める時にメインストーリーの一つとして語れれたもので、この世界を傾ける一端にもなったものだ。
「...........................。」
(その痛ましい出来事があり、生き残った妖精族はそれを忘れない様にする為に女神に頼んで魂に刻み込んだときく。)
「だからファルファがそれに反応しているってこと?」
ウンウンとラピスが頷くとナハトが首を傾げた。
「アルアネシスはハーフエルフですよね?自称はハイエルフですけど。」
ナハトの疑問は最もだろう。何かからくりがあるのかもしれない。
「扉の前で悩んでいても仕方ない、本人に聞け。」
ハルルが珍しく自分から扉に手をかけた。人見知りが自分から行くとはハルルも気になっているようだ。ラピスやメノウに関わる事ならば当然か。それぞれ面倒な子達だがそれ故に仲間意識が強いのだ。あんまり表には出ないけどね。
ガチャリと扉が開かれた。とたんにハルルが扉から手を離して私の後ろへと隠れる。隠れてはいないが…。
「ああ、エルノラさん!おかえりなさい!」
扉から顔を出したのは疲れた顔をしたラナージだった。かなりやつれているがどうしたのか聞かない方がいいだろう。
「どうぞ、今は姉妹同士で仲良くお話していますよ。」
どんなお話なのかは知らないがラナージの顔色を見る感じ仲良くの意味は違いそうだ。
部屋の中へと案内されソファに腰掛けていた3人の魔女と呼ばれる女性たちがこちらを向いた。
「やっと来たのね。」
レアルにギロリと睨まれ後ろにいたハルルが少しびくついた。
「あら?貴女どこかでお会いしたことがあったかしら?」
水晶越しに顔を合わせた貴族風の女性はアルアネシスでまちがいないだろう。私の顔を見つめているのだがあの時は獣人の少女だったので一致しないのだろう。
「お久しぶりですね、アルアネシスさん。」
そう答えると幻影魔法を体に纏わせて猫獣人のエルの姿をとった。
「あっ、貴女は!エル?…あの時の獣人の子供ね?そう...幻影魔法を使っていたのね。水晶越しだから見破れなかったみたいね。…で?貴女の本当の名前は何かしら?」
ジロジロと目線だけで見られながらアルアネシスが私の名前を聞いてくるので素直に答えてあげた。
「私はエルノラ。改めてよろしく?アルアネシスさん。」
魔法を解除して元の姿でアルアネシスの視線を受けて立つ。
「ふふ、やっぱり面白い。で?私をここに引き止めてどうするつもりかしら?」
やはり引き止められているのを感じていたらしい。だが、大人しく引き止められていたのは状況を把握するためだろう。なかなか侮れない魔女だ。