131、女神の条件
部屋の片隅で私の身長を軽く超える男共が囲い混んで来ると圧迫感が凄いと思う。暗い影を落とされながらワクワクとした表情向けるサポートキャラ達にに若干口角が引きつってきた。
「エルノラ!女神をもう一回!もう一回!」
興奮してアンコールをねだるカインズに渾身のデコピンをお見舞いしてやる。額を押さえうずくまったカインズを尻目にメノウがそっと髪に触れてきた。
「美しい髪だが、そんなに長いと鬱陶しいだろう?俺が切りそろえてやろう。」
愛しいものを見るように一房の髪に口づけをおとすがその目線は髪に釘付けだ。
「髪はやらんと言ったでしょ。実験に使うレベルじゃないの。」
手を叩き髪から離れたすきに左手で元の長さ辺りで掴むと右手にダガーを出現させバッサリと切り落とすとそのまま神力を宿した炎で燃やした。
「あっ!?〜〜〜、………………」
がっくりと崩れ落ちたメノウはカインズに慰められると一緒に絨毯を四つん這いで周りじめた。二人して現実逃避でもしているのだろうか?
「………………………、………………………………………?」
(エルノラは天使族だったのか、他の種族も感じられたが?)
ハイエルフ同様、同族を尊ぶ天使族を過去の要因により嫌悪を抱くラピスが珍しく私の背中に出現していた翼に興味があるようで詰め寄ってきた。
嫌悪ではなく純粋たる疑問だけではない、求めずにはいられない自身が認める同族を見つけたような縋る表情だった。
「女神は全ての種族の母だからね。姿に現れてなくても能力は全て持ってるよ。本体はね。今はヒューマン種の身体だからそっちの能力に引っ張られるけどね。」
「………、…………………………………………………。」
(そうか、唯一となったのがエルノラではなくてよかった。)
無表情から少し嬉しそうに見えたラピスの肩に手を乗せたハルルがこちらを見つめた。
「久しぶりに身体が震えた。神とは恐ろしい力の塊。」
思い出しただけでも震えが来るというように瞳が揺れた。だがそれだけでなく心配そうな色も見えた。二人共同族により深い傷を心に負った為私の事を心配してくれている。
「完全に制御できているから心配しなくても大丈夫だよ。ありがとね。私の事より四人が私の眷属になってしまうから益々生きづらくならないかが不安だよ。必要なら制御をかけるからって話をしようと思って。」
私の言葉にラピスとハルルは首を振った。
「全て承知で眠りについた。ここにいるのは全員覚悟の上。我らが望んだ事に制限はいらない。慣れるのは自分でやる。」
ラピスも頷くとカインズとメノウに顔を向けた。
「……………?…………………………………………。」
(それよりいいのか?落ちた髪の毛を探しているようだ。)
絨毯に這いつくばっているのは髪の毛を探していたらしい。抜けるかどうかは知らないが、もし抜けたとしてもそれは神の力は宿していないので大丈夫だ。宿した髪は燃えるようにしたのだから。
ちょうど話が終わったナハトとチェルナスがこちらに来た。二人とも笑顔で晴れやかだ。
「女神様!あの魔女めはどういたしますか?恐らくはカインズ様から大量に得た魔力で封印されていた魔王様を起こしそのお力を自分のモノにするつもりのようでしたが、それともかつてのハイエルフの様に聖樹を手に入れ神にならんと計画しているのかと思われますが…。」
「多分だけど、魔神になるつもりだったのかも。」
ナハトが、ポツリと呟き皆が注目する。
「実験、魔神の心臓、大量の魔力。僕を復活させれば魔神になった僕の力を魔神の心臓を持ったカインズさんの魔力に引き寄せることで手に入りますから。引き寄せるって言ってましたよね?」
魔神の欠片は引き寄せ合う。カインズから魔力を奪えるとは思えないが何らかの方法で得ることができるとすればアルアネシスが魔神の条件を満たさなくても魔神になることが可能かもしれない。
前にハイエルフが聖樹を手に入れた事を再現するよりはこちらのほうがまだ現実的だろう。
<魔神になったら女神にはなれないぞ?>
黒が魔神と女神は属性が闇と光に分かれるので元が魔族寄りのハーフエルフで魔神になれば闇に染まる為、光の属性を受け付けないといった。
「私はヒューマン種からの女神だからバランス良く全属性を得られてなれたのね。」
(そういえば、種族変えようとしたらバグが起こって出来なかったんだよね....まさかそれも前神様の仕業か。)
「レアル達がアルアネシスを足止めしているなら本人に聞くのが一番だろう?研究所に戻らないか?」
メノウがまともな事をいったので軽く衝撃を受けたがそうすることにした。本来の目的は達成したので後はチェルナスに任せ私達は研究所へと移動することにした。
上手くレアル達が誘導していれば研究所でラナージとサジェスタが一緒になる話をして時間を稼いでくれているはずだ。