115、ハイエルフは鬼門です
「思ったより長かったね...。それで今に至ると。」
ちらりとレアルを見ると疲れた様な、諦めた様な顔をしていた。
「あのままテディの元にいたらあの子達がテディを好きになってしまうかもしれないでしょ?だからさっさと闇ギルドを壊滅させて直ぐ戻るつもりだったの。三姉妹として知られてるけど私は裏で魔国騎士達と通じてダブルスパイ見たいな事をしてたから。」
最初の言葉にもびっくりだがタブルスパイもびっくりだ。
「あ~、だから表にでてるんですね。」
ラナージが成る程といって手を叩いた。
「?どういうこと?」
「だって闇ギルドですよ?犯罪を犯すギルドが顔や名前、罪状が出回ってるんです。普通ならこんなに出回らないでしょう?なのに世界中で闇ギルドの[魔女の宴]の情報が出回ってるんですよ、明らかにおかしいでしょう?」
足取りを掴めないどころかむしろ知れ渡っている。ナハトにあった闇ギルドの証しも直ぐに分かったのは有名なのではなく情報が出回ってたからか。
「あの子達や教団の連中は、自分達の名が知れ渡るのもハイエルフ様のお導きって思ってるから都合がいいのだけどね。」
「...闇ギルドはこのまま潰すけどいいのね?」
「ええ、もちろん。私は何度も何度も伝えたわ。犯罪は駄目、教団を信用するな、女神様にはなれないと。でもあの子達が聞くことはなかった...教団はあの子達が自分達の操り人形だと思ってるし、あの子達はそれを承知で真実を伝えても拠り所を失いたく無くて見ない振りをするの。」
母のように、姉の様にずっと諭してきたが自分達が親を失くし寂しい思いをしてきたのにも関わらず目的の為に親元にいる子供達にまで手を出したのは許せなかったのだ。
「前に遭遇したのはサジェスタだったか?あの淫魔族は姉がハイエルフとヒューマンのハーフだと言っていたが、エルフとヒューマンのハーフで間違いないのか?」
暫く黙って聞いていたメノウがレアルに聞く。
「間違いないはずよ。あの変態主人がエルフの父親の死体を何とか保存できないか聞いて色々死体を調べていたと一緒にいた従者から聞いたもの。とてもそんな状態じゃなく直ぐに火葬されたらしいけど。もし伝説のハイエルフなら絶対死体でもコレクションしてるわ。」
「...そうか、本当にハイエルフとヒューマンのハーフならハイエルフを誕生させられたかも知れんが...やはり絶滅しているか。」
少し残念そうに呟いたメノウはもう話は終わったとばかりに腕を組み壁にもたれて沈黙した。
メノウは種族はエルフなのだが特殊な生い立ちでハイエルフ同士から造られたホムンクルスだ。知性、魔力、精神力が高く、バランスとるため逆に低くなるはずのステータスは低くなっておらずハイエルフ達の実験の唯一の成功例だといえた。だがその弊害か次世をつくることができない。そしてハイエルフであってもエルフと位置付けされた為更なる実験に使われるところだった。
実験体にされる前に周囲を爆発し、脱走。他所にある研究所を次々破壊。その後行く所々で爆発させ(他者不振により)生き倒れていた所を私が捕獲した。
「......................。」
(ハイエルフは滅んだ方がいいのだ。)
メノウだけでなくラピスもそう呟くと沈黙した。
「ハイエルフの事は置いといて、今は闇ギルドと教団を壊滅させるための作戦を立てよう。...と、その前にテディさんに連絡をとって下さいねハニーさん。」
アイテムボックスからラピスの羽根を取り出すとレアルに差し出した。
レアルは綺麗な白い羽根を受け取りじっと見つめると首を傾げた。
「この羽根は?テディと何の関係があるの?」
「その羽根に魔力を流しながらテディさんを思い浮かべてください。」
言われるままレアルは魔力を流すと羽根がほんのりと輝いた。
《...おい!!見つかったのか!?》
影響が無いはずの羽根がまるで揺れた様に感じるほど大きな声が部屋に響いた。
《えっ、あなた...?》
驚きつつも最愛の夫の声を聞き違えるはずもなくレアルはテディの声に反応した。
《ハニー!!間違いない、俺のハニー!大丈夫か?困ったことはないか?》
捲し立てるようにレアルを心配する声だけが続く。
《私は大丈夫です。勝手に宿を留守にしてごめんなさい。用事を終わらせたら直ぐ帰るからあなたは待っていてくれる?》
《ああ、もちろんだ!留守は大丈夫だから必ず帰って来いよ!俺はハニーが何者だろうと俺のハニーだ。》
《あなた......。》
レアルが感動しているところ悪いが、羽根に近寄り声をかけた。
《テディさん、ハニーさん見つかりました。用事が終わったら必ず送り届けまーす。だから世を儚むのは止めてしっかり宿やを切り盛りして下さいね~。》
《おあっ!エルノラ嬢ちゃんか?》
《そうですよ~、あんまりこの羽根の魔法は長くないので割り込ませて貰いました。》
《おお、嬢ちゃんは勇者だったんだって?煌国から連絡が来て今は勇者の誕生に沸いてるぜ!》
《まじですか...。》
頭を抱えたくなる事態になっているようだ。
《ふぅ、なるべく目立ちたくないのに...》
《はは、お陰で宿は繁盛している。ハニーを探してくれてありがとな!ハニー待ってるからな!愛してるぞ!》
羽根が点滅しだしたのに気づいたのか矢継ぎ早に話をすると羽根の光は消えボロボロと崩れる様に霧散した。