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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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109、沼地にはアンデッド

共和国ハイクタから魔国バルデナに向かう途中には樹海が広がっている。奥深い湿地に鬱蒼と繁る密林は旅人を足止め、死地へと迷い込ませる。


しっかりと準備をしたベテラン商人がSランクの冒険者パーティーを高い金で雇い、前突破者の道標を頼りにして何とか魔国へと辿りつける。


魔種族は樹海には迷わない。何となくどの方向に進めばいいのか安全な道が分かるのだという。だから魔種族をパーティーに入れて樹海にはいるのが正解だ。だが今魔種族は全て魔国へと入っている為それは望めない。


樹海を前にメノウが持っていたハイクタ周辺の地図を皆で眺めた。


「ここから先が樹海の入り口で、この道標石柱を頼りに進めば魔国に辿りつけるだろう。」


ポンポンとメノウが自身の身長と同じ高さの石柱を軽く手で叩く。


「ここのモンスターは毒系が多い。でもこのメンバーなら問題ない。我が先行するがいい?」


ハルル達はあらゆる状態異常を無効化する対策済みなので問題ない。ナハトも魔王効果で無効化できる。残念ながらダークエルフは魔族ではない為道はわからないのだが。


「いいよ。メノウはハルルの補佐で、ラピスはナトと一緒に後衛をお願いね。」


頷く二人を見やり先に歩きだしたハルルとメノウの後に続く。


肌にジメジメとまとわりつく不快感を無視しながら石柱を頼りにどんどん進んでいく。


途中、毒々しい緑色のスライムや肉が腐食した骨の見えるゾンビ等が現れたがハルルの槍一凪ぎで一掃された。倒したモンスターの部位をメノウが抜け目なく拾いニヤニヤしていたのは背を向けていてもよく分かった。



このパーティーはチートパーティー。モンスターは攻撃を当てることなく魔石へと屠られ進行を妨げられる事もない。その分色々離れていた時の事を聞いていたら、ふとナハトが不安な表情でこちらを見た。


「それにしても、エルが女神を引き継いだということは。前女神様は、やはり....。」


ナハトは魔王ノックスであった頃に一度だけ会った人形の様な少女神を思い出し悲しみに顔を歪めた。


「あの子はこの世界をとても大事に思っていたよ。自分の只でさえ少ない神力と命を削って他の世界の神に助力を頼み、私を見つけて新たな神として力に馴染むまで....消滅する寸前までこの世界を思っていたよ。」


彼女の最後を伝えるとナハトは静かに瞼を閉じ祈るように呟いた。


「そうですか....ありがとうございます。」


《まあ、マスターが消滅寸前の魂を掴んで輪廻の輪に加護を与えて投げ込んだから、今頃は生まれ変わってるはずだな。》


幻惑魔法はハイクタを出て解除したがいまだに頭にしがみ付いている黒からのいきなりの言葉にナハトは驚き目を見開いた。


「私が受け継いだ世界を見せないまま消滅なんてさせるわけないでしょ。」


掴んでポイっとする動作をしたらナハトは呆然としてそれからクスクスと笑いだした。


「さすが、女神様だ。....そうかあの方はこの世界を見ることができるんだ....。」


目尻に溜まった水を指で取るとナハトは笑顔で早くリゼルと一緒に私を支えたい。という言葉をくれた。


「....、..................。」

(何か、匂う。ハルル、この先に何かいる。)


後ろにいたラピスが前方を行くハルルに気を付けるよう声をかけた。珍しく警戒をするラピスにハルルとメノウが武器を構えいつでも攻撃が出来るように準備した。


湿った空気に鉄の匂いと腐った肉の様な匂いが漂っている。だが前方には少し開けた沼地があるだけで何もない。沼地は地面から空気が漏れているのかポコ、ポコと音がしていた。


私の[索敵]には反応がないがラピスが後ろからハルル達の前に移動して結界を全員を包み込むように張った。その瞬間、沼地の漏れた空気の量が一気に増えポコポコポコポコッと大きな音をたて始めた。


[神眼]で見えていたのは巨体な体。地上ではなく沼地の下をラピスは捉えていた。


「これは!!珍しい!アンデッドドラゴンじゃないか!」


一人興奮しているメノウを無視し、ラピスが束縛魔法で捕まえようとするが、その瞬間だけ実体を霧の様に消し逃れてしまった。


アンデッドドラゴンが実体を霧に変えるとは思っても見なかったが元が水を操る水竜なら可能だろう。アンデッドドラゴンは死んだドラゴンの死体が負の魔力でモンスター化したものだ。ワイバーンより強いモンスターでズィーロ達が本気を出してギリギリ勝てるかどうかだろう。私達がこの樹海に入る前は封鎖されていたのが幸いし気づかれず、又、被害も無かったといった所か。


ここを通ったはずのラナージは封鎖を上手く、くぐり抜け魔族の帰巣本能で私達が通った石柱の道ではなく違う道を使用したのだろう。


ゆっくりと崩れ落ちそうな腐った顔をこちらに向けただれた顔面から溢れ落ちそうな目が青い炎を宿したように揺らめいた。


「いいか、ラピス!浄化魔法は使うなよ。私が部位を集めるからその間、ハルルとラピスで気を引いてくれ。」


なんの了承も無く素材を見るギラギラした目でハルルとラピスに指示出し、部位を保存するための袋やら瓶をどこにしまっていたのか次々と出して用意している。


「メノウさん凄く楽しそうですね。」


意気揚々と飛び出し敵の攻撃を喰らうこと無くヒョイヒョイ避けて攻撃して部位を剥ぎ取っていった。


「心なしかアンデッドドラゴンが怯えている気がするよ....。」


恐怖も何もない屍を怯えさせる賢者。それを見ながら抵抗する暇無く蹂躙され賢者に搾取されるアンデッドドラゴンを見ていると少し可哀想に思えてしまうのだった。



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