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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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108、さよなら爺様

部屋を概ね元通りにしたメノウ達と合流した後、書類で溢れる執務室の隣の部屋でズィーロから今回のモンスターの討伐金やら褒賞を貰いその全部をギルドへ渡した。

親を失くした子供達のいる孤児院や怪我人がいる医院、遺族達へギルドからの寄付として渡して貰うように。


そして、もう一つ気になる事があったのでメノウを促すとひび割れた水晶玉を数個取り出した。


「これまでの戦いで町を守るモンスター避けの結界が弱っていたので無償で新しいのと交換しておいたから確認しておけ。」


昨日の晩、メノウが部屋に入って直ぐに脱走した。気になっていた結界を確認しに行ったらしい。

町や村、王都などの人が暮らしている場所にはそれぞれ必ずモンスターが近づけない結界が張り巡らされている。

それぞれの管理する国が大金をかけて何人もの魔術師に結界を展開する水晶玉(アイテム)に大量の魔力を込めて作成し、対象を囲む様に設置したら発動する為にまた魔力を与え固定させる。

莫大な魔力を必要とするが設置すれば魔力が切れるまで半永久的に結界が張られる。

ただ気を付けなければいけないのが結界に攻撃をされたり、アイテムが破損や損傷したりすると弱り弱体又は無効化してしまう。


今回は度重なるモンスターの襲来で結界が弱っていたようだ。アイテムのひび割れ方を見てもあと数ヶ月持てばいい方だろう。


だが、それよりも結界を補強するには直接アイテムの場所にいく必要がある。国にとって防御の要である結界のアイテムの場所は最重要秘密事項の筈だ。なぜメノウがそれを知っているのか?案の定ズィーロ達が声にならず青ざめていた。


「別に驚く事ではないだろう。爺どもが私の力を試す際に結界の場所を喋り、魔力を込められるか試させたのだから。結界水晶の魔力を一人で込める事が出来るのはハイエルフでも難しいというのに。ああ、そうだ。その時の爺どもの直筆のサインもあるぞ?許可はあるって息巻いていたからな。」


メノウが懐から数枚の手紙を机の上に放り投げた。その手紙をズィーロ達が慌てて取り上げた目を通す。


「本当に....あの糞爺....!!」


怒りに任せて拳を机に叩きつけた。それをアーバンが苦々しく見つめ、ジェネラルはとても冷めた表情になった。


「まあ、これであの爺どもを中途半端に生かすこと無く止めをさせるだろう?」


メノウがニヤリと三人に視線を送ると三人も頷いてニヤリと笑った。


「ああ、これは完全な第一級犯罪だからな。まさか自分の国を危機に陥れる程とは....結界の件、この事と今回の新しい物との交換感謝する。」


ズィーロはメノウに頭を下げると紙を大事に懐にしまい改めて私たちを見回した。


「それで?うちとしてはエルノラ殿達にはこちらにいて欲しいと懇願したい位だが....」


「私達は魔国に行きます。ジェネラルさんが言ってたハイエルフのように扱われてた魔国の女性も気になりますし、まだ仲間が一人揃ってないんです。」


「そうか、それは残念だな。ジェネラルが色々教えを乞いたいと言ってたんだがな。」


「お、おい!余計な事をいうな!だいたいズィーロも男に寄り付かれなくなったから嫁に来てくれねぇかな~とかいってただろ!?」


「いっ、いってねぇ~し!?」


ジェネラルとズィーロが言い合いを始めたのをアーバンがやれやれと止めに入る。


「やれやれ、すまんな。直ぐに出るのか?」


「はい、このまま魔国に向かうつもりです。」


「わかった。魔国への道はモンスターが強くなるがあんた達なら心配ないだろう。これを渡しておく。またこちらに来る事があったら冒険者ギルド本部に顔を出してくれ。色々力になれると思う。」


アーバンが渡してくれたのは冒険者ギルド本部の証を型どったペンダントだ。これがあるとズィーロ達に直接連絡を取ることが出来、世界中の冒険者ギルドで優遇されるらしい。ある意味SSSランクよりも強力だ。


「ありがとうございます。」


ありがたく受け取り懐に大事にしまった。


「ジェネラルさん、全部用事が終わったらお話を聞きますよ。」


私の言葉にズィーロに掴みかかっていた手を止めこちらに向かって深く頭を下げた。


「その時はよろしく頼む。」


「はい!ズィーロさんも書類の片付け頑張ってくださいね。」


「ああ、ありがとさん。色々とな。本当にありがとう。煌国のシェリーダ殿に解決の礼状を送るんだが何か伝える事はあるか?」


「あ~....、勇者は荷が重いのです。と。」


「何をいってるんだ?普通に勇者の条件を満たしているじゃないか。俺たちはあんたに色々助けられた。俺たちが頼んだ以上の事を自然に解決してな。これこそ女神様の導きだろう。」


ズィーロの言葉に何故か私以外が全員頷いている。


「はは、ソウデスネー。」


その女神はあなたの前です。導くどころか巻き込まれただけかもよ~。とは言えない。


曖昧に笑いながらズィーロ達と別れ私達は魔国バルデナへと向かうのだった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


その後、ある屋敷。


「最近はあの御方も来られず、監禁の様な生活を送らせおって!あの若造どもが!!」


机の上にあった赤い葡萄酒の入ったグラスを手で叩き落とすと柔らかい絨毯の上に転がり染みをつくる。

自分と同じ様な境遇に同士たちも陥っているため助けもなく外に行くことも監視され、まるで罪人の扱いだ。


「せめてここを出られれば魔国にいるあの方と連絡がとれるかも知れんのに見張りも手練ればかり用意しおって!金で懐柔できんばかりがまるで復讐相手かの様にワシを睨みおって!!」


見張りにドアの前に立つ者達はかつて自分がギルドマスターの一人だった時には見なかった者たちだ。接点等無いように思えるが何故あんなに憎しみのこもった眼で見てくるのかわからない。


それよりも折角ハイエルフ様を新たな神として崇める筈が些細な理由でギルドマスターを交代しなければならなくなり滞ってる間に新たなグランドマスターが女神教に戻してしまった。


ならばと次に役に立ちそうな魔力の強いエルフを見つけたと思ったら、町を血濡れの惨劇に陥れた恐ろしいエルフだった。そして全く身動きが取れなくなったのだ。


「あ~!!イライラするわい!!」


落ちたグラスを足で踏みつけバキリと靴の下で割れた音がなった。


バタバタバタバタ...........


外から数人が走って来る音がする。騒がしいと思ったがもしややっと助けが来たのかとも思った。それに期待して扉に手をかけようとする前にバタンッと扉が勢いよく開かれた。


入ってきたのは自分をここに閉じ込め監禁した若造達。グランドマスターのズィーロ。ギルドマスターの一人、アーバン。そして自分を裏切りギルドマスターの一人となった、ハーフエルフのジェネラル。その三人に引きずられるように足元に転がされ簀巻きにされた自分の同士たちも見えた。


「なっ!なんじゃ!!無礼者めらが!!」


自分が若造達を睨むとその倍以上の冷たい瞳でこちらを睨んできた。


「よお、爺様?元気か?」


ズィーロが視線を緩めることない鋭い視線に蛇に睨まれた蛙の様に背中に冷や汗が伝う。が、辛うじて声はでた。


「ふん、閉じ込めている癖に何をいうか!」


「お前がしたことを考えれば当たり前だろう。」


「黙れ!役立つ所か恩を仇で返すハーフエルフが!」


裏切り者を睨み付けるがその前にアーバンが遮りガシリと首もとを掴まれ持ち上げられて首が詰まる。


「グッ.....」


「黙れ爺様よ、お前がしていたのはただの虐待だ。恩とは笑えない冗談だな。」


かつてそこのハーフエルフを自分の攻撃からかばい失明したアーバンの眼帯が目にはいる。


「アーバン、爺を離せ。今回はお前らの罪状が確定した。」


ズィーロが懐から筒状の紙を取り出すと広げてこちらにむけた。


そこには驚くべき事が書かれていた。


一つ、賢者を不快にさせ共和国ハイクタを無用の惨劇を引き起こしたこと。


二つ、怪しい組織と手を組み各国から子供達を誘拐しを補助、強力したこと。


三つ、国教である女神教を貶め新たなハイエルフを神とする邪教を広めるため逆らったものを手にかけたこと。


四つ、国の守りである結界の位置を第三者に漏らしたこと。


よって以下数名をグランドマスター及びギルドマスター全員の署名をもって第一級刑罪とする。


ここにいる同士達の名前と自分の名前が書かれている。第一級とは死刑。それほどに重い罰だ。証拠には気を付けていたはずなのにこれはどういうことなのか?目線を同士に送っても今理由を知ったのか青ざめて震えている。


「まさか、ここで執行するつもりか!?」


この場に罪人が集められているのに気づきズィーロをみる。


「そうだ。これまで証拠があってもあんた達を閉じ込めておけばいいと思ってた....が、結界水晶は駄目だ、完全にな。ギルドマスターならわかるよな?」


どの国でも同じこと国ごと滅ぼすと同意。

ならあの血濡れのエルフの素晴らしい魔力に酔っていた時に何かされたのだろう。


「...........。」


「...........じゃあな爺さん。」


ズィーロの呟きと共に剣が抜かれ振り下ろされた。一瞬で終わらせてくれるのは若造なりの最後の礼儀なのかも知れない....。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ねえ、メノウ?」


「何だ?」


「ズィーロ達に見せたあの爺様の署名さ~、操作魔法の名残があったんだけど?」


「ククッ、その場にいたのは間違いなく、そのサインがなければ私が犯罪者になる所だった。あの爺どもはそうするつもりだったようだから先に先手を打っただけだろ?」


「そういうのには頭が回るね~。しかももっと早く出せたのにあのタイミングでだすとはね。」


「取って置いたんだ。あの時、つい魔力を入れすぎてひびが入ったのが見えたからな。取り替えるタイミングが出来るまでな。」



「へぇ、つ・い・ねぇ~。まさかまだ私に隠してることがあるのかな~?」


「!?はは、あるわけないだろう....!!」


「あっ!?逃げやがった!待て!!」


「...............。」

(いつもの光景だな。)


「いつも通りだ。」


「えっ!?いいんですかあれ?」


「「..........。」放っておけ。」

(放っておけ。)


「...........はは。」



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