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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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幕間、ノックスの思い

広々とした部屋は三部屋に分かれそのうち一番広い部屋にベットが二っ両壁につけるように置かれ真ん中には丸いテーブルと四脚の椅子があり酒盛りしたりカードゲームが出来るようにその為のセットが置かれている。


残りの二部屋はそれぞれベットが一つづつ置かれ一人用の椅子と小さな物書き机が置かれシンプルな部屋になっている。


ラピスは無言でハルルの手を取り大部屋に放り込むとメノウに指で空いた部屋を指し示し、ナハトに余ったもう一つの部屋を指し示した。


「いいんですか?」


ナハトが聞くとラピスは頷き、メノウは何も言わずに部屋に荷物を置きに歩き出していた。


「...................。」

(後でノックするからこちらの部屋に集まってくれ。)


「わかりました。」


ラピスに返事をしてナハトも部屋に入った。メノウも返事はしてないが振り返らずとも手を後ろ手に振っていたので承知の合図だろう。


ベッドに腰掛けると深い深いため息がでた。今までの事を考えると頭が下を向き持ち上げられない。ふと目下の膝に置かれている大人の手を見るとまるで血塗られたように真っ赤に染まっているようで震えてくる。


「....リゼ、......エル、....」


遥か昔、人形の様な無表情の女神様に世界の協力者達が呼び出された。

協力者達はこの世界を見守る女神様の手伝いをする特別な存在で代々引き継がれていく。

ナハト....ノックスは先代から赤子の時に見出だされ先代自ら育て成人してから管理者と魔王を継承された。魔王の業務に追われつつ世界を監視して皆を守り女神を支えてそれを誇りに思っていた。


呼び出された協力者たちが女神に告げられたのは世界の終わりだった。この世界は未熟で発展途中だが、女神の力が及ばず緩やかに崩壊し始めているらしい。無表情のままハラハラと瞳から涙を溢し自分たちよりも幼い少女の見た目をした女神は申し訳ないと何度も何度も謝っていた。


そんな女神に協力者の筈の自分達が何もできない事を悔やんだ。そもそもの女神の力が及ばない原因は驕ったハイエルフという種族が原因なのだと同じハイエルフの協力者が訴えた。


何度も行いを正そうとした、時には脅してでも....だが全く相手にされず地上で神の様に振る舞い聖樹を利用しているらしい。協力者は追い出された後、女神に相談した。


聖樹はこの世界で使われる使用魔力から出る僅かな毒の様な心の負の感情を増幅させる魔力を害のない魔力に浄化する為の女神の管理する重要な植物だ。女神以外が勝手に利用していいものではない。女神は直ちに聖樹へと向かった。


だがハイエルフ達は浄化された魔力を自分達で大量に消費し、仕舞いには聖樹の場所を占拠するように強力な結界で囲ってしまっていた。女神が結界を解いた時には手遅れなほど負の魔力が結界内に充満していたようだ。


負の力を取り込んだ一部のハイエルフ達はモンスターと化し各地に散らばり世界を壊していった。


流れ出た濃い負の魔力は生態系を狂わせそれを女神が神力と生命エネルギーを使い何とか大方浄化できたがそこまでだった。濃い負の魔力は消えたがそれにより生まれ出でたモンスターはそのまま新たな負の魔力を撒き散らす。


協力者達は女神を助けるべく力を尽くしたが強力なモンスターは倒すことは出来なかった。四人いた筈の協力者は二人消滅し、残ったのはハイエルフの協力者とノックスだけだった。


ハイエルフの協力者は力を使い果たす前に何とか次代へと繋いでノックスに女神を頼むといい魂の輪廻へと帰っていった。


モンスターを退治する途中で自身に負の魔力が少しづつ蓄積されていった。その頃、女神は自分の兄弟神の元へ助けを借りに行くと世界を離れていた。負の魔力の影響に気づかず自身に大量に溜め込みながら力をつけてモンスターを倒す悪循環に陥っていた。


女神がこの世界に兄弟神を連れて来た時にはノックスの意識はほとんど無かった。只々ずっと女神の涙が目に入っていた気がする。


それからどの位経ったのか....少し意識が戻ったのは身体中が重苦しく、激しい痛みと悲しみが胸を裂くように押し寄せた状態の時だった。目の前には()()とその()()達がこちらを哀れみの瞳で見ていた。


自分の状態がモンスターのように負の魔力に侵され狂暴化し沢山の怨嗟で黒く染まっている事に悲しくそして恥ずかしくなった。


そしてノックスの意識は身体と共に封印された。



ナハトの意識は()()から始まる。それまでは曖昧でハッキリとしない。

始まってからは楽しく、面白く、温かかった。


あの新しく魔王になったと唆されていた、どこかで見たことのある鬼人族の赤髪の男に負の魔力が満ちる空間に転移させられるまでは.....。


今度はハッキリと覚えていた。ナハトの中にあった一欠片と結び付いた負の魔力はノックスを呼び起こし更に身体を乗っ取ったが意識は追いやられただけで一部始終を見ていた。


また彼女に助けられた。....だが友を刺し致命傷を与えた。ノックスでは女神も世界も守れない。彼女は女神の力を宿していた。女神の役に立たない協力者など必要はないだから彼女に自分の命を託すことにした。


新しい女神....あの女神が選んだ新しい女神がいるならこの世界は持ち直したのだろう。自分も役目を降りられる。


だが彼女はナハトでありノックスを友と共に協力者どころか神の分身である管理者の眷属にと望んだ....友....リゼルの願いと共に。


血塗られた手を見つめ続け、顔を上げた。

今の()()出来る事をする。それを魂が消滅するまで続け、女神を今度こそ支えて世界を安定へと導く。


重い腰を上げ立ち上がった時、コンコンとノックが響いた。


ラピスからの集まれとの合図だ。


扉へと歩きドアノブを掴んだ手はもう血には染まっていなかった。



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