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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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102、戻った記憶

何度か呼び掛けながらハルル達と連携をとり浄化で負の魔力をどんどん減らしていく。


「....ウゥ....思い..出した....。」


狂化魔王の長い髪が濁った銀色へと変化していくと黒い剣が砕け霧散する。髪から除く赤い瞳も薄い赤紫へと光を取り戻していったが表情は痛みを堪えるかの様にしかめていた。


「僕は....神の為に....負の魔力を取り込んで....狂化してしまった....、世界を滅ぼそうと....君たちが止めて....くれた。」


声を振り絞るように紡ぎ、半分以上銀色に戻った髪を後ろに長し顔を上げた。ハッキリと意思を宿した赤紫の瞳はこちらを捉え立ち上がった。


「...........。」

(浄化完了だ。)


ラピスが最後の浄化魔法を使い、狂化魔王は銀色の長髪の優しい赤紫の瞳をした麗しいダークエルフの魔王へと元に戻った。


顔立ちはナハトの大人バージョンなのだがナハトの時と今までには無かった黒曜石の角が頭に生えている。それは魔王の証しとして受け継がれ正統な者に顕れる。今の彼は真実、魔王。


「ナハトは魔王だったのか?魔国にいる魔王は....?」


魔王の姿をみてハルルが首を傾けるが警戒を解かず強固な結界を張ったままだ。


「ナハト?誰だそれは?魔王は確かノックス・ガード・バルデナだったと思ったが。私達が倒した後はずっと現れていなかったぞ。」


ナハトに会ったことがないメノウが知らないのは当たり前だ。


「ナハトは私達の新しい仲間だよ、今は見た目変わっちゃったけどね。紹介する前にこんな会合になっちゃったけど....。」


苦笑いしか出てこないが今は彼の状態が気になるので確かめなければならない。


前回はイベントだったので狂化魔王が倒れ強制的に封印する流れになっていたが、今回は何の強制力もないので最後まで浄化することができた。


狂化する前の魔王は見たことがなかったのでナハトをみても魔王の弱体化した姿だとは思いもしなかった。ましてや子供姿で奴隷なんて気づくわけない。


「魔王さん、私の事は分かるかしら?」


今の状態を確かめる為に質問を投げ掛ける。


結界で行く手を阻まれているので私の元に歩いてこようとしたがギリギリの所で止まる。なので私の方が歩みより背の高くなった彼を見上げる。


「わかりますよ、エル。僕の事わからなくなりましたか?背が伸びたとちゃんと報告したでしょう?」


狂化の時の無表情ではない、嬉しそうな懐かしむ様な眼差しを向けられこちらの方が困惑する。


「今の貴方はナハト?それとも魔王ノックスなのかしら?」


見定める様な私の視線に気づいたのかクスリと笑った。


「両方とも僕ですね。前の神様を助けるべく負の魔力を取り込みすぎ狂化して魔神の力を手にいれた愚かな魔王。倒された後、魔王継承をさせるために異次元の神に新しい神が降臨するまで封印され、解かれた後また弱った所に再封印されて、残った力で逃れたものの力を使い果たし全てを失って奴隷にされた所をエルに拾われた。」


声は低めの男らしい声だがしゃべり方はナハトのままだ。私は結界を解くようにハルルの頼むと頷いたあと結界が解除された。


「....このまま僕の命を絶ってもよかったのに。新しい魔王を継承させるには僕の存在は邪魔だし....リゼを刺して命を奪ってしまった....やはり僕の魂は穢れたまま...ごめんねリゼ.....。」


魔王の瞳からポタリポタリと涙がこぼれていく。


「....エル....いえ、女神様。僕の存在で新たな魔王は生まれず、守るべき命を脅かし奪った愚かなる者にどうか断罪を....。」


その場に膝をつき赦しを乞うように頭を低く下げ私からの裁きを待つ。


「ノックス..いえ、ナト。顔を上げなさい。」


私の言葉にゆっくりと頭を上げ、覚悟を決めた瞳が私を映した。



ムニッ×2


潤んだ瞳はそのままにキョトンとしたナハトは両方の頬っぺたを摘ままれ伸ばされる。


「いふぁい、いふぁいれす....エフ~。」


「痛くしてるの。それにリゼは死んでないよ。私がそのまま死なせるわけないでしょ。リゼには選択肢をあげたの...私達のことを忘れて前の日常に戻るか、管理者の補佐になるか。リゼはどちらを選んだと思う?」


ナハトの頬から手を離すと軽く目を見張った後直ぐに答えをだした。


「そんなの決まってます。補佐になったんですね?....そうか生きてた..。」


一人納得したように、心底羨ましそうに呟いた。


「ちなみにリゼからの伝言でナトも一緒にって。」


私の言葉に一瞬嬉しそうな顔を見せたが直ぐに諦めたような悲しげな表情になった。


「...リゼ...、魂の穢れた僕では相応しくないですよ。それに僕は魔王です。その資格すらありません。」


「ハァ...、ナト!!魂の穢れとか魔王とかはまず置いといて貴方自信はどうしたいの?」


遠くから、なぁ、置いといていいのか?とか聞こえるが気にしない。私はナハトがどう望んでいるのかが聞きたいのだ。


だいたい魔王の狂化は世界の負の魔力を取り込み易いからと神に協力し、浄化が追い付かずに陥った不可抗力だ。その後倒され、封印され

奴隷にされ、また偶発的に狂化した。ナハト事態に悪気どころか善意しかない。


魂の穢れも負の魔力に汚染されただけなのだ。魔王の問題も女神である私がいる。だからこそナハト自信の言葉が欲しい。



ぐっと我慢するように拳を握りしめ、うつ向いているのでどんな表情をしているのかわからない。


「.......ぁの....僕は」


絞り出される様に出された声はまだ迷いがある様だったがゆっくりと顔を上げこちらを見て開いた口から出た言葉は私の耳にちゃんと届くのだった。




「リゼと共に女神様のお側に。」



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