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Good luck in my world  作者: エンリ
第4章 共和国ハイクタ~魔国バルデナ
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黒い剣に刺し貫かれたリゼルをまるで重さのない葉っぱの様に軽く持ち上げたまま男が起き上がる。


「ぐっ....」


動いたことでリゼルが苦しそうに呻く。まだ息があるようだ。


「....ジャマダ....」


ノイズがかかったような男の声は心話で聞いたナハト?の声。剣にリゼルから流れた血が男の手元に届き濡らしてポタリポタリと地面に染み落ちていく。


「ナ....ト....っ。」


リゼルが男に向かって力を振り絞り手を伸ばそうとするが力が入らず少し持ち上がっただけだった。



男が立ち上がると足元から黒い霧のようなものが発生し濃く大きく広がっていく。


「ココハドコダ....イツテンイシタ?」


頭を押さえながらぼんやりとした感じで呟く。この間もリゼルのHPが減り続けている。


「《時空神魔法:時間停止》」


私のみが使える神魔法を使用してこの空間の時間を一時的に止める。魔力ではなく神力の使用なので世界への負担が大きくあまり長くは止められない。


スタスタと私以外の時間が止まり、一切の音が消えたこの空間を歩いていく。ハルル、ラピス、メノウ、勿論リゼルを刺したまま立ち上がった男も例外無く止まっている。リゼルの元まで辿り着くと手を伸ばし体に触れた。


《リゼ、私の声が聞こえる?》


《....あれ?エル?俺死んだ?体が動かないんだけど?》


時間が停止しているのだから動かないのは当然だが、何故話せるのかは唯一この空間で動ける私がリゼルの体に触れ直接心を繋げているからだ。


時間を止めたので命の流れも止まっているから時間稼ぎになる。時間が進んだとたんリゼルは命を失うだろう。私の完全回復魔法でも使う前に命が尽きる。


《死ぬ一秒前?で、何とか間に合った。時間を止めたから体は動かないよ。私が触れてる間心話の要領で心に直接繋いでるから話すことはできる。だけど長くは持たないの。》


《....不思議な感じだ....刺された場所がヤバイな。そうか、時間を止めるなんてやっぱりエルは賢者様....いや、大賢者様だな。》


死ぬ直前とは思えない程のテンションで言葉を返してくるリゼルに少し呆れつつ本題を話すことにする。


《リゼ、....私はこの世界の女神だよ。さすがに大賢者でも時間は止められないから。黙っててごめんね。》


《へぇー、女神か~........女神!?女神って世界を管理してる神様だろ!?メノウ賢者様の弟子の賢者様じゃなくて、女神!?》


リゼルは混乱している。騙していたと怒るのだろうか?それとも嘘かと疑うだろうか?どちらでも私がこれから出す選択肢は選んでもらう。驚いた後、黙りこんだリゼルから心話がくる。


《そうか、女神様だったのか。寧ろ納得できるな。英雄様が従い、賢者様が怯え、天使様が慈愛眼差しを向けるのは弟子だからとは違う気がしていたから。....ナトと約束したんだエルが何者でも信じるって。流石にビックリしたけど。》


彼等(リゼルとナハト)が前に私に伝えた「信じるよ」の言葉は紛れもない真実だったようだ。ごめんね、信じすぎやしないかって心配して....。


《....あ、ありがとう。....リゼ、本当は来るべき日が来たら聞くつもりだったの。私の下で管理者の手伝いをしないかって。》


リゼルが息を呑む音が聞こえた気がしたが続けて言葉をかける。


《200年以上前、私はこの世界アダメルシアの....リゼ達の言うところの先人と呼ばれる者だった。世界を崩壊させる程の敵と戦って何とか勝った後、神様に呼び出されたの。》


ゲームなどリゼルが分かりづらいことを省きつつ説明する。


《神様に呼び出された....》


《別に怒られるためじゃないよ。》


《....ははは。だよな~。》


《...まあ、いいや。時間ないから軽く説明すると世界の再生に力を使いすぎて消滅しそうだから私に神様を任せたいって言われたの。私はそれに承諾して神様の力を受け継ぎ女神になった。世界を救った他の仲間がハルル、ラピス、メノウ、カインズ。私が女神として覚醒するまで眠って貰ってた筈なんだけど、先に目覚めてたのがいたね。仲間を目覚めさせつつ世界に異常がないか旅をしてたの。》


《....仲間たちを探して世界を見る為に冒険者になったのか。それで管理者ってのは?》


《管理者は世界を見守る者。安定させる者。女神の私と白と黒。》


《白と黒も管理者なのか、聖獣が管理者なのか?》


《白と黒は仮の姿で本体は人型なの。私も女神の姿で地上に降りる訳にはいかないからヒューマン種の先人だった頃の姿だよ。》


《....へぇ、何か色々凄いな。》


《リゼにはこのまま死んで欲しくない。だから全てを忘れて私と出会わなかった日常に戻るか、今までの自分を捨てて私の元で管理者の手伝いをするか選んでほしい。》


どちらを選んでもいいように準備はできている。


《じゃあエルの手伝いをさせてくれ。》


私の耳に届いた余りにあっさりと決断したリゼルの言葉に耳を疑う。


《....家族とは一応会えるけど、皆リゼを置いて死んでしまうよ?管理者の眷属は寿命がないから....それに冒険は出来ないことはないけど、余り深くは関われないから助けたい人が出来ても助けられないし、もし愛する人が出来ても簡単には一緒になれないよ?》


《俺はエルが助けてくれなければあの古の森で死んでいた、マウントスネークに食べられてね。助けられ、呪いを解いてもらい、妹まで助けてくれた。父と母には伝えたんだエルを護る者になると、だからこそ廃嫡し冒険者になって命を落としても戻らない覚悟でね。》


そこまでの思いで付いて来たとは知らなかった。始めから私が何者でも信じ、強く自分を鍛えつつ私を護る為に努力をしてきたのだとリゼルから言葉を貰う。


《ナトも同じ気持ちだと思うよ。だからエル俺達を一緒に連れていってくれ。》


じんわりと温かなくなった胸を押さえリゼル達の気持ちを受け取った。


《ナトは魂を負の魔力から解放しないといけないからその後で....白が力をくれるから、また目覚めたら会いましょう。それまでお休みリゼ。》


リゼルに触れた手を離し額に軽く口付けを落とすとリゼルに付いていた白に話しかける。


《白、お願いね。》


《了解。》


白から短く返事が響き私は時間停止魔法を解除した。

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