10、キャラメイクは自分の理想
トントントントン
部屋の扉から軽いノックの音が響く。
「お嬢ちゃん、おはよう!朝御飯が出来てるから早くおりてきなよ。」
女将さんが朝を知らせに来てくれたようだ。
抗いがたいベッドの誘惑から逃れて顔を洗いに台にたつ。鏡に写るのは現代世界より見慣れたゲーム時代の私だ。
紫色の中でも一番好きな淡藤色の長い髪を編み込みをいれたポニーテールにして状態異常無効付与の銀糸のリボンで縛る。
まだ眠そうな銀色の瞳と薄い肌色についた整った鼻梁、プックリしたピンク色の唇は渾身の出来だ。
程よい肉付きのある身体に旅人の服(改造済み)を着ていく。その上から竜の牙も防ぐ見事な模様の入った胸部プレートアーマーを着けた。
レースの下着の上からレーザーパンツ(改造済み)と銀の装飾がついた革靴を履く。最後に茶色の薄い外套を着て完成だ。
二階にある部屋から下の食堂に向かう。夜より賑わいの少ないまばらな席に適当に腰を掛けると女将さんが朝食を並べていく。
薄切りの肉と目玉焼きに丸い焼きたてのパンがとても美味しそうだ。コップに注がれたのは冷たいリンゴ?ジュースだった。
朝食を堪能しているとリンゴ~ン、リンゴ~ンと遠くで鐘が二回鳴った。
空いていた私の前の席に何時来たのか朝食を持ったリゼルが腰を下ろしている。
「おはよう、エルノラ。ここの食事は何時食べてもうまいんだよな~。」
ニコニコしながらパンを千切り口に放り込んでいく。
(朝食に夢中でリゼルが来たの気づかなかった)
敵意がないから感知しないのも原因か...。危険察知のスキルは常に働いてるので油断していた。
「おはよう、リゼル。」
朝食を食べ終わりリゼルに挨拶を返すとリゼルも食べ終わったのか席をたつ。
「今からギルドに案内するよ。その後に来てほしいところがあるんだ。」
リゼルが真剣な眼で私を見てくる。
そして肩をガシッと掴まれそのまま頭を下げた。
(これは、騎士団の方で何かあったのかな? でもあんまり巻き込まれたくないな~...う~ん、行ってから考えるか。)
良い出会い。困ってたら助けよう。って思いも大事だしね。
「どこに行くか知らないけど分かった。」
ていうとリゼルは嬉しそうにキラキラした眼で眩しい笑顔を私に見せた。
眩しすぎる!!
巻き込まれたくないと思った罪悪感に少し居たたまれなくなるよ。
私の手を掴み女将さんにご馳走さまと挨拶しながらグイグイと外に引っ張っていった。