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第1話

1.


中学1年の頃からか。私は母が仕事以外に自分の時間があるのをうすうす感づいていた。

その頃は、新しく友人が一人、また一人できて、4人グループで遊んでいた。親友と呼べる友人が一人いて、よく、からかいあっていた。どちらが先に彼氏ができるか、貴重な1000円を賭けて、競争した。中二の春休み。私が勝利した。走り高跳びの両方選手で、男子とは違う所で練習していたが、一緒に練習をサボって、男子の走り高跳びの選手を眺めていた。

その中でタイプの男子がいる。そう親友に言うと、

「よし。何とかしてあげよう」

「え。まさか……」

「いや。やっぱり自力で勝ち取った方がいいよ。結構格好いいしさ」

「顔はどうでもいいんだけど」

「またまた。そんな事言っちゃって」

そう言いながら、二人はそろそろ練習に戻る事にした。

そして、親友が腹痛で、学校休んだとき。雨が降っていた。やむかなと思ったが、全然やむ気配がない。友人はみんな帰っているし、正直困ったなと思っていた。そして、待ち構えたように、男子の声が私の名前を呼んでくれた。私は隣を見た。

「椎名さん」

その言葉の意味は私がタイプの同じ走り高跳びの選手だった。

「よかったら家まで送っていってあげるよ」

「いいよ。別に馬鹿であってもなくても、風邪を引く時は引くからね。気持ちだけ受け取っておくわ」

私は不整脈になりそうになった。思ってもいない事がすらすらと言葉に出る。

「いいから。別にストーカーになるつもりはないからさ。それにこんなチャンスを逃すのももったいないしね」

「え?」

「いつも練習中気になったんだ。声をかけるチャンスが欲しくてさ」

それがきっかけで、二人で帰宅する気になった。

話は楽しかった。いつしか打ち解けあい、軽い冗談も言うようになった。帰り道20分の時間が短く思えた。アパートに着くと、私は携帯のアドレスを書いた紙を渡した。

「帰ってから必ずメールを送るよ」

「うん。そうしてくれたら有難いな」

そして、礼を言った。

「よかったらジュースでも飲んでいく?今誰もいないから」

「それは嬉しいけど、もっと仲良くなれたらでいいよ。じゃあね」

「じゃあね」

私は親友に1000円をもらう日が近いなと感じた。親友にメールを送ろうとしてやめた。今からお見舞いに行くつもりで、完全に治ってから、今日の出来事を伝えようと思った。


 もらった千円でラーメンを親友と食べに行った。安くてうまいラーメン店で、部活が雨だったため、今度は傘を忘れなかった。あれ以来天気予報は欠かさず見るようになった。

「まるでドラマみたいだね。先を越されて正直、不甲斐なく思っている」

「堅苦しい言葉を抜きにして……好きな人はまだいないの?」

「さあ。私の理想が高いのかな?優しくてお金持ちで。格好いい人でユーモアのセンスがある人がいいな」

「芸能界じゃあるまいし。どれか捨てないと一生彼氏できないと思うよ」

「やっぱ」

先を越されて、少しふてくされた顔をしている。こんなに美人なのに。絶対鏡を見つめて一人悦に入っているなという事ぐらいは容易に推測がつく。でも、その表情と言葉は、私だけに見せる表情で、いつもはもっと馬鹿っぽい事を言っている。

親友は明るいから、男女問わず好かれる。4人で行動している時も、うまくバランスをとって、私を置いてかない。かと言って後の二人をないがしろにしない。私はそんな親友を見てなんともいえない気持ちになる。

「ラーメン伸びるよ」

一人でくだらない事を考えているうちに、親友はラーメンを食べ終えていて、私待ちだった。

 私は手鏡を見てまんざらでもないなと思っている。腹黒いのは、親友だけじゃないと思った。

 

 私は彼氏とデートした記憶が曖昧だ。緊張していた気がする。遊園地で観覧車に乗っている時にファーストキスをした。ガムの匂いがした。キシリトールのスーとした匂いだ。付き合って1ヶ月目になる。それまで、じっくり関係を深めたかったのに、思春期の男子はとにかく関係を深めたがる傾向があるらしい。私は3ヶ月付き合ったら、体を許す事にする事を決めていた。

 その事を親友に話と同じ意見だった。男は妙齢の女と事がなせばそれでいいという事を。そして、親友にも彼氏ができた。お洒落な男子だった。幼馴染の男の子だったようだ。向こうの果敢すぎる告白に戸惑っていたらしいが、親友も満更ではなさそうだ。私たちよりももっと深い付き合いに見えた。一緒に服を買いにいくのが楽しみらしい。私は彼氏と遊ぶのも少しだけ飽きてきた。会話は普通で、間は空かずに喋るのだが、あまり面白くない。ただ付き合って三ヶ月まで後二日。普通に恋愛できる女なら誰もが通る道だ。私は彼氏に伝えた。「好きにしてもいいよ」と。

「そっか」ずっと明後日の夜を待ちわびているのだなと思った。部活も休みな雨の日に、結ばれる。天気予報を注意深く見ていた。

 初めてラブホテルに入り、お互い最初は上手くいかなかった。それでも、一緒に好きな人と一緒に通じ合うから、ただキスをして終わった。

「悪かった。初めてだから緊張した。次は研究してくるから」

「別に気にしていないよ。次は机上位でしよう」

「もう時間もないしな」

「一緒にお風呂に入ろう」そう私は誘った。そして、二人で心置きなく楽しめた。

 次はできた。今度は部活を風邪で揃って休んだ。痛かったけど、これで私も単なる小娘ではなくなったと思った。

「早くいってくれたから」

「けなされているけど、まあいっか」

「好きだよ」

そう言って、私は抱きしめた。お返しに彼氏も抱きしめてもらった。これが女として最も印象深い出来事になった。いずれ思い返す時が来るだろう。私は家まで送ってもらって、手と手が触れた瞬間手を振った。

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