第21話 夏休みの…始まり
恵斗は彼女に電話し始めた。
和も彼氏の孝輔を買い物帰りに連れてきた。
恵悟は親友の孝輔の弟の圭輔を。
その連中がいれば和音は遊んでもらえる。
恵美も上木に電話した。
「もしもし?ヒット??」
「あれ?メグミン、用事…どう?終わった??」
「ウン。終わった。今からウチにこない??親いないから遊ばない??」
親いない
親いない
親いない
上木の頭に「親いない」という甘い誘い言葉が何度も繰り返される。
「ウン!行く!絶対行きます!」
といってすぐさま服を着替え…。リュックにゲーム機やら何やらを突っ込み、自転車にまたがってめぐみの丘に向けて走る…。
途中、薬局を行ったり来たりする…。
意を決してドキドキしながら小さい自動販売機にすばやくコインを投入して出て来た品物を取り、風のように自転車を走らす。
まだ恋人じゃないっていったって…
そういう雰囲気になったら…
もしかして、もしかするもんな。ウン。
これは男のエチケットだもんな。
買って…良かったんだよな。ウン。
杉沢宅に到着…。
上木は恵美と二人っきりでそういうシチュエーションになるのかと期待していたのだが…。
中はドタバタ、キャーキャー、ギャーギャーと騒がしい。
ん…なんか騒々しいな…。
ああ。兄弟たくさんいるっていったもんなぁ…。
リビングで遊んでるんだろう。
多分、俺たちは二人きりで…メグミンの部屋で…
逆にあんなに騒々しい方が、何かしても気づかれなくていいのかも…。
それにしても、中2の夏に…
へへへ…。
「どうした??」
「わ!ビックリした!…なんだよ…佐川と…富沢…。」
声をかけられた方を見ると、佐川と富沢が不思議そうな顔をして見ていた。
「早く、呼び鈴押せよ。なにさっきから立ってんの??」
「何言ってんだよ。全然立ってねぇよ…。」
「なんで否定すんの?ずっとなぁ…玄関の前に立ってたよなぁ…。」
上木は自分の勘違いと気づき
「あ……ハイ……立ってました……。何?オマエら、何の用??」
「何の用って…。俺たち…杉沢に呼ばれて…。」
「は??」
「??」
富沢は、上木をいぶかしげに見ながら呼び鈴を押した。
ピンポーン
「はーい!」
声がしたので三人はそろって玄関のドアを開けた。すると…
「いらっしゃいませぇ~~!!」
迎えたのはキャバ嬢の格好をした女子三人。
「わ!なんだ!?なんだ!?」
「はは。ミナちゃん。」
「え?ミズキ??」
「そーですよ。」
「その…格好は?」
「あら。文化祭のあたしたちの店での格好よ?ちゃんと説明聞いてなかったでしょ?女子はみんなこの格好で接客するのよ?男子は客引きでしょ?あたしたちの姿見れないと思って、サービスで見せてあげたのぉ。」
「マジ…?」
みんな、女子の胸に目が行ってしまう。
「どこみてんの?」
「いや…なぁ…。ウン…階段…。」
リビングを開ける恵美。中には人、人、人。
男子三人は有名な先輩である恵斗の前に並んで頭を下げた。
「杉沢先輩!お世話になりまーす。」
「オウ。まぁ、飲んで食って遊んでくれ。妹たちに変な気おこすなよ?フフ…。」
上木、こうなりゃヤケとばかり、チキンとピザに手を伸ばす。
そこにニヤついた顔をした富沢と佐川に囲まれた。
「上木ィ?荷物何もってきたの?」
「え?…ゲーム機とか…。」
「とか…なに?」
「上着とか…。」
「なんか、あやしいなぁ。」
「オマエ…まさか一夏の経験を期待してたんじゃ…。」
「ち、ち、ち、ちげーよ!」
すごくキョどる上木。
「荷物チェックさせてもらっていいですか?」
「な、なんで?」
「ここは税関です。」
「ちょっとヤメろよ。いーよ!わかったよ!」
離れたところにいるキャバ嬢の女子チーム。
「なにやってんだろ。仲いいね。」
「ホント。男の子っていいねぇ。」
「ほほえましいよね。」
佐川が上木をおさえ、富沢がリュックの中を調べている。
「はい、はい、ゲーム機…、充電器…、あれ?なにこの箱」
「密輸ですかぁ?」
「すいません…。」
「これは上司に報告しないと…。」
「どうかご内密に…。」
「清く正しいグループ交際でしょ?俺たち。」
「これは厳罰が必要ですな。」
「後で中身をちょっとずつあげるから…。」
「そういうことなら…。」
「うんうん。いいだろう。」
袖の下が功を奏して三人のわだかまりはなくなった。
それから、六人してリビングのテーブルで雑談した。
キャバ嬢の格好でジュースをつぐ姿が、それっぽい!と声を上げたり。
それっぽいって、男子諸君は行ったことあるのか?
などと、笑いあった。
こうして…杉沢家の五人だけの夏休みが始まった。
両親に振り回されて腹が立った恵美たちは、二人が帰って来るまでに、預かった20万円を全て使い果たし、復讐を果たしたのであった。
【おしまい】




