第20話 ネグレクト
それから2時間…。夕方の16時…。
恵美と、恵斗は家に戻っていた。
恵斗は新聞を広げ、恵美はそこに紅茶を淹れて前に置いた。
ホント…ケイちゃんとカズちゃん…どこいったんだろ…。
すると家の電話がなり、恵美がそれをとった。
「はい。もしもし。杉沢ですが。」
「あ…メグ…?オレ…。お父さんだけど…。」
和斗だった。
「あ、カズちゃん?ケイちゃんは?」
「あ…ウン…。今、一緒にいる…。」
いつもと話し方が違う。
明るく元気な声ではない、誠に申し訳ない、すまないといった感じだった。
「あ、よかったぁ…。」
「お父さんと、お母さん…今まで話し合ってたんだ。ゴメン。遅くなって…。」
「それで…?二人で帰ってくるの?」
「それで…。渡良瀬のおじいちゃん家にいって、子供たちみんな家の呼んでくれないか?大事な話しがあるんだ。」
「え?うん…。大事って…??」
「今から、お母さんと家に帰ってからみんなに話すよ。じゃぁ。」
プツ。ツーツーツー…。
電話が切られた…。
恵美の心の中がなぜかざわついた。
悪い予感だ…。
なぜ家族を集めるのか…。
ちょっと…マジ…なんなの?
話し合ったって…まさか…離婚とか?
ちょっとやめてよ…。
ケイちゃん…なんか、もうアレだったし…。
カズちゃんも…あきらめちゃった??
でも…とりあえず呼んでこなきゃ。
渡良瀬の家に行って、妹弟たちみんなを呼んで来た。
みんな、リビングにそれぞれ座る…。
不安を感じている恵美。兄の恵斗も同じ気持ちだった。
だが、それを下の妹弟たちに感じさせてはいけない。
不安は自分たちの勘違いであって欲しいと思った。
「心配いらないよ。大丈夫。大丈夫。あの二人なら…。」
そう、恵美を慰める言葉も少し震えていた。
その時…。
ガチャ。
玄関の扉が開いた。
二人の足音が聞こえる。家の中に入ってきた。
笑い声もなにもない。無言だ。
リビングの扉が開いた。
恵美と恵斗の胸は大きく一つだけ鳴った。
「あ…みんな…揃ってるか。」
和斗は子供たち全員の顔を一人一人確認するように動かした。
「ウン。お父さん。どうしたの?」
「いや…。みんな、知ってる通り…。お父さんとお母さん…ケンカしてたの…分かってるよな?」
みんな、無言でうなづく。
「そのケンカしてるしばらくの間、みんな、片方の親の元で頑張ってたから…親がいなくても平気な生活ができるってことは…分かったと思うんだよ。」
「ちょっと待ってよ。お父さん。それは、二人が必ず戻るって信じてたから…。」
和斗は恵斗の言葉を片手を上げて止めた。
「ウン…。夏休み前に、こんな話して、なんで??って言うと思う。」
「ウン…。」
「お父さんとお母さんがいなくても兄弟仲良く…協力して頑張って欲しい。」
「ちょっと…。」
「でな?ここから大事な話しなんだけど、みんな明日から夏休みだ。これは訓練だと思って欲しい。」
は…??
「お父さんと…お母さん…、仲直りに一週間グァムに行って来るから…。」
時間が止まった…。
「はい??」
「ウン。お兄ちゃんと…お姉ちゃんに、10万円ずつ渡しておく。これで、ゴハンとか生活に足りないものをウマく集めてくれ。」
和斗はそう言ってと恵斗と恵美に丸めた一万円の束を渡した。
「いやいやいやいや。おかしいでしょ。」
「普段、お母さんの料理ばっかりだから…たまに、店屋物をとれるかどうかも訓練しておいた方がいいと思うんだ。」
和斗はそういうと、恵子は顔を和の方に向けた。
「メグちゃんと、アイちゃんは掃除とか洗濯とか教えたもんできるもんね?」
「できるけど…できますけど…。」
みんな釈然としない。
そりゃそうだ。
だが、二人は続けた。
「あ、火は使わないでくれよ?ウチはオール電化だけど…。絶対、弁当か店屋物をとること。いいな?」
「みんな、お兄ちゃんとお姉ちゃんの言うことちゃんと聞くのよ?困ったことあったら渡良瀬のおじいちゃんとおばあちゃんに言ってね??」
そう言って、二人はリビングから出ようとしたので、慌てて恵斗は止めた。
「いやいや、おかしいでしょ?」
恵子は振り向いて
「メグ、保険証はあるとこわかるよね?」
「いや…わかるけどさぁ。」
「カズネちゃんには、食後にアトピーの薬飲ますのよ?詳しいことは袋に書いてあるから。」
「いやいやいやいや。」
「じゃ、カズちゃん車エンジンかけといて。あたし…パスポート取って来る。」
「オーケー。じゃ、みんなゴメンな。何かあったら携帯に。」
はぁ??
恵子は二階に駆け登り、自分の部屋に入ったと思ったら急いで階段をかけおりて来た。
「じゃ、行って来るから!お土産…期待しててね。」
「ちょっと!荷物も持たないの??」
「あ!!」
またもや、階段を駆け上る。
そして、駆け下りてくる。
「ふふ。ケイトナイス。充電器とコンセントの変換機だけ持ってく。」
「ちょっと、ケイちゃん、その格好でいいの??」
「カード…あるから。ゴメン!飛行機の時間なの!カズネちゃんをよろしく!帰ってきてもお父さんの休みまだあるから、みんなを遊園地ぐらいには連れてってあげるから!」
「なんで一週間も!」
「仲直りなんだから!いいでしょ!」
といって、玄関を飛び出して恵子は車に乗り込んだ。
その後ろを恵斗と恵美は追いかけたのだが、車のドアを閉める時たしかに聞こえた。
「ケイちゃん愛してるゥ…。」
バタン。
走り出す車。
えー…ちょっと待ってよぉ…。
車がめぐみの丘を降りてゆく…。
その姿を見送った後、恵斗はパチンと両手を合わせた。
「はっはっはっはっはっは……。」
「ケイ君??」
「あのネグレクト親!!」
恵斗の髪の毛逆立ち目が吊り上がって顔が真っ赤になっていた。
ひっさびさの恵斗激怒だ。
しかし、今は親が不在。
恵斗は自分がしっかりせねばならぬと気持ちを入れ替えることにした。
「はぁ~…。まぁいいや!高校は、絶対にM市から離れて一人暮らししてやる!!」
「ふふ…。マザコンのケイ君にできるかなぁ??」
恵斗は恵美の肩をすばやく抱いて自分のほうに引き寄せた。
「おい…。なんで知ってる…。」
「見てりゃわかるでしょ…。」
「オマエだってファザコンのくせして。」
「ご心配なく。もう大嫌い。」
「はは。」
「ふふふ。」
「…念のために聞くけど。」
「ん?」
「この騒動の発端はメグだよな?」
「は??ちょっと待ってよ…。『カズちゃん、デートしに行こう』『マジ?その格好で?』あ。ハイ。そーです。」
「ハイそーです。じゃねーわ…。」
二人は再びリビングに戻り、不安そうな妹弟を見渡した。
その不安を払しょくするように恵斗は声を張り上げた。
「さぁ!今日は特上寿司か特上うなぎ…どっちがいい??」
「お!オレ、うなぎがいい!!」
飛びついたのは次男の恵悟。しかし、恵美は
「ちょっとちょっと!うなぎがいいのは男の人だけでしょ?寿司にしようよ…。」
しかし、二人の妹は
「カズネ…ピザがいい。」
「ウチもピザ。」
みんな、そちらを見て和斗のようにニンマリと笑った。
「じゃ、ピザにすっか。友だち呼んで盛大にやるかぁ!チキンも頼んで!明日から夏休みだもんな!!」
「いいね。ウチとケイゴとカズネちゃんでジュース買って、ついでにコースケ呼んで来る。お金ちょーだーい。お釣りはもらうよ。」
「いいぞ。いいぞ。みんな呼べ!友だち。お泊まりオーケー!和室も使え使え!」
兄妹たちは「イエーイ!!」と手を上げて喜んだ。




